北海道のいろんな候補者に、概ねこんな内容の檄文を送った。自民、立民、国民民主、共産、参政だけね。 女系による皇位継承実現に関する要望 メールにて失礼いたします。 毎日の選挙運動、誠にお疲れ様です。私ははふぃyssdsghsdhg在住のbSDJsfvjhksと申します。(※註 ホントの檄文には、ちゃんと住所氏名書いたよ。そうしないと届かないしね。) 参議院選挙実施に当たり、候補者諸氏に、是非とも実現して頂きたい政策があり、ご連絡いたしました。 昨年、菅政権下で行われた有識者会議においても指摘されております通り、将来に渡る皇位の安定的な継承の実現は、我が国にとって喫緊かつ最重要の課題と言えます。秋篠宮家の眞子内親王殿下が婚姻により皇籍を離れてしまわれた事をはじめ、今上陛下の直系長子である愛子内親王殿下も、本年、めでたく成年皇族となられました。同じく、秋篠宮家の次女・佳子内親王殿下をはじめ、女性皇族方がご結婚と共に民間に下られてしまう事態も、秒読み段階に入ったと言えるでしょう。 それは翻せば、あの広い皇居内に、次世代の皇室を担う皇族は悠仁親王殿下お一人のみ、という事態に直結する事を意味します。 誠に不敬な邪推ではありますが、悠仁様に万が一の事態が起きた場合、それは即、神話以来続く皇統が、完全に途絶えてしまうという事なのです。 そこで、将来に渡る皇位の安定的な継承を確立する為にも、将来の立法府を担う候補者諸氏に、是非とも皇室典範の速やかな改正を要望いたします。 改正目的は無論、男系女系問わず、時の天皇の「直系長子」に対し、優先して継承資格を発生させる事です。 以下に、その為の理論的支柱を列挙します。 1 側室無しで、男系継承は不可能 2 古代史、あるいは神話から続く「皇統」のとらえ方について 3 所謂「旧宮家」子孫の皇籍取得の是非について この3つの論点に基づき、以下に私の私見を述べさせていただきます。 1 側室無しで、男系維持は不可能 過去126代に遡る天皇の歴史の中で、所謂「嫡子」(正室の子)は、69例のみです。残りの57例は全て「庶子」、つまり側室のお子様なのです。現在の皇室典範の基となった、旧皇室典範も、側室制度の存在を前提とする継承ルールです(高森明勅『天皇「生前退位」の真実』 p159)。 「男系男子」を維持する基盤となっていた側室制度が、昭和天皇の御意志で正式に廃止された以上、もう片方の、男系男子による継承という「片翼の継承ルール」だけが残ったままでは、皇位継承の不安定化を招いてしまうのは、避けられません(小林よしのり『新天皇論』p215 「一夫一婦は人倫の大本」という昭和天皇のお言葉により、側室制度は正式に廃止となった)。 また、21世紀を迎えた現在においては、近世以前と比較しても、乳児の生存率が向上しているので、正室(厳密に言うと、男性の親王に嫁ぐ妃殿下お一人)のみで男系継承は可能だ、とする指摘もあります。 しかし、翻せばこれは将来、秋篠宮家の悠仁親王殿下に嫁がれるお妃様に対して、「男の子が産まれるまで、何人でも子を産み続けろ」と強要しているに等しい解釈です。 現在の皇后陛下が、皇太子妃時代に受けてきた凄惨なバッシングや、宮内庁から、愛子様がお生まれになってからも尚、「男子を希望する」という内容の過度な圧力を加えられた前例からも推察できるように、将来、悠仁親王殿下に嫁がれる妃殿下たったお一人に対し、「男子出産」に対する国民の過度な期待が集中し、それが精神的重圧となる事は避けられないでしょう(小林よしのり『天皇論平成29年』 第9章「雅子妃殿下の御病気の真相」)。 特に、令和の現在においては、週刊誌やテレビのワイドショーばかりでなく、SNSによる書き込みや、ネットニュースのコメント欄等での誹謗中傷が、秋篠宮家の眞子様の精神状態を残酷に蝕んでしまった事は、記憶に新しいかと思います。 そのような事態が、将来の親王妃殿下に対して繰り返されるであろう事は、容易に予測できます。 「何がなんでも、男の子を産まなければ皇統が絶える」という精神的重圧を、我が国でたったお一人の女性皇族に押し付けるような皇位継承ルールは、極めて野蛮な制度であり、全面的な見直しが必要であると私は考えます。 2 古代史、あるいは神話から続く「皇統」のとらえ方について 竹田恒泰、八木秀次、櫻井よしこ各氏をはじめ、皇位の男系継承維持を主張する言論人らの基本姿勢は、「神武天皇以来、一貫して受け継がれてきた男系の血統を途絶えさせてはならない」というものです。 