第439号 2022.6.28発行
「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしのひとたち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)
【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…常識的な庶民感覚で見れば、どっからどう見たってプーチンが悪であり、ゼレンスキーが善である。国際法の視点から見ても、他国の主権を侵して、武力で領土に踏み入ったら「侵略」であって、侵略以外の評価はない。日本は国際法秩序を守るという立場から、欧米諸国と協調してロシアと戦わなければならない。この非常時に、たったこれだけの判断ができない「知識人」がいるのが驚きだ。いわゆる自称保守派が「どっちもどっち論」「価値相対主義」に陥っているのは何故なのか?
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…自民党の改憲草案に反対し、緊急事態条項に激烈に悪印象を持っている人々が、今回の選挙に際して全国で配りまくっているチラシがある。そこには「兵務を女性や幼児に強制」「政府に従わないと虐殺可能」「政府批判者は逮捕」「選挙を廃止」「警察に現場で処刑できる権限を与える」「国民の資産没収」等といったことがおどろおどろしく書かれている。特に、コロナ騒ぎのウソを見破り、反ワクチンの態度を明確にしている人たちが過剰に反応しているようだ。何故こんなことになっているのだろうか?
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」…小中高に「飛び級」って必要?ロシアのウクライナ侵攻が始まったことで、コロナ報道がある程度沈静化した?市議会議員は半数にしても良いと思う?夏ドラマは何を見る?電力需給がひっ迫する中、原発再稼働の声が挙がっている状況をどう分析する?沖縄が中国から侵略される可能性はどれくらいある?AVという仕事は「職業選択の自由」で語ってはいけないの?先生は「おばけ」の存在をいつから信じなくなった?次シーズンの「相棒」で亀山薫が復活することをどう思う?…等々、よしりんの回答や如何に!?
【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第468回「【どっちもどっち論】の臆病保守」
2. しゃべらせてクリ!・第395回「大蛇に乗ったお父ちゃま! どこ行くとでしゅか?の巻【後編】」
3. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第262回「『緊急事態条項で処刑される』謎の怪文書を追う」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記
第468回「【どっちもどっち論】の臆病保守」 常識的な庶民感覚で見れば、どっからどう見たってプーチンが悪であり、ゼレンスキーが善である。
国際法の視点から見ても、他国の主権を侵して、武力で領土に踏み入ったら「侵略」であって、侵略以外の評価はない。
日本は国際法秩序を守るという立場から、欧米諸国と協調してロシアと戦わなければならない。
この非常時に、たったこれだけの判断ができない「知識人」がいるのが驚きだ。
藤井聡氏(京都大学大学院教授)が編集長の雑誌「表現者クライテリオン」7月号が、『「ウクライナ」からの教訓 来たるべき“有事”にどう備えるか?』と題する特集を組んでいる。
約100ページにわたり、14人もの論者が登場する大特集なのだが、皇室論と同様に、やはり保守の劣化を感じる。掲載された人物の誰もが「善悪の価値判断を避け、「価値相対主義」に陥っている。
彼らは「価値相対主義」という批判を「レッテル貼り」と言って、避けようとしているが、笑ってしまうことに「価値相対主義」なのだ。
何しろ、表紙を開くとすぐ載っている藤井編集長の巻頭言からこうだ。
(略)日本国内のマスコミ世論は「英雄ゼレンスキー大統領VS悪魔プーチン」とでも言うべき構図一色で塗りつぶされることとなった。
ただしこうした「勧善懲悪」構図だけでは、今回の「ウクライナ」問題を解釈し尽くす事など到底できない。(中略)こうした単純な認識構図だけでは、貴重な教訓の大半をみすみす廃棄してしまうことになる。
そのうえで藤井氏は「多様な知見・教訓を得ることを目途に」「多面的な視点・角度から様々に論ずる特集を企画することとした」と宣言するのだ。
