第397号 2021.5.11発行
「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしのひとたち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)
【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…日本国憲法では、国民の基本的人権は「公共の福祉に反しない限り」保障されると規定されている。人権は無制限に保障されるものではなく、「公共の福祉」に反する場合は制限してもいいことになっているのだ。この「公共の福祉」という言葉は、あまりにも当たり前のように条文に書いてあるので、これが憲法における人権の捉え方のスタンダードであるかのように思い込んでしまっていたのだが、それは全くの誤りだった。コロナ禍において、ありとあらゆる人権の制限が「公共の福祉」のためのひと言で正当化されてしまっているが、それは全く異常なことだったのだ!
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…分科会の尾身茂会長の「魅力あるところを閉める」というトンデモ発言をさらっと受け入れ繰り返すテレビ報道。「魅力あるところ」っていったい何??そして一度は要請を跳ね返したものの、休業することになってしまった寄席。一転、休業を受け入れることになった背景には何があったのか?
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!ワクチンによる重度の副作用や死亡ケースについては「因果関係が証明されない」とされる現状をどう思う?コロナ渦を終わらせるためにできることって何があるの?この状況下で先生の一番のストレス発散法は何に?アメリカの大義無き戦争などへの反対は、当時の日本の状況を考えるとやはり無理だったのでは?ワクチンを否定する言論は、若者の未来をも否定するただのニヒリズムでは?…等々、よしりんの回答や如何に!?
【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第418回「【公共の福祉】と【ワクチンパスポート】」
2. しゃべらせてクリ!・第353回「」
3. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第212回「閉じられた“魅力的な場所”と寄席休業の裏話」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記
第418回「【公共の福祉】と【ワクチンパスポート】」
中でも最大の収穫は、日本国憲法におけるキーワードのひとつといえる「公共の福祉」には、大変な問題があると知ったことだった。
日本国憲法では、国民の基本的人権は「公共の福祉に反しない限り」保障されると規定されている。
人権は無制限に保障されるものではなく、「公共の福祉」に反する場合は制限してもいいことになっているのだ。
この「公共の福祉」という言葉は、あまりにも当たり前のように条文に書いてあるので、これが憲法における人権の捉え方のスタンダードであるかのように思い込んでしまっていたのだが、それは全くの誤りだった。
ゲストとして登壇した慶応義塾大学教授・横大道聡氏は、この日最も重要な指摘をした。
国連の規約人権委員会は、日本国憲法が人権を制約する根拠を「公共の福祉」としかしていないことに対して、制約が拡大する危険があり、もっときちんと細かく書くべきだと、連続して指摘しているというのだ!
国際的な人権条約や、国連が「及第点」としている国の憲法では、表現の自由はこういう場合にしか制限できないというように、それぞれ条件を細かく書いており、全ての人権を「公共の福祉」のひと言で規制している憲法というのは、実は極めて珍しいのだそうだ。
日本のマスコミは、国連から「日本の刑事制度は遅れている」というような指摘を受ければすぐニュースにするが、憲法の「公共の福祉」が問題だと指摘されても一切報道しない。憲法学者も、みんなこのことは知っているそうだが、誰も言わないという。デタラメな話だ!
コロナ禍においては、レストランで酒も飲めないわ、デパートも映画館も閉鎖されるわと、ありとあらゆる人権の制限が「公共の福祉」のためのひと言で正当化されてしまっているが、それは全く異常なことだったのだ。
横大道氏は、もしも自分がロースクールで教えている学生が答案に「人権は保障される、ただ『公共の福祉』による制約がある、今回はコロナだから『公共の福祉』で制約する、ハイ終わり」なんて書いてきたら、落とすはずだという。
ところが現実には、そんな状況がまかり通っているのだ!
では、こんな状態を国会議員はどう考えているのだろうか?