しかしながら、義江明子、高森明勅各氏らによる近年の研究では、古代日本の王朝における継承はあくまで「男女双系」を基盤としていたそうです。 特に、西暦にして690年、第41代持統天皇の御即位においては、神武天皇ではなく、「天照大神から統治を委任された存在」として即位した事がわかっています。現在に至るまで、皇位継承の最重要レガリアとして受け継がれる三種の神器が、天照大神から授かった「神璽」と位置づけられたのも、持統天皇の時代からです(義江明子『女帝の古代王権史』p139~)。 その30年後に編纂を終えた、大和政権の正式な歴史書である『日本書紀』(720年)における、天壌無窮の神勅の章には、日本は「吾が子孫(うみのこ)」、つまり「天照大神の子孫が王たるべき地なり」と明示されている事実からもわかるように、持統天皇即位以来の30年間は特に、唐の律令制度の影響を受けながらも、女性神である天照大神の子孫である、と言う点に、天皇の権威を確立しようとしていた時代だったと言えます。 大宝、養老と続く律令(継嗣令)の中に、「女帝の子も親王とせよ」という旨の注釈が加えられたり、第43代元明天皇から次代の元正天皇へ、つまり「母親から娘へ」と皇位が受け継がれたのも、この30年の間に起こった出来事です。 ちなみに、前述の高森明勅氏は、この元正天皇への譲位を「女系継承」だと解釈しています(高森明勅『「女性天皇」の成立』p121)。 さらに、明治になってから、天皇の勅裁による「旧譜皇統譜」における「世系第一」には、「天照皇大神」と記載されています。世系とは、「祖先から代々続いている血統」(広辞苑)を意味します。 つまり、皇統に連なる「血筋」の始まりは、「女系だ」と解釈する事も十分可能なのです。 所謂「男系派」が主張する、「神武天皇以来、一貫して男系で継承されてきた」という解釈は、あくまで一面的な見方に過ぎず、異なる立場から幾らでも反証可能な解釈でしかないのです。 少なくとも、神話や古代以来続く「伝統」にどれだけ配慮したとしても、将来に渡る皇統断絶のリスクを放置してまで、「男系男子」に固執すべき理由としては、根拠があまりにも薄弱だと言えるでしょう。 3 所謂「旧宮家」子孫の皇籍取得の是非について 皇位継承資格を持つ皇族数の減少に伴い、その対処法として、主に八木秀次氏等から提言され続けてきたのが、昭和22年、GHQ指令により民間に下られた(臣籍降下)11宮家の子孫に、皇籍を取得させるという案です。 ちなみに、テレビの討論番組等への出演も多い竹田恒泰氏も、11宮家の1つである竹田家の子孫との事です。 ここで注意すべき点が一つあります。 俗に、この案を指して「旧皇族の皇籍復帰」等と呼ばれる事がありますが、これは用語の使用法が間違っています。 この場合、「旧皇族」とはあくまで、昭和22年の時点で皇族であり、その後民間に下られたご本人を指す用語です。従って、竹田恒泰氏の御祖父様である竹田恒徳氏は「旧皇族」ですが(生まれた時点で、実際に本人が皇族だった為)、竹田恒泰氏本人は、生まれてこの方、皇統譜に氏名が記載された事実すら一切無いので、あくまで「一般国民」です。 当然、令和4年現在、ちょうど結婚適齢期を迎える世代の「旧宮家子孫」の方々も「旧皇族」とは呼びませんし、「皇籍復帰」という言葉も適切ではありません(生まれてから一度も、皇族だった事実が無い人達だから)。 正しくは、「旧宮家系一般国民男子の新たな皇籍取得」が、正確な表現です。 さて、本題に入りますが、八木秀次氏辺りからそのような提言がなされて、かれこれ15年以上になりますが(八木秀次「皇位継承問題に見る天皇制度の本質」 『わしズム』2004年9月25日号)、皇籍取得の意思を表明する「旧宮家」子孫は、未だ一人も、氏名すら明らかになっておりません。 その間に、先述したように、秋篠宮の眞子様は皇室を離れてしまわれ、愛子様は成年皇族となられました。 単純に、「皇族数の減少」という観点から見ても、所謂「旧宮家」案しか対処法が無いのであれば、政策として実現させる事は急務の筈ですが、15年以上も議論が続けられているのに、全く進展を見せない案に、皇室の将来をゆだねる事は果たして、適切なのでしょうか? それどころか、令和3年3月26日の参議院予算委員会では、「(当事者への意向確認について)そうしたみなさんに確認したことはないし、していく考えもない」と、当時の加藤勝信官房長官が答弁しており、実現可能性はほぼ、皆無と言えるでしょう。 