小林よしのりライジング

「善意と正義のはずの残酷」小林よしのりライジング Vol.364

2020/07/14 21:50 投稿

コメント:265

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第364号 2020.7.14発行

「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしのひとたち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…日本はハンセン病に対して、長年にわたって絶対隔離政策を採ってきた。ハンセン病が完治する病気となっても、治った「元患者」が施設の外に出ることは許されなかったし、死んでも遺骨が故郷に戻されることはなく、全国友園納骨堂には今も里帰りのできない二万有余の遺骨が眠っている。このようなハンセン病政策をリードしたのが、光田健輔という医師である。現在の価値観で過去を裁いてはいけないが、現代の人間は光田健輔を非難してはいけないのだろうか?「彼なりの善意と正義で、生涯を賭けて治療・研究にあたったのだ」と擁護すべきなのだろうか?
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…新型コロナウイルス治療薬として期待されていた「アビガン」について、7月10日、臨床研究を行っていた藤田医科大学などの研究グループから「明確な有効性は確認できなかった」という結果が発表された。メディアは、4月以降大変な「アビガン・ムーブメント」を巻き起こしたが、まったく現実とはかみ合っていない空回りだった。だがそもそも、認可もされていない薬物について、日本中が大盛り上がりすること自体が異常でもある。なぜこんなことになったのか?
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!どうやって新しい作品にアンテナを張っているの?電車の中で行儀の悪い奴に遭遇、注意できなかった自分は弱い?医療機関の多くが赤字経営…それが原因で医療崩壊してしまうのでは?水害対策は人為的に出来る?40代を迎える自分に喝を入れて!大阪維新との蜜月ぶりを見ると信用できない…国民民主党は本当に大丈夫?…等々、よしりんの回答や如何に!?


【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第380回「善意と正義のはずの残酷」
2. しゃべらせてクリ!・第321回「夢か? 幻か? ぽっくん11人いるぶぁ~い!の巻〈後編〉」
3. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第174回「アビガン、そのサイエンスなき実態」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記




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第380回「善意と正義のはずの残酷」

 たいていの人は、自分は正しいことをしていると思って行動しているはずだ。
 中には正義感と使命感を抱き、信念をもって何事かを為す人もいる。
 しかし、それが完全に誤った結果をもたらすこともある。
 そんな時、「結果を見て非難するのはたやすいが、善意に基づく行為だったことまで否定すべきではない」と擁護するのは、正しいことだろうか?

 日本はハンセン病に対して、長年にわたって絶対隔離政策を採ってきた。
 戦前は警察が患者を管轄しており、病院でハンセン病と判明した者がいるとの報が入ると、家に警官がやってきて、家族全員に検査を受けさせる。
 そしてハンセン病と診断された者は、鉄格子と金網こそ張っていないものの囚人護送車と同じ車に乗せられ、外から鍵をかけられて隔離施設に送られる。
 病気が治るまでと思って出かけたら、それが家族との永遠の別れだったという者も少なくない。
 施設に着くと施設内の服に着替えさせられ、所持金を施設内だけで使える独自の通貨と交換させられる。脱走を防ぐためである。
 施設には「監房」が用意され、園長は命令に逆らう患者を、裁判を経ることなく自分の判断で入れることができた。
 各施設によって差異はあるが、総じて衣食住はすべて悪く、個室もなく、ある施設では12畳半に成人4人が生活し、夫婦寮ではカーテンも仕切りも何もない12畳半に夫婦4組が入れられていたという。
 入所者同士で夫婦になるケースは多かったが、結婚を認める代わりに男は断種、その前に女が妊娠していたら堕胎するというのが絶対条件だった。

 脱走者は後を絶たなかったが、外に出たからといって普通の生活に戻れるわけもなかった。
 施設には「煙突から退園」「洋館ゆき」という言葉があった。「煙突から退園」は、火葬されてようやく退園できるという意味。「洋館ゆき」は、火葬場や解剖室が洋館で立派な造りだったので、死ぬことを「洋館に行ける」と自ら揶揄して言ったのだという。
 ハンセン病患者はその家族も差別にさらされ、ハンセン病患者が兄弟姉妹にいることで、縁談が破談になったなどという話は枚挙にいとまがなかった。
 施設内では、家族に迷惑が掛からないように偽名を名乗ることが推奨され、ほとんどの患者が、本当の名前をも奪われた。
 ハンセン病が完治する病気となっても、治った「元患者」が施設の外に出ることは許されなかった。たとえ出たとしても、外の世界で生きていく方法はもうなかった。
 そして、死んでも遺骨が故郷に戻されることはなく、全国友園納骨堂には今も里帰りのできない二万有余の遺骨が眠っている。

 このようなハンセン病政策をリードしたのが、光田健輔という医師である。
 そもそも当初、日本政府は徹底隔離ではなく、「浮浪らい」だけを収容・隔離の対象とする方針だった。
 だが光田は「全患者隔離」を信念としていた。そして、それが予算的に厳しいということで、まずは浮浪らいの隔離で妥協して実績作りをする一方、政界・財界に人脈を作って政策決定への影響力を強め、さらにハンセン病は悪魔の伝染病だとの宣伝で世論を喚起した。
 当初日本でハンセン病を専門に研究していた医師は光田ひとりしか存在せず、その後につくられた日本癩学会の中心は全て光田の弟子が占め、その癩学会が医学界全体を動かした。そして光田も自ら保健衛生調査会に入って国策づくりに加わり、ついには全患者隔離政策を実現したのだった。
 今から見たら、その判断は完全に誤りだった。だが光田はこれが正しいと信じて行い、「慈父の光田先生」「救癩の父」と呼ばれて神格化されたのである。

