小林よしのりライジング

「大谷翔平の記者会見を見て」小林よしのりライジング Vol.489

2023/12/19 17:30 投稿

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第489号 2023.12.19発行

「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしのひとたち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…大谷翔平選手のドジャース移籍記者会見を見た。野球解説者やスポーツライターにはそれぞれに言いたいことがあるだろうが、わしはそれらとは全く違う視点で、ナショナリストとしての感想を記しておきたい。野球発祥の地であるアメリカに日本人が行って、歴史に残る快挙をやり遂げた。そうなるとどうしたって、かつては戦争をした敵国同士だったのにということも意識しなければいけないはずなのだが、誰もそれは言わないのだ。日本はアメリカと戦争をして、ものすごく無惨に負けた。その戦争で死んだ日本兵たちは、どのように大谷を眺めるだろうということまで、思いを馳せてみなければいけないのではないか?
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…「安倍晋三が好きだよね♡」という絆でつながっていたネトウヨたちの大同団結が、いまそこかしこで崩壊を迎えている。ネトウヨ作家がネトウヨ議員をいかにもネトウヨらしく「クズ」呼ばわりし、「クズ」呼ばわりされたネトウヨ議員の可愛がっているネトウヨが、ネトウヨ作家にすり寄ったので、ネトウヨたちが「このクズめー!」と憎悪しているという構図だが、私から見ると、百田も青山も同じようなものにしか見えない…。ネトウヨ“冬の陣”勃発か!?
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」戦後日本の食料自給率が下がった理由は?今年の紅白で注目しているのは、新しい学校のリーダーズ?Ado?今後、ジャニーズ問題は人々から忘れ去られるの?喘息の持病持ちで色白で華奢…いわゆる「男らしさ」からはかけ離れた子供時代だったのに、なぜ今のような「覚悟」を持てたの?若い人たちの間で昭和のヒット曲やドラマが流行っている「昭和回帰」の理由とは?「妊娠は病気じゃない」なら「老化だって病気じゃない」のでは?アイヌ問題が綺麗に解決する方法はないの?創作環境が近代化されることに対する危機感を感じたりする?…等々、よしりんの回答や如何に!?


【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第518回「大谷翔平の記者会見を見て」
2. しゃべらせてクリ!・第445回「メリー苦シミマス! 地獄のサンタがやって来た~っしゅ!の巻【後編】」
3. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第312回「ネトウヨ“冬の陣”か? 分断はじまる」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記




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第518回「大谷翔平の記者会見を見て」

 大谷翔平選手のドジャース移籍記者会見を見た。
 野球解説者やスポーツライターにはそれぞれに言いたいことがあるだろうが、わしはそれらとは全く違う視点で、ナショナリストとしての感想を記しておきたい。

 わしが見てまず驚いたのは、大谷ってデカいんだということだった。
 普段の野球中継だと、他の選手に交じった姿しか映らないので気づかなかったが、記者会見やニュース映像でマスコミや球団関係者と並んでいるのを見て、並みのアメリカ人よりもずっと大きいのがわかった。
 あの大谷の体格を、日米で戦争して負けた時の日本の兵隊たちが見たらどう思うんだろうと、まずわしは思ってしまったのである。
 アメリカとの戦争に敗れた時の日本人は、小っちゃかった。
 歩兵はほとんどが百姓で、田畑を耕しているから、背は低いが足腰だけは強くて、重装備を背負ってものすごい距離を徒歩で行軍することができた。
 日本兵にとっては普通の行軍を、米兵の捕虜を護送する際にやらせたらバタバタ倒れて死んでしまって、それが後に「バターン死の行進」と言われたりしたのである。

 日本人が小さいのは人種的な特徴で、そのハンディを克服するような体格の日本人が登場することはないと思っていたのに、それが現れたのだ。これは戦後の経済発展と、それに伴う栄養状況の改善などによることは間違いない。
 ただ、だからといって、敗戦したおかげで戦後こんないい世の中になれたとか、負けてよかったとかいう話ではない。
 戦争はもう否応もないことで、いいとか悪いとかいう判断でやったり、やめたりできるものではない。負けると分かっていても戦わなければならない時だってあるのだ。
 大東亜戦争では、インテリの学生も特攻隊に志願し、死んでいった。『戦争論』で描いたが、彼らは自分が特攻したからといって、それで戦争に勝てるとは思っていなかった。しかし、負けた後に子孫へ残すもののために、自らの若い命を賭けたのである。
 戦艦大和で出撃した秀才たちも、理知的に考えた結果として、未来の日本の礎になるためと思って散っていったのだった。
 そうして彼らが期待をかけた「未来の日本人」が大谷翔平であれば、英霊たちも皆、その雄姿を見て喜ぶだろうなあと思うのである。