また、昭和29年の葦津珍彦氏の提言にもあるように、理由の如何を問わず、一度でも功績を離脱された方は、二度と皇籍に復帰できないというのが、所謂「君臣の別」、つまり皇室と国民との間の“ケジメ”を守る為の不文の法とされてきた事の重みを鑑みれば、生まれてこの方、一度も皇族だった事実のない一般国民が、「旧宮家の子孫だから」という理由での皇籍取得が許されるべきではないのは、容易に想像できるかと思われます(高森明勅『「女性天皇」の成立』p62)。 さらに、昨年開かれた「『天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する付帯決議』に関する有識者会議」の中で、重要な提言がなされています。 所謂「旧宮家」案は、日本国憲法第14条で禁じられる、「門地による差別」に該当する可能性があるというのです。 これに対し、百地章氏などは、「旧皇族(原文ママ)の方々は(中略)一般国民とはやや違った立場にいらっしゃる方々であるから、特別な扱いがなされても良いのではないか」という旨の弁明をされていますが、「皇族」(憲法第1章が優先適用される)と、一般国民(憲法第3章の適用対象)以外に、日本国内に第3の身分を設ける事になり、これも憲法14条第2項が禁じる「華族制度その他の貴族の制度」を認める事になってしまう恐れもあります。 同時に、有識者会議の案として出された「養子縁組」案も、同様に「門地による差別」に該当すると言わねばなりません。 この国の誰よりも、「立憲主義」を守らなければならない天皇・皇室というお立場に、僅かでも「憲法違反」の疑いを生じさせるような政策など、初めから愚策でしかなく、検討の対象に加える事すら相応しくないと、私は考えます。 まとめると、 (1) 対象者本人の意思確認も含め、政策としての実現可能性が極めて薄い (2) 「君臣の別」、つまり皇室と国民との線引きを曖昧にしてしまう恐れがある (3) 日本国憲法が禁じる「門地による差別」に該当してしまう疑いがある 以上3点の理由により、所謂「旧宮家系一般国民男子の新たな皇籍取得」という政策は、白紙に戻すのが妥当ではないでしょうか。 結 言 小泉政権時代の有識者会議で提出された報告書において、「今後、皇室に男子がご誕生になることも含め」て検討したとしても尚、女性・女系天皇を支持している事実からもわかるように、悠仁様がいらっしゃるからといって、皇位継承の危機は一切、改善された事にはなりません。 その危機感を、皇室典範を改正できる、日本で唯一の国家機関である「国会」を構成する議員諸氏には、特に強く認識していただかないと困ります。 少なくとも上皇陛下は、「象徴天皇の務めが、常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ」ておられます(平成28年8月8日のビデオメッセージより)。無論、今上陛下とて、お気持ちは同じだと拝察いたします。 議員諸氏にはどうか、平成の御代から現在にいたるまで、上皇陛下や天皇陛下が、皇位継承の問題に対する御発言が制限される中、一体どれ程、御心を痛めてこられたのかを、まず第一に認識した上で、皇室典範改正という大役を果たしていただきたいと、私は強く訴えます。 参考文献 高森明勅『天皇「生前退位」の真実』 幻冬舎新書2016年11月30日 高森明勅『「女性天皇」の成立』 幻冬舎新書2021年9月30日 小林よしのり『新天皇論』 幻冬舎2010年12月20日 小林よしのり『天皇論平成29年』 幻冬舎2017年3月4日 八木秀次「皇位継承問題に見る天皇制度の本質」 幻冬舎『わしズム』平成16年9月25日号 義江明子『女帝の古代王権史』 ちくま新書2021年3月10日 葦津珍彦『天皇・神道・憲法』(高森前掲書からの二重引用) 宇治谷孟『日本書紀(上)全現代語訳』講談社学術文庫1988年6月10日(p63 天孫降臨の既述より)
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北海道のいろんな候補者に、概ねこんな内容の檄文を送った。自民、立民、国民民主、共産、参政だけね。