 光田健輔はエリートの出ではない。高等小学校を出て、開業医の兄を手伝いながら私塾に通い、医師を目指して上京して軍医の家の住み込み書生をしながら勉強し、医術開業前期試験に合格。そのため後の伝記には「独学で医学を学んだ」と書かれているほどだ。
 その後、私立済生学舎(日本医科大学の前身)に入学し、開業後期試験に合格。軍医を目指すが視力不足で断念し、病理学者を目指して東大医学部選科に学ぶが、この時、医学生が誰も触れたがらなかったハンセン病者の死体を、光田だけが解剖に当たった。
 このエピソードは「救癩の父」の原点の美談として語られることが多いが、実は光田はかなりの「解剖好き」で、ハンセン病者だけで3000体の解剖をしたという前代未聞の記録を持ち、東大を出て東京市養育院(困窮者、病者、孤児、老人、障害者の保護施設)に勤める医療官僚になってからも、養育院で死んだ者の死体をろうそくの明かりで解剖していたという話もあるほどだから、それが「美談」だったのかどうかは怪しい。

 光田は養育院時代にらい菌と結核菌が同一のリンパ節に共存することをつきとめて初の論文を執筆、以後、ハンセン病の研究に没頭する。
 だが、光田はハンセン病の権威になってからも生涯大学教授にならず、医学博士号すら取らなかった。これを謙虚な人柄の表れだと言う人もいる。 

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コメント

>>320
くねくねくねくね嬉しそうにしていましたね。
晴恵は、みんなから注目されるのが嬉しくて嬉しくて仕方がないのでしょうね。でっかくなりすぎた自意識は
『もっと~! もっと評価して~! 良い評価だけよ~! 悪い評価は無視するから~! もっとちょうだいよ~!』
と欲求が止まらない。
私も、似た所があるので、よ~く分かる気がします。
( ̄ー ̄;;

怒りに共感して下さり、ありがたかったです♪
┏○ペコッ

No.331 52ヶ月前

ゴー宣「善意と、正義のはずの残酷」読みました。

ハンセン病の患者さんの、地獄の中からの叫び声が聞こえてくるようで、戦慄します。ここまでの理不尽があったのですね。

『取り返しの付かない事がある』と、小林先生から学びました。
私は、自分の正義を絶対だと信じて行動する所が有ります。反対意見に耳を傾けたくなく、聞かないで済むのならそうしようとする所もあります。逃げですね。
覚悟なく、勢いだけで、突っ走ってしまう所もあります。

今回は、非常に勉強になりました。
再度、胸に刻んで生きて行こうと思います。

光田は、マッドな科学者だったんじゃあないでしょうか。
本当に、こんなに恐ろしい人間が登場する事があるのだと言う事も、常に忘れないようにして生きて行かなきゃいきませんね。

玉川徹と岡田晴恵、取り返しの付かない事をしでかしましたね。マッドな気持ち悪さと恐さを兼ね備えていますね、二人とも。


ハンセン病によって、不幸な人生を終えられた方へ、心より、ご冥福をお祈り致します。

コロナ論、予約致しました。

No.332 52ヶ月前

トンデモ見聞録「アベガン、その実態はまたしても利益誘導お仲間主義」、じゃなくって、
「アビガン、そのサイエンスなき実態」を読みました。

やっぱし、安倍晋三はトンデモねえ馬鹿野郎だと思いました。やっぱしこうなるか、安倍。
本っっっ当~にロクデモなくトンデモねえ野郎です。悪い意味で期待を裏切りません。

あんだけブイブイ言わせて好き放題やってたクセに、今は世間の目や羽鳥コロナショーが恐くて何も出来ない安倍。つくづく小者ですね。

それで何かやると、それが全然公に適ってなくて私的な事情からばっかだから、ことごとく失敗する安倍。これほどリーダーに相応しくない人間って居るのでしょうか。

晴恵。安倍晋三に似ていますね。言ってる事とやってる事が全っっっ然違う。
サイエンスからもっとも遠い場所に居る、自称サイエンティスト晴恵。
サイエンスだと言いながら、厚労省よりも政治判断だなんて、よく言えます。
よく言えるなと思わされる事ばっかですね、晴恵と晋三は。

医療者の事なんか全く考えていないのに、医療者を語る晴恵。
医療現場を逼迫させてる張本人なのに、医療現場を何とかして欲しいと訴える晴恵。
コロナ患者や老人や、医療者の事なんざあど~なろうと知ったこっちゃ無いから、アビガンアビガン言えるのでしょうね。

日本人って、安倍や晴恵みたいなタイプが好きなのでしょうかね。でも、桜を見る会や晴恵との食事になんか、絶対に行きたくないな。

晴恵は、社会に何か恨みがあるんじゃないかと勘繰ってしまいます。麻原みたいに。

No.333 52ヶ月前
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