笑うしかない「言い訳」である。ここまで周到に「言い訳」を宣言してから持論を披露する態度に、「ベルト歌舞伎」にも似た臆病さを感じてしまうのが「保守」の庶民的感覚だろう。
思い出すことがある。 1995年3月、地下鉄サリン事件と警察によるオウム強制捜査以降、マスコミ世論は「悪=麻原彰晃・オウム真理教VS善=警察・市民社会」とでも言うべき構図一色になっていた。
ところが、これにいわゆる知識人たちが「そんな勧善懲悪の単純な認識では、事件の深層は理解できない」などと言い出し、「警察にも『悪』はある」だの、「市民社会に受け入れられないオウムの側にも理はある」だのと主張した。
そしてついには、「戦後最大の思想家」とまで評された吉本隆明が「麻原は偉大な宗教家だ」と褒め称え、テレビには「一連の犯罪はオウムの犯行ではない」と断言する人物まで出てくる始末となってしまったのである。
大衆批判を建て前にして、「善悪二元論を否定するのが知識人」という、これも形式化したえらそうな立場を取る手法は、「相対主義」という思想形式の流れに沿ったものだった。
わしはオウム事件の最中に麻原が「悪」だと断定し、事件はオウムの犯行だと断言した。ところが上のようなえらそうな知識人たちから反発され、「正義を言う者は馬鹿」であるかのような批判にさらされた。
ところが可笑しなことに、大衆批判をしていた西部邁氏が、こう言ったのである。
オウム問題では「オウムがやった」と断言し、薬害エイズ問題でも「厚生省が悪い」といい放って行動し、自分の言動に伴う責任を貫徹した小林よしのりは偉い。みんな四の五のいわずに褒めるべきなのです。
(「発言者」1996年5月号、『新・ゴーマニズム宣言』1巻に収録)
そういえば、薬害エイズの時にも、目立ちすぎるわしに水をぶっかけようとして「厚生省がそんなに悪いのか?」などと言った知識人がいた。
善悪の価値観をはっきりさせ、自分の責任で勧善懲悪に徹すると決めて行動したわしを理解していた知識人は、後にも先にも西部氏しかいない。
その後継を自認する藤井聡氏ら一派は、西部邁の「時処位」の感覚を全く理解していない。そもそも西部邁の大衆批判は、知識人をも大衆として批判していたのである。
プーチンは麻原彰晃と何も変わらない。そしてロシア国民は「権威主義」に嵌り、オウム信者のように「洗脳」されているのである。
相対主義で善悪の区別もつけられなくなった「表現者クライテリオン」が、プーチン擁護だと判定され、恥をかくのは、それほど先のことではないだろう。
しかも巻頭言だけでは足りないのか、本論である特集に入る前にもうひとつ「巻頭コラム 鳥兜」というコーナーがあり、同様の主張を力いっぱい展開している。
その匿名筆者(「鳥兜氏」としておこう)は、冒頭こう書いている。
コメント
コメントを書く(ID:96332318)
>>220
こんにちは、酔いどれカエル坊主さん、何故前の号に書いたのですか?危うく見逃すところでしたよ。
ふぅ~危ない危ない。時代は最新号ですので気づかれないまま誰にも発見されずに白骨化するところでしたよ。
納豆はよく食べましたよ。今でも毎日のように食べてます。高校は水戸でした。今じゃすっかり垢抜けて茨城弁なんかでねぇっぺ。後基本コメントは3回だそうです。返信とか緊急のようなことは含まれないとか言ってたような、間違ってたらごめんなさい。過去に酒飲みながら4回も5回も書いてた馬鹿が
いたんですよ。馬鹿丸出しです。それは私です。それでは又。
(ID:125042837)
>>221
よく見つけてくれました(笑)
ついでに、この号の感想を…。
ゴー宣、「価値相対主義」の無意味さ、害悪ぶりがよくわかりました。
オウムの時も、薬害エイズの時も、そういえばいわゆる知識人が悪を擁護していましたね。思い出しました。
藤井聡は、経済の事については面白かったのに、皇室の事についてはからっきし無知で、残念な思いでしたが、そうですか、ウクライナ戦争もですか…。
やはり小林先生が、真の保守を受け継ぐしかないようですね。
仕事を増やす事になりますが、知識人の堕落ぶりがこうさせてしまっていると思うと、暗澹としてしまいます。
笑っていられないが、もう笑い飛ばすしかない。
トンデモ見聞録。
田中…誰!
誰やねんと思ったら、中国の人ですか。緊急事態条項反対にしては…怪しすぎる。
しかし、ビラがメルカリで売られているなどとは思いもしませんでした。
今号ももくれんさんのツッコミが冴えています。
私も緊急事態条項反対ビラの内容に絶句しました。が、大まじめにこう考えている人がいると思うと、この国の闇を感じずにはいられないですね。
次号も感想を書く予定です。
ありがとうございます。
(ID:96332318)
又見つけちゃった。