女系による皇位継承実現に関する要望
メールにて失礼いたします。
毎日の選挙運動、誠にお疲れ様です。私ははふぃyssdsghsdhg在住のbSDJsfvjhksと申します。(※註 ホントの檄文には、ちゃんと住所氏名書いたよ。そうしないと届かないしね。)
参議院選挙実施に当たり、候補者諸氏に、是非とも実現して頂きたい政策があり、ご連絡いたしました。
昨年、菅政権下で行われた有識者会議においても指摘されております通り、将来に渡る皇位の安定的な継承の実現は、我が国にとって喫緊かつ最重要の課題と言えます。秋篠宮家の眞子内親王殿下が婚姻により皇籍を離れてしまわれた事をはじめ、今上陛下の直系長子である愛子内親王殿下も、本年、めでたく成年皇族となられました。同じく、秋篠宮家の次女・佳子内親王殿下をはじめ、女性皇族方がご結婚と共に民間に下られてしまう事態も、秒読み段階に入ったと言えるでしょう。
それは翻せば、あの広い皇居内に、次世代の皇室を担う皇族は悠仁親王殿下お一人のみ、という事態に直結する事を意味します。
誠に不敬な邪推ではありますが、悠仁様に万が一の事態が起きた場合、それは即、神話以来続く皇統が、完全に途絶えてしまうという事なのです。
そこで、将来に渡る皇位の安定的な継承を確立する為にも、将来の立法府を担う候補者諸氏に、是非とも皇室典範の速やかな改正を要望いたします。
改正目的は無論、男系女系問わず、時の天皇の「直系長子」に対し、優先して継承資格を発生させる事です。
以下に、その為の理論的支柱を列挙します。
1 側室無しで、男系継承は不可能
2 古代史、あるいは神話から続く「皇統」のとらえ方について
3 所謂「旧宮家」子孫の皇籍取得の是非について
この3つの論点に基づき、以下に私の私見を述べさせていただきます。
1 側室無しで、男系維持は不可能
過去126代に遡る天皇の歴史の中で、所謂「嫡子」(正室の子)は、69例のみです。残りの57例は全て「庶子」、つまり側室のお子様なのです。現在の皇室典範の基となった、旧皇室典範も、側室制度の存在を前提とする継承ルールです(高森明勅『天皇「生前退位」の真実』 p159)。
「男系男子」を維持する基盤となっていた側室制度が、昭和天皇の御意志で正式に廃止された以上、もう片方の、男系男子による継承という「片翼の継承ルール」だけが残ったままでは、皇位継承の不安定化を招いてしまうのは、避けられません(小林よしのり『新天皇論』p215 「一夫一婦は人倫の大本」という昭和天皇のお言葉により、側室制度は正式に廃止となった)。
また、21世紀を迎えた現在においては、近世以前と比較しても、乳児の生存率が向上しているので、正室(厳密に言うと、男性の親王に嫁ぐ妃殿下お一人)のみで男系継承は可能だ、とする指摘もあります。
しかし、翻せばこれは将来、秋篠宮家の悠仁親王殿下に嫁がれるお妃様に対して、「男の子が産まれるまで、何人でも子を産み続けろ」と強要しているに等しい解釈です。
現在の皇后陛下が、皇太子妃時代に受けてきた凄惨なバッシングや、宮内庁から、愛子様がお生まれになってからも尚、「男子を希望する」という内容の過度な圧力を加えられた前例からも推察できるように、将来、悠仁親王殿下に嫁がれる妃殿下たったお一人に対し、「男子出産」に対する国民の過度な期待が集中し、それが精神的重圧となる事は避けられないでしょう(小林よしのり『天皇論平成29年』 第9章「雅子妃殿下の御病気の真相」)。
特に、令和の現在においては、週刊誌やテレビのワイドショーばかりでなく、SNSによる書き込みや、ネットニュースのコメント欄等での誹謗中傷が、秋篠宮家の眞子様の精神状態を残酷に蝕んでしまった事は、記憶に新しいかと思います。
そのような事態が、将来の親王妃殿下に対して繰り返されるであろう事は、容易に予測できます。
「何がなんでも、男の子を産まなければ皇統が絶える」という精神的重圧を、我が国でたったお一人の女性皇族に押し付けるような皇位継承ルールは、極めて野蛮な制度であり、全面的な見直しが必要であると私は考えます。
2 古代史、あるいは神話から続く「皇統」のとらえ方について