 昭和9年(1934)11月、読売新聞の社長・正力松太郎がベーブ・ルースらメジャーリーグ(当時は「大リーグ」といった)のオールスターチームを日本に招請し、「日米野球」を開催した。
 まだ日本にプロ野球チームはなく、読売新聞が「全日本軍」を編成して対戦したが、結果は16戦全敗と散々。伝説の投手・沢村栄治がベーブ・ルースを三振に打ち取るなど、1失点の好投を見せたのが唯一の快挙だった。
 日米野球終了後の12月、読売新聞は「全日本軍」を中心に「大日本東京野球倶楽部」を設立。後に「東京巨人」と改称、これが現在の読売ジャイアンツのルーツである。
 昭和11年(1936)には大阪タイガース(現・阪神タイガース)や名古屋軍(現・中日ドラゴンズ)などが設立され、プロ野球リーグがスタートする。しかし、戦前は「早慶戦」に代表される学生野球の方が人気だったらしい。
 その後、大東亜戦争が勃発。戦況の悪化に伴い、昭和19年(1944)にプロ野球は休止となり、そして敗戦。
 野球では全くアメリカに歯が立たず、さらに戦争でも圧倒的な国力の差の前に惨憺たる敗北となってしまった。
 まさかその78年後、日本人がアメリカ・メジャーリーグのナンバーワン選手になるなんて、誰も思いもしなかっただろう。しかも、あのベーブ・ルース以来の二刀流で、ルースを上回る記録を残すなんて、ありえないとしか思わないはずだ。

 戦後だってほんの少し前まで、日本のプロ野球はアメリカ・メジャーリーグとは比べ物にならないほどの、レベルの差があると誰もが思っていた。
 一世を風靡した漫画『巨人の星』では、主人公・星飛雄馬は子供時代から元プロ野球選手の父に、「大リーグボール養成ギプス」という児童虐待としか言いようのない装具を付けられ、野球の英才教育を受ける。
 しかし「大リーグボール養成ギプス」と言いながら、親子の目標は大リーグではなく「巨人の星」をつかむこと、つまり日本のプロ野球のジャイアンツのスター選手になることだった。
 飛雄馬は巨人の投手になり、「大リーグボール」という魔球を投げるが、最後まで大リーグに入るという話にはならなかった。
 漫画でしかありえない物理的に不可能な魔球や、漫画でしかありえない不自然な描写が続出して「荒唐無稽」とも思えた『巨人の星』だが、その作品においてさえ日本人がメジャーリーグに入団するという展開は「ありえない」こととされ、描かれなかったのだ。 

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コメント

ゴーさんのブログに関連して……

神奈川県の丹沢山地に『宮ヶ瀬ダム』というダムがある。イルミネーションなどを実施し、観光スポットとなっているが、実はこのダム、全くの「無用の長物」、いわゆる「ムダなダム」である。
高度経済成長期に、水道水の利用量が右肩上がりで推移していたため計画されたものの、水道水の利用量が半永久的に右肩上がりで推移するはずもなく、ダムを建設してみたものの、結果的には水道水用としては利用されていない。

なぜ、こんなことが起きたのか。『データを見誤ったから』である。
「データ」そのものは無機質な数字である。「データ」そのものに権威など無い。肝心なのは、そのデータが意味するところを読み取る能力ではないか。
「データ」の解釈を誤ると、正確な予測は出来ない。

毎日新聞の世論調査のデータを基に、『国民の8割が「愛子天皇」を望んでいる』との見解や主張には、私は少々疑問を持っている。
毎日新聞の世論調査のデータを虚心坦懐に私情を挟まず分析すると、『国民の多くは天皇は男女どちらでもよいと思っている』に過ぎない、と読み取れなくはないか。
「愛子天皇」を切望する人々の熱意は否定しないが、データを都合よく解釈するのは少々危うく、ともすると足元をすくわれかねず、慎重な分析が求められるのではないか。
私自身も「愛子天皇」は望むものの、あくまでも「皇位の安定継承」が第一義であり、法律や制度の合理的な改革の方に関心が高い。

「データ」はあくまでも単なる無機質な数字で、それを活かすも殺すも扱う人間次第、というのはビジネスの世界に身を置いておられる方は、日々痛感されていることと思う。
また、「データ」の解釈を誤る怖さや、「データ」のみに振り回される馬鹿馬鹿しさも、ビジネスの世界だけでなく、新型コロナ騒動で多くの人が嫌というほど味わったと思う。
「データ」がそんなに偉いなら、『♪この世で一番偉いのは電子計算機』……なのかな?

No.124 11ヶ月前

仕事中。
小林先生のブログ読む。

手帳に、予定を書き込む。
3月のテーマを読み、とっさに「パンサー尾形」「サンシャイン池崎」の「番組」を思い出す。

もちろん!あんな程度に収まらないと期待大にございまする。
(確かパンサー……の番組は賞までとったし、サンシャイン……のは第2弾が近日放送)

しかし、「論客」がある意味エグい(笑)
言葉が「ダイレクト」になる気がします。

笹師範のブログ読む。
そうなんですよね。会員制多くて嫌になる。なんか「怖い」んですかね……。

木蘭師範のブログ読む。

私も賛成です。血管に良くないです。老化が進むし。

もう……師範……は書かないようにしなきゃだわ。
「さん」か「氏」にしなきゃだわん。

No.125 11ヶ月前

大谷翔平についての考察、感慨深く読みました。

先生のライジングを読み、「イチローへの手紙」という絵本を思い出しました。
私はこの本を持っていないