第490号 2023.12.26発行
「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしのひとたち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)
【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…2023年最後の配信となるので、一年を振り返っておこう。残念ながらこの一年は、ひとことで言えば「ニヒリズム蔓延」の年だった。ウクライナ戦争の長期化、イスラエル・パレスチナ紛争勃発、中国問題…国際情勢はニヒリズムで見るしかないという世界情勢になっている。強権・独裁制の大国を相手にしては、まともな民主主義国家の理屈が一切通じず、手の施しようがないという意識が世界中に蔓延しているのだ。そして、そんな厳しい国際環境の中にある日本は、この一年どうだったかと見てみれば、これがまた惨憺たる有様なのである。令和6年を迎える前に、この状況をどう考えるべきなのだろうか?
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…今年は、5月にコロナが「5類」に移行し、本当に科学的に考えることがないまま終わるんだなと思っていたら、ジャニーズ問題にスポットが浴びせられ、今度は法的に考えることすらできないという血みどろの八つ墓村ぶりを見せつけられた1年だった。マスコミの重要な仕事とは、真実を黙殺することらしい。そこで、令和5年にマスコミが黙殺した、私の気になるニュースについてまとめておく。
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」…小室圭さんの株が爆上がり!?運動が得意な日本人がこぞって野球・サッカーといった「海外で稼げるスポーツ」を選択することは日本の力が弱くなっていることの現れなのでは?今年の流行語大賞「アレ」をどう思う?自分の人生とはまったく関係ない筈の他人の不倫に対して、なぜ人は物凄く批難するの?ドジャースの大谷翔平選手の1000億円契約について、正直どう思う?東京駅は好き?…等々、よしりんの回答や如何に!?
【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第519回「ニヒリズム蔓延の年だった」
2. しゃべらせてクリ!・第446回「しゃべクリアワード2023!」
3. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第313回「令和5年版 今年の黙殺」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記
第519回「ニヒリズム蔓延の年だった」 2023年最後の配信となるので、一年を振り返っておこう。
残念ながらこの一年は、ひとことで言えば「ニヒリズム蔓延」の年だった。
ウクライナ戦争は、まだまだ終わらない。
侵略されたら国家・国民の消滅を防ぐため、あるいは民族の隷従を防ぐため、徹底的に抵抗するしかない。領土を少しづつ切り売りしながら停戦しても、さらになめられて全土占領を少し遅らせるだけだ。
だが、あれだけ露骨に国際法を無視して始められた侵略戦争なのだから、世界中がロシアを非難するかと思ったのに、最初から曖昧な態度をとる国々があり、さらにプーチンが居直って長期化したら、ロシア国内にも、国外にも、それを許容する雰囲気すら出てきてしまった。
国内から厭戦気分が醸成され、良心的な国民が独裁者に反旗をひるがえすなどという希望的観測も、いまや風前の灯火だ。
もしロシアが侵略で得をしようものなら、もう「国際法」というものの意味が完全になくなってしまう。
世界の歴史は国際法以前に逆戻りして、力による支配が全ての帝国主義の時代に戻り、特に核を持っている国が何でもできるようになるという結論に達してしまうのだ。
核は「脅し」において、ものすごい効果を発揮する。
だからこそウクライナ軍は、ロシアの領土まで踏み込む反転攻勢ができないでいる。
ロシアの領土が戦場にならなければ、ロシアの国民は自国が戦争をしていることすら実感できず、徐々に関心を失っていく。そのためロシア国内で厭戦感情が高まることもなく、反プーチンの政変が起きて戦争が終結するというシナリオが実現する可能性はなくなってしまった。
世界中からロシアに向けていくら反戦平和を叫ぼうと、ロシア国民は聞く耳も持たないわけで、平和主義というものは、独裁権威主義の前では、全く空疎な念仏だということが100%証明されてしまう。
