小林よしのりライジング

「モソ族に何を夢見る?」小林よしのりライジング Vol.503

2024/05/14 20:05 投稿

コメント:101

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第503号 2024.5.14発行

「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしのひとたち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…中国雲南省の辺境には「女性の国」と呼ばれる「モソ族」という少数民族がいて、度々メディアに登場している。モソ族の人口は約5万人で、1500年以上前から、祖母を中心として代々直系の女性が「家長」となる「家母長制社会」を維持しており、土地も財産も全て女性が相続する。モソ族には「結婚」という制度もなく、男は夜になったら女性のところにやってくる「通い婚」である。世界中が男性中心社会ばっかりとなっている中で、このような「女性中心」の文化は極めて珍しいため、これまで何度も各国のメディアやジャーナリスト、研究者などがモソ族を取材し、「男女平等社会」をつくるためのヒントがここにあるというような文脈で報じてきた。しかし、そのようなモソ族の理想化は、わしには違和感しかない。モソ族の実態はどうなっているのか?なぜそのような“理想化”が生まれてしまうのか?真実を見抜く目を養おう!
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…テレビドラマの制作現場で、現在活動しはじめているのが、「インティマシー・コーディネーター」という職業だ。テレビドラマや映画の撮影現場において、性的なシーンや肌を露出するシーンを演じる俳優と監督との間に入り、全員が演技について「同意」した状態で撮影に臨めるよう調整する職業なのだという。発端は、2017年にアメリカの映画界で起きた「MeToo運動」だ。アメリカ由来の表現に対する規制は、別の形でも広がっている。この「ライジング」の配信や生放送等を行っているニコニコにもその影響は拡がっているのだ!
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」…若い女優たちの美しさがピークを迎え衰えていくのは見たくない一方、新たな美しい若い女優も見たい…この二律背反の欲望を叶える良い智慧はない?入社1ヶ月足らずで会社を辞める「スピード退職」が増え、さらには退職代行サービスを利用しての退職…日本の将来は大丈夫?各キャラクターの名前はどのようにして決めていたの?日本の女子ボクシング選手が世界王者にまでなっているのに、知名度や評価が上がらないのは何故?水俣病の患者団体の男性の方が、伊藤環境大臣と懇談している最中に、環境省の職員によって発言を遮られ、マイクの音が切られた件をどう思う?過去のヒット作のリメイクが行われるのは何故?男女間の「友情」は存在する?…等々、よしりんの回答や如何に!?


【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第532回「モソ族に何を夢見る?」
2. しゃべらせてクリ!・第458回「沙麻代ちゃん怒りのハイキック! ぽっくん飛びまーしゅ!の巻【前編】」
3. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第326回「アメリカ由来の表現規制」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記




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第532回「モソ族に何を夢見る?」

 ゴー宣DOJOは5月25・26日、大阪にて初の2日連続開催を敢行する。
 その2日目のテーマは「女性活躍とは何か?」だ。
 わしが司会を務め、他の登壇者はゴー宣DOJO師範の笹幸恵さん、泉美木蘭さん、DOJOサポーターから関西支部・だふね隊長、中四国支部・しろくま隊長、関東支部・よっしーさん、そして『歌謡曲を通して日本を語る』の相方、チェブリン・モン子の6人、全員女性である。
 今までやったことのないスタイルで、画期的な議論となるのは間違いない。

 中国雲南省の辺境には「女性の国」と呼ばれる「モソ族」という少数民族がいて、度々メディアに登場している。
 5月2日にはTBSテレビが、「SDGs特集 地球を笑顔にするWEEK」とかいう企画の一環としてニュース番組でその生活を放送、ネットでも配信した。
 モソ族の人口は約5万人で、1500年以上前から、祖母を中心として代々直系の女性が「家長」となる「家母長制社会」を維持しており、土地も財産も全て女性が相続する。
 モソ族には「結婚」という制度もなく、男は夜になったら女性のところにやってくる「通い婚」である。
 世界中が男性中心社会ばっかりとなっている中で、このような「女性中心」の文化は極めて珍しいため、これまで何度も各国のメディアやジャーナリスト、研究者などがモソ族を取材し、「男女平等社会」をつくるためのヒントがここにあるというような文脈で報じてきた。
 そして今回のTBSの番組も、完全にそのような意図の下に作られていた。

 モソ族については笹幸恵さんも「ゴー宣ネット道場チャンネル」の動画で取り上げ、今の日本が女性にとって息苦しい社会になっているのは「家父長制社会」によるところが大きく、女性が生き易い社会をつくるためには、モソ族に学ぶところが大きいのではないかと語っている。
 だが笹さんには悪いが、そのようなモソ族の理想化は、わしには違和感しかない。
 確かにモソ族は女性に権力があって、財産も子供も全部女系で継承されている。
 しかし、決して見落としてはならないことがある。
 モソ族はほぼ全ての労働を女性が担っていて、男は何も働かないのだ。
 いいのか、それで?

