72fb1ce34d59e15889f7d5df6d4dc68b237d894c
第283号 2018.9.4発行

「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしの人たち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)

【今週のお知らせ】
※「泉美木蘭のトンデモ見聞録」…東京医科大学に端を発した女医問題では未だに「男女平等」「システムを整えろ」と主張する者、さらには「海外では女医が多いのに、日本では…」と言う“海外出羽の守”が多い。ネットメディアBuzzFeedNewsの「女性医師の割合、日本は先進国で最低 学生比率も印パに及ばず」という“出羽の守記事”をテキストとして、医療だけでなく各国をとりまく国際事情を深堀りしていきます。
※「ゴーマニズム宣言」…ネトウヨ・自称保守界隈では「安倍晋三は外交に強い」「外交なら安倍晋三だ」などと言われている。それは本当だろうか?慰安婦問題、日韓合意は?北方領土問題、日露両国「共同経済開発」は?北朝鮮の拉致問題・非核化は?「リメンバー・パールハーバー!」と暴言を吐く米大統領と蜜月関係?安倍外交の実態を直視せよ!!
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!男女平等の流れに対して女性自身の本心は?第二次安倍内閣を評価できる部分はある?女性を連れて海外旅行する時に心がけることは何?「私、痩せなきゃ。ダイエットします!」と決意表明した女性に男はどう言葉をかけるべき?娯楽とは一段低く見られ続けるべきもの?オリンピックは本当に必要?…等々、よしりんの回答や如何に!?


【今週の目次】
1. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第95回「出羽の守退治・海外医療事情を深堀り!」
2. ゴーマニズム宣言・第291回「安倍外交は失敗の連続である」
3. しゃべらせてクリ!・第240回「怖賀リータに生産性はありましゅか?の巻〈前編〉」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記




d0341ad05fcd097fda3efd17d8490d73efe0402c

第95回「出羽の守退治・海外医療事情を深堀り!」

 ネットメディアBuzzFeedNewsに「女性医師の割合、日本は先進国で最低 学生比率も印パに及ばず」という“出羽の守記事”があった。
 インド・パキスタンという2国を持ち上げている時点で、すぐに怪しいと感じる人のほうが多いのではないかと思うが、女医問題を考える際のテキストとして、この記事の裏側を解説してみたい。

●女医が多いエストニアは、女性の徴兵制もある
 記事ではまず、「『海外では女医が多い』の疑問」で紹介したOECD加盟国の女性医師の割合を引き合いに出し「女性の比率が高いのは、エストニア、フィンランド、スロバキアなど北欧、中東欧諸国だ」と紹介している。
 女医率73.8%でOECD第1位のエストニアは、すでに論じた通り、社会主義体制の崩壊によって経済格差が生じて失業率が伸び、男性の自殺率や犯罪死亡率が増加している国だ。男性の人口が女性の88%しかない。
 さらに深堀りしておくと、エストニアという国は、隣接するロシアから侵略された経緯もあり、現在もその脅威に常に備えなければならないという緊張状態に置かれている。そのため、女性も軍隊予備部隊に参加して軍事訓練を受ける義務がある。

 91a78221bec05ac0c0043a93cfcfaf2e2dcc9733

 おまけに、頼みの綱のアメリカは、よりにもよってロシアと仲良くしていて、バルト三国を突き放した。
▼バルト3国をロシアから守ると保障しなかったトランプ

 https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/04/3-97.php
(Newsweek 2018年4月5日)

 記事によると、エストニア・ラトビア・リトアニアのバルト三国首脳は、アメリカのトランプ大統領に対して、「ロシアが侵攻してきた際、領土を守って欲しい」と要請したが、トランプは、バルト三国がアメリカ製の武器を購入し、NATOに金を出したことについては褒め称え、肝心のロシアについては「脅威」とは認めなかった。
 しかもトランプは、「バルト三国はロシアと仲良くしたほうがいい」とまで言ってしまっている。「アメリカはバルト三国を守る気がまったくない」ということを公言してしまったのだ。NATOの盟主であるにも関わらず、「NATO? なにそれ?」としか思っていないのである。
(ほら、日本もよく考えたほうがいい…)
 
 こうなったら女性も動員して国難状態に立ち向かうしかない。というわけで、エストニアの女性は、国防軍だけでなく民兵組織に参加しているケースもある。仕事をして、子育てしながら、常時ライフルに油を差して戦闘の準備をし、週末になると子供を家に残してゲリラ戦の演習に参加するのだ。
 女性は死んでいく男性に嘆きながら、働きつつ、子供を産み育て、武器を持って命懸けで戦う緊張と恐怖にも耐えねばならない。
 男女平等を絶対正義と考える人々は、エストニアの女性の生き方を大絶賛して推奨するだろうか? それとも、「そんな極端な国難、うちの国にあるわけないから」と安心したところで、「働き、戦う女性の精神」だけをつまみ食いするのだろうか?

●フィンランドに憧れるなら町医者に行くな
 女医率57.2%でOECD第3位のフィンランド。東京医大の問題が発覚した際には、駐日フィンランド大使館が、ツイッターにこんな投稿をして話題になった。