さらにヨーロッパ各国は「支援疲れ」とかいって、支援が続くかどうかわからないという不安感もあり、アメリカも支援の予算が枯渇すると言っている。
しかもそんな状況の中で、イスラエル・パレスチナ紛争が勃発し、むしろアメリカはそっちに関心が向いてしまった。
今回の紛争は、もちろんハマスが先に仕掛けたことが発端ではあるのだが、それよりずっと以前からイスラエル・パレスチナは常に戦争状態にあるのだから、今回においてはどちらが先に仕掛けたかなんてことには、そもそも何の意味もない。
イスラエルの報復攻撃は国際法上非常に問題があり、そのイスラエルを支持する形になったアメリカは、ロシアの「国際法違反」を非難する姿勢との間に、大きな矛盾を抱え込む事態となってしまっている。
わしはVol.483「パレスチナよりウクライナだ」で書いたとおり、
パレスチナ問題にはもう関心を持っても仕方がないとまで思うところがあるのだが、それにしても今回のパレスチナの被害は規模が違いすぎる。
戦闘開始から2か月余りでガザ地区の死者数は人口220万人のほぼ1%にあたる2万人を超え、うち4割の8千人が子供だという。しかもその数は病院で死亡が確認された数だけなので、実際にもっと多い可能性があり、攻撃はさらに南部に広がっているため、まだまだ増えていくのは確実。これまでの紛争と比べても、その犠牲者数と殺戮の無差別性では前例のないものになっている。
それほどまでの状態になっているのに、イスラエル国民はパレスチナ人の不幸に対して、一切関心を持たないことに決めてしまっている。
イスラエル国民の意識は、パレスチナ人なんかやっちまえ、虐殺すればいいじゃないかというところにまでなっているわけで、それはホロコーストの際に、ユダヤ人がどれだけガス室に送られて殺されていても、関心を持たなかったフランス人などと何ら変わらない。
このように、とてつもない不幸がありながら完全に放置されるという事態が平然と頻発しており、それに対して「反戦平和」の呪文を唱えても、その最悪の状況を覆したり、食い止めたりすることなど全く不可能であると分かってしまった。
理想主義的な言葉が、一切何の役にも立たないということが、明白になってしまったのである。
そしてさらに、中国の問題がある。
コメント
コメントを書く(ID:125042837)
だふねさんのブログ読みました。
すごく示唆に富むお話でした。
だふねさんの夫さんの言葉、男である私からすればすんなり理解できる言葉である、腑に落ちる言葉であるなあ。
おそらく夫さんは、だふねさんのことを気遣っているからこそ、そういう発言になったのではないでしょうか。
知人のコメントも秀逸ですね。
「養老孟司に分析されたくない」
思わずクスッとしました。知人に同感です(笑)。
(ID:130339561)
SPA!の日本人論を読みました。
「死者のルール感覚も参加させる民主主義」という意識は、なるほどと思いました。
長い歴史を持つ日本人なら必要な事かもしれません。
そうやって考えるとジャニーズ問題も日本の男色の歴史とは切っても切れない繋がりがあると思いました。
日本最古の「芸能」は、神話の世界までさかのぼると、アメノウズメノミコトが起源だと言われているようですが、だとするとほぼ裸で踊っていたような事を「古事記」に実際に書かれているので、正しい事を新しい歴史教科書に載せるべきでしたが、残念でした。
日本の芸能は最初から神に捧げるものであると同時にワイセツなものだったんですね。
神々しいものといかがわしいものの両立ですね。
昔から芸能と売春も切っても切れないものだったんですね。
ちょっと前までぐらいは裏でやっていたと思います。
枕営業と言われているやつだと思います。
日本の性文化にほとんどタブーはないというのは、納得で今でもそうだと思います。
いくら表向きに綺麗事を言っていても、裏では色々とやっていると思います。
次回の性文化の実態、楽しみにしています。🤤
(ID:304726)
だふねさんがブログで「ブス」についてお書きになったくだりを読んでいたら、よしりん先生がオウムのVXガスから逃れたと思ったら香港に旅行中VXブスに遭遇した、とお描き/お書きになってた事を思い出しました。色んな意味で、他の誰にも真似のできないギャグですよね。
ところで昔、テレビ番組『クイズダービー』を観ていたら、問題で「金魚ブス(すくいようのないブス)」とか「1円玉ブス(これ以上崩しようのないブス)」という言葉が出てきた事がありました。「良くこんな事思い付くなあ」と今思い出しても感心してしまいますが、現代こうした問題をクイズ番組で出したら大炎上なのでしょうか・・・・・・こういう機知が公に出せないとしたら、やはり勿体ない気がします。