 TBSの番組でも、家長となっている女性が「モソの女性はとても大変です」「大家族の管理は難しいから、男はやりたがらない」と語っている。
 そして、その夫に当たる男性は「普段はどうしているのか」との問いに、「ほとんど遊んでます」と即答した。
 ところがこれに対して番組のナレーションは、「男性は子育てに責任を負わず、養育費も払いません」と指摘しながら、なぜかそれを「嫁姑問題も発生せず、子どもの親権を争うこともない。極めて合理的な制度に見えます」と肯定的に評価するのだ。
 そして最後には「モソの女性は自由だと思います。働きたいなら働くし、休みたければ休めばいい。誰にも生き方を縛られないし、家族みんなが楽しく暮らせばいいのです」という女性の声を紹介する。
 この女性は先に「モソの女性は大変です」と語った人と同一人物で、家長としての重責に生き方を縛られているはずで、発言には矛盾を感じるのだが、番組はこの発言に続けて「モソ族に見る、自由な家族のカタチ。私たちの生き方にもヒントを与えてくれそうです」と称賛して締めくくっていた。
 それだったら「ヒモ夫」がいる家庭がいいということになるはずだが、TBSはなぜそう言わないのか? それが理想だというのなら、わしも全く反対しないのだが?

 ネットにはもっと長尺でモソ族の暮らしが見られる動画も上がっている。わしは「VICE」というアメリカに本部を置くメディアが制作した『母系社会の少数民族モソ人』というタイトルの動画を見てみたが、そうするとなおのこと、とてもじゃないがモソ族の女性がいいなんて思えなかった。
 一家の生活は全て女性の稼ぎで成り立っているので、女は一日中、身を粉にして働かなければならない。
 自給自足が基本なので、畑仕事から、家畜の世話から、川で魚などを獲ることまで、全ての食糧を調達するのが女性の仕事現金収入を得るために伝統工芸の織物を作るのも、観光客相手の店を出すのも女性。そして、子育ても全部女性がやる
 男は何もしない。力仕事の手伝い程度はするが、それ以外は実家に寄生してろくに働きもせずに過ごし、夜になったら女のところに訪ねていくだけ。
 取材を受けたモソ族の男はこのような風習について、「男にとっては最高のシステム。女性たちが家庭を切り盛りしてくれるから、俺たちはあくせく働く必要がない」と、あっけらかんと話していた。 

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コメント

>>74
チコリさん感想ありがとうございました。

最近思いますのが、一人一人の人間の分断だったり男女の分断だったり、コミュニケーション障害をおこしている現代の日本人がスマホや不妊治療など科学技術に頼って、孤独を埋めたり短期的な欲望を満たすためにどんどん引き返せない状況に陥っているのではと感じます。

これを解決するのは、独立した人格の形成だったり、男女の愛情だったり、人と人とのつながりを再構築することなのではないかと、ぼんやりと思います。

>>100
まいこさん、
「若紫」は幼い娘を自分の好みの娘に育てるというのがコンプラ違反という感想が出てきてもおかしくない日本の状況ですが、そしたら源氏物語までキャンセルカルチャーの対象にされてしまうのでしょうか。ポリコレ対源氏物語ってさすがにポリコレの連中は戦いを避けそうですが。
世界や日本の文学作品もポリコレ的にヤバイものが沢山ありそうです。「蒲団」とか
小林先生が取り上げたコンプラ違反の歌謡曲のように映画も文学も芸術文化はキャンセルカルチャーと対極にありますね。

No.101 6ヶ月前

ゴーマニズム宣言・第532回「モソ族に何を夢見る?」拝読しました。

モソ族の暮らし、女性にとって天国ではなく地獄ですね。

男は家事しないわ働かないわ金入れないわ、何の役にも立たないわ。
そんな男入りません!
存在意義がわからない!
そんな男が入ってこようものなら、即追い出します!!
いない方がはるかにマシ!!
自分の食い扶持くらい稼いでこい!!


木蘭さんのトンデモ見聞録・第326回「アメリカ由来の表現規制」拝読しました。

ネット配信は自由ですね〜。

インティマシー・コーディネーター、初めて聞きました。
いちいち交渉するなんて面倒くさそうです。

ニコニコの会費支払いでクレジットカード払いで使えないのが増えてほんと困ります!
米国の表現規制のせいなんですね!
変更するのがいちいち面倒臭い。

アメリカから来たからって何でもかんでも取り入れないでいただきたい。
自分たちの頭で考えて、いいものは取り入れて、嫌なものは入れない!

No.102 6ヶ月前

>101リカオンさん、お言葉いただきありがとうございます。
「文学の登場人物に仮託してならば、人間のはみだした部分も楽しめるという文化」とは、はみ出した部分を客観視し制御する一助にもなると思います。若紫→紫上が、その後、悲劇的に描かれているのも、光る君の言動は、如何なものか?という視点からも読めますよということかもしれません。

No.103 6ヶ月前
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