竹田恒泰、八木秀次、櫻井よしこ各氏をはじめ、皇位の男系継承維持を主張する言論人らの基本姿勢は、「神武天皇以来、一貫して受け継がれてきた男系の血統を途絶えさせてはならない」というものです。
しかしながら、義江明子、高森明勅各氏らによる近年の研究では、古代日本の王朝における継承はあくまで「男女双系」を基盤としていたそうです。
特に、西暦にして690年、第41代持統天皇の御即位においては、神武天皇ではなく、「天照大神から統治を委任された存在」として即位した事がわかっています。現在に至るまで、皇位継承の最重要レガリアとして受け継がれる三種の神器が、天照大神から授かった「神璽」と位置づけられたのも、持統天皇の時代からです(義江明子『女帝の古代王権史』p139~)。
その30年後に編纂を終えた、大和政権の正式な歴史書である『日本書紀』(720年)における、天壌無窮の神勅の章には、日本は「吾が子孫(うみのこ)」、つまり「天照大神の子孫が王たるべき地なり」と明示されている事実からもわかるように、持統天皇即位以来の30年間は特に、唐の律令制度の影響を受けながらも、女性神である天照大神の子孫である、と言う点に、天皇の権威を確立しようとしていた時代だったと言えます。
大宝、養老と続く律令(継嗣令)の中に、「女帝の子も親王とせよ」という旨の注釈が加えられたり、第43代元明天皇から次代の元正天皇へ、つまり「母親から娘へ」と皇位が受け継がれたのも、この30年の間に起こった出来事です。
ちなみに、前述の高森明勅氏は、この元正天皇への譲位を「女系継承」だと解釈しています(高森明勅『「女性天皇」の成立』p121)。
さらに、明治になってから、天皇の勅裁による「旧譜皇統譜」における「世系第一」には、「天照皇大神」と記載されています。世系とは、「祖先から代々続いている血統」(広辞苑)を意味します。
つまり、皇統に連なる「血筋」の始まりは、「女系だ」と解釈する事も十分可能なのです。
所謂「男系派」が主張する、「神武天皇以来、一貫して男系で継承されてきた」という解釈は、あくまで一面的な見方に過ぎず、異なる立場から幾らでも反証可能な解釈でしかないのです。
少なくとも、神話や古代以来続く「伝統」にどれだけ配慮したとしても、将来に渡る皇統断絶のリスクを放置してまで、「男系男子」に固執すべき理由としては、根拠があまりにも薄弱だと言えるでしょう。
3 所謂「旧宮家」子孫の皇籍取得の是非について
皇位継承資格を持つ皇族数の減少に伴い、その対処法として、主に八木秀次氏等から提言され続けてきたのが、昭和22年、GHQ指令により民間に下られた(臣籍降下)11宮家の子孫に、皇籍を取得させるという案です。
ちなみに、テレビの討論番組等への出演も多い竹田恒泰氏も、11宮家の1つである竹田家の子孫との事です。
ここで注意すべき点が一つあります。
俗に、この案を指して「旧皇族の皇籍復帰」等と呼ばれる事がありますが、これは用語の使用法が間違っています。
この場合、「旧皇族」とはあくまで、昭和22年の時点で皇族であり、その後民間に下られたご本人を指す用語です。従って、竹田恒泰氏の御祖父様である竹田恒徳氏は「旧皇族」ですが(生まれた時点で、実際に本人が皇族だった為)、竹田恒泰氏本人は、生まれてこの方、皇統譜に氏名が記載された事実すら一切無いので、あくまで「一般国民」です。
当然、令和4年現在、ちょうど結婚適齢期を迎える世代の「旧宮家子孫」の方々も「旧皇族」とは呼びませんし、「皇籍復帰」という言葉も適切ではありません(生まれてから一度も、皇族だった事実が無い人達だから)。
正しくは、「旧宮家系一般国民男子の新たな皇籍取得」が、正確な表現です。
さて、本題に入りますが、八木秀次氏辺りからそのような提言がなされて、かれこれ15年以上になりますが(八木秀次「皇位継承問題に見る天皇制度の本質」 『わしズム』2004年9月25日号)、皇籍取得の意思を表明する「旧宮家」子孫は、未だ一人も、氏名すら明らかになっておりません。
その間に、先述したように、秋篠宮の眞子様は皇室を離れてしまわれ、愛子様は成年皇族となられました。
単純に、「皇族数の減少」という観点から見ても、所謂「旧宮家」案しか対処法が無いのであれば、政策として実現させる事は急務の筈ですが、15年以上も議論が続けられているのに、全く進展を見せない案に、皇室の将来をゆだねる事は果たして、適切なのでしょうか?
