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第86号 2014.5.27発行

「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、よしりんの心を揺さぶった“娯楽の数々”を紹介する「カルチャークラブ」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」、珍妙な商品が盛り沢山(!?)の『おぼっちゃまくん』キャラクターグッズを紹介する「茶魔ちゃま秘宝館」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが無限に想像をふくらませ、とことん自由に笑える「日本神話」の世界を語る「もくれんの『ザ・神様!』、秘書によるよしりん観察記「今週のよしりん」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…安倍自民党の政治家たち、そして自称保守の論客たちの言葉の乱れは弥増すばかりだ。彼らが繰り出す「積極的平和主義」「集団的自衛権は憲法前文にある」「グレーゾーン」「戦後レジームからの脱却」…これらの言葉には、欺瞞的な言い換え、誤魔化し、刷り込み、印象操作等が隠されている!詭弁の限りを尽して「集団的自衛権」行使へ突っ走ろうとする安倍政権の手に乗ってはならない!
※「ザ・神様!」…高天原の最終兵器にまたがり、轟音をとどろかせながら登場したタケミカヅチノオノカミ!天照大御神から遣わされた神を次々と籠絡してきたオオクニヌシも、タケミカヅチのド迫力にはさすがに狼狽!!いよいよ本当の国譲りが始まる!
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!私のあまのじゃくな頭の中はどうなってるの!?保守派と三島由紀夫とゲイについて?小林よしのりと高橋克典の意外な共通点!?好きになった女性に「友達からお願いします」という告白の仕方をどう思う?白人コンプレックスはある?下乳は好き?それとも谷間派?フランスの女性に対する印象は?…等々、よしりんの回答や如何に!?


【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第87回「集団的自衛権の本音を隠す言葉の乱調」
2. しゃべらせてクリ!・第47回「大相撲ぽっくん場所の大一番!の巻〈前編〉」
3. もくれんの「ザ・神様!」・第33回「勝負だ、ハッケヨーイ ~すったもんだの天孫降臨 その6~」
4. よしりんウィキ直し!・第21回「ゴーマニズム宣言⑭:『天皇論追撃篇』(新天皇論)⑦」
5. Q&Aコーナー
6. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
7. 読者から寄せられた感想・ご要望など
8. 編集後記


【生放送予定】



 明日28日(水)20時から「よしりんに、きいてみよっ!」を生放送予定!

 テーマ『防衛本能と性悪説』
 集団的自衛権のこと、AKB48の事件のこと、フランス取材のことなどを交えてお話します。 
 お楽しみ!




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第87回「集団的自衛権の本音を隠す言葉の乱調」

 保守と言うなら日本語が狂っていてはいけない。
 言葉の乱れは心の乱れだ。安倍自民党の政治家たち、それを熱烈支持する自称保守の論客たちの言葉の乱れは弥増すばかりだ。

 例えば安倍首相が連呼する「積極的平和主義」とは一体なんのことなのか?最近の国民は、よくこんな変な言葉に違和感を感じないでいられるな。
 普通、「積極的」に「平和」を求める「主義」ならば、とにかく積極的に外交・話し合いに全力を投入し、武力衝突の事態だけは避けようと尽くすものを言うはずではないか。
 そんな言葉は本来、反戦平和主義の左翼が使う言葉のはずである。

 ところが安倍首相は、積極的に暴力に訴えることも辞さない態度を「積極的平和主義」と言っているのだ。
 積極的に暴力を行使するとか、積極的に武力を見せつけて威嚇する態度を、普通は「平和主義」とは言わない。
 安倍のいう「積極的平和主義」とは、単なる「武断主義」のことである。「平和主義」の前に付けた「積極的」という語は、「武断的」という意味であり、「武断的平和主義」と言ってるわけで、正反対の言葉をドッキングさせている。
「平和主義」の前に「積極的」という言葉さえ付ければ、国民は安全だと錯覚するのだろうか?

 言葉の言い換えで現実に対して概念操作を行ない、現実そのものが「違うものに変化した」かのように見せかけるという欺瞞的で催眠性のある手法は、日常的に行なわれている。
 定着してしまったもので言えば、「首切り」「解雇」を「リストラ」と言い換えて、それがいかにも軽いものであるかのような印象に変えられたのが典型例である。
 これはオウム真理教の麻原彰晃が「殺人」を「ポア」と言い換えて、信者が殺人するときに抱く罪悪感を、減少させた手口と同じである。


 自民党幹事長・石破茂が、呆れたことに、「集団的自衛権行使容認」は、日本国憲法の趣旨にも合致するなどと言い出した。これは言葉そのものの乱調というより、論理が乱調を来たした例であり、つまり大脳が乱調を来たした恥ずべき事態である。
 5月23日のダイヤモンド・オンラインのインタビューで、石破は次のように発言している。
 トータルで憲法が意図する趣旨は前文に記されていますが、その中に「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて」と書いてあります。
 この趣旨からすれば、むしろ集団的自衛権は憲法においても積極的に評価されるべきではないでしょうか。

 なんと改憲派のはずの石破茂が、集団的自衛権の根拠を現行憲法の前文に求めている!
 しかも憲法前文の都合のいいところだけを「つまみ食い」しているのだ。
 そもそも日本国憲法前文には、この一文がある。
日本国民は……政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し……この憲法を確定する。

 さらに、石破が引用している「われらは、平和を維持し…」の前には、次の一文が入っている。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。

 どう読んだって日本国憲法前文の趣旨は「戦争放棄」であり、自らの安全と生存の維持も、国際社会で名誉ある地位を築くことも、決して武力は使わず、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」することによって行なうと宣言している。
 これまで改憲論者はこの前文を「平和を愛する諸国民」なんてどこにいるのだと揶揄し、これは「空想的平和主義」だと批判してきたはずだ。
 そもそも自民党は「日本国憲法改正草案」で前文を全面的に改正しており、「日本国憲法改正草案Q&A」で、その理由をこう説明している。