この日は、自由民主党衆院議員・稲田朋美氏と、国民民主党衆院議員・山尾志桜里氏の2名にリモート出演していただいた。
ここでは以前から「立憲的改憲」を主張し、これまで何度となくゴー宣道場にご登場いただいている山尾氏の発言を追ってみよう。
山尾氏は横大道氏の話を受け、緊急事態宣言の発令に「国会の承認」を必要としないことを、多くの国会議員が問題視していないと言った。
そしてその理由は、国会の承認が不要であれば、宣言を出すか出さないかという難しい判断をしなくて済むからで、後で宣言を出してよかったという結果になれば「よかったね」と言えば済むし、宣言を出したのがやりすぎだったとか、足りなかったとかになれば、後から政府を批判すればいいと思っているからだという。
とんでもない無責任だが、それについて山尾氏は、説明責任を政府や分科会の尾身会長に押し付けるのではなく、国会議員の一人一人が厳しく責任を負うことが、緊急事態の中で自由を確保するために大事であり、「国会承認」に関する議論はもう一度しっかりやり直すことが不可欠だと主張した。
この山尾氏の発言を受けて泉美木蘭さんが、「やりすぎたら後で批判しておけばいいと思っている」というが、実際には「やりすぎたら後で批判」するということすら行われていないと指摘した。
そして、あまりにも曖昧な「公共の福祉」の下で無茶な制約をやりすぎたために、学校に通えなくなった子供が精神的に追い詰められて自殺に追い込まれたり、女性が仕事を失って急にホームレスになってしまったり、あるいは演奏会など文化活動も出来なくなって、自分の生きがいを失ってしまった人がたくさんいて、既に甚大な被害が出ており、働かなくても大丈夫な人や、家にいても給料がもらえる人の人権しか守られていないと批判した。
そしてさらに、学校が閉鎖されるとどんなことが起きるか、派遣で働いている人たち、飲食店やサービス業で働いている人たちがどんな目に遭っているのか、精神的にどういう影響が起きるかということを事細かく挙げていくことが公共の福祉とは何かを考えることになるはずで、そういうことを国会議員の方には議論していただくよう切に望むと発言し、これには大きな拍手が沸いた。
コメント
コメントを書く(ID:88182328)
「【公共の福祉】と【ワクチンパスポート】」読みました。とても面白かったです。
『公共の福祉』のように、解釈しだいでその範囲をどうとでも変えられる曖昧な表現が、日本人は本当に好きだよなあと思いました。
『伝統』『世間様が見ている』『自粛』なども、同じようなものだよなあと思いました。
しかし、コロナ脳、コロナ禍じゃなくってコロナ脳は本当に恐ろしいですね。
2月の道場の時は、ポリコレの恐ろしさを学び、拡大版ではコロナ脳の恐ろしさを学ぶ。
私の身近にも、コロナ脳の恐ろしさを学ばせてくれた人が居ます。
皇室バッシングに於いても、人間の恐ろしさや醜さを学べますね。
国会議員を相手に、リアルタイムの議論の中で、おかしな政策に対して論理的にダメ出しをするのは、痛快に感じました。
山尾議員が、少なくとも議論は出来る、相手の話しを聞ける方なのは、大きいとも感じました。でも公約から外れていないのですよね。
野党のここまでのダメさ加減は、安倍小悪一強時代には想像も出来なかった…。
(ID:88182328)
先ほど、真夜中のNHKニュースで、『海上保安庁によると今年のGWの海難事故による死者は昨年より増えた』と言ってました。密を避けられるとの理由で、海岸に行楽に出掛ける人が増えたのと、コロナ禍慣れしてきた為だなどと言ってました。一昨年の死者数に近い数字に戻ったそうです。
一昨年が通常の状態で、昨年は異常な状態だっただろ、とツッコミたくなりました。
マスコミは国民に、外出せずにとにかく生存しろと言いたそうです。
(ID:88182328)
トンデモ見聞録「閉じられた“魅力的な場所”と寄席休業の裏話」を読みました。今の日本の議員制民主政治は、もう臨界点を超えてしまっているように感じました。
庶民を代表する政治家を育てられないかな。そういう政治家の集まる政党を作れないかな。
何故、大臣にもなって、隅から隅まで全ての国民に思いを馳せないのでしょう。公の無い政治家、国民が増え過ぎましたね。
飲食業の方々、サービス業の方々、ダイナミックに生きて歴史に名前を遺してやりましょう☆☆☆
寄席、結局、GWは休業したのですね。
鳥田むらのニュース、そしてグローバルダイニングのニュース以降、痛快なニュースを聞きません。当事者ではないですが…。
勝てる見込みどころか、一発大当たり出来る見込みのある勝負が目の前に転がっているなら、掴みにいきましょう☆♪☆♪☆