それどころか、令和3年3月26日の参議院予算委員会では、「(当事者への意向確認について)そうしたみなさんに確認したことはないし、していく考えもない」と、当時の加藤勝信官房長官が答弁しており、実現可能性はほぼ、皆無と言えるでしょう。
また、昭和29年の葦津珍彦氏の提言にもあるように、理由の如何を問わず、一度でも功績を離脱された方は、二度と皇籍に復帰できないというのが、所謂「君臣の別」、つまり皇室と国民との間の“ケジメ”を守る為の不文の法とされてきた事の重みを鑑みれば、生まれてこの方、一度も皇族だった事実のない一般国民が、「旧宮家の子孫だから」という理由での皇籍取得が許されるべきではないのは、容易に想像できるかと思われます(高森明勅『「女性天皇」の成立』p62)。
さらに、昨年開かれた「『天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する付帯決議』に関する有識者会議」の中で、重要な提言がなされています。
所謂「旧宮家」案は、日本国憲法第14条で禁じられる、「門地による差別」に該当する可能性があるというのです。
これに対し、百地章氏などは、「旧皇族(原文ママ)の方々は(中略)一般国民とはやや違った立場にいらっしゃる方々であるから、特別な扱いがなされても良いのではないか」という旨の弁明をされていますが、「皇族」(憲法第1章が優先適用される)と、一般国民(憲法第3章の適用対象)以外に、日本国内に第3の身分を設ける事になり、これも憲法14条第2項が禁じる「華族制度その他の貴族の制度」を認める事になってしまう恐れもあります。
同時に、有識者会議の案として出された「養子縁組」案も、同様に「門地による差別」に該当すると言わねばなりません。
この国の誰よりも、「立憲主義」を守らなければならない天皇・皇室というお立場に、僅かでも「憲法違反」の疑いを生じさせるような政策など、初めから愚策でしかなく、検討の対象に加える事すら相応しくないと、私は考えます。
まとめると、
(1) 対象者本人の意思確認も含め、政策としての実現可能性が極めて薄い
(2) 「君臣の別」、つまり皇室と国民との線引きを曖昧にしてしまう恐れがある
(3) 日本国憲法が禁じる「門地による差別」に該当してしまう疑いがある
以上3点の理由により、所謂「旧宮家系一般国民男子の新たな皇籍取得」という政策は、白紙に戻すのが妥当ではないでしょうか。
結 言
小泉政権時代の有識者会議で提出された報告書において、「今後、皇室に男子がご誕生になることも含め」て検討したとしても尚、女性・女系天皇を支持している事実からもわかるように、悠仁様がいらっしゃるからといって、皇位継承の危機は一切、改善された事にはなりません。
その危機感を、皇室典範を改正できる、日本で唯一の国家機関である「国会」を構成する議員諸氏には、特に強く認識していただかないと困ります。
少なくとも上皇陛下は、「象徴天皇の務めが、常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ」ておられます(平成28年8月8日のビデオメッセージより)。無論、今上陛下とて、お気持ちは同じだと拝察いたします。
議員諸氏にはどうか、平成の御代から現在にいたるまで、上皇陛下や天皇陛下が、皇位継承の問題に対する御発言が制限される中、一体どれ程、御心を痛めてこられたのかを、まず第一に認識した上で、皇室典範改正という大役を果たしていただきたいと、私は強く訴えます。
参考文献
高森明勅『天皇「生前退位」の真実』 幻冬舎新書2016年11月30日
高森明勅『「女性天皇」の成立』 幻冬舎新書2021年9月30日
小林よしのり『新天皇論』 幻冬舎2010年12月20日
小林よしのり『天皇論平成29年』 幻冬舎2017年3月4日
八木秀次「皇位継承問題に見る天皇制度の本質」 幻冬舎『わしズム』平成16年9月25日号
義江明子『女帝の古代王権史』 ちくま新書2021年3月10日
葦津珍彦『天皇・神道・憲法』(高森前掲書からの二重引用)
宇治谷孟『日本書紀(上)全現代語訳』講談社学術文庫1988年6月10日(p63 天孫降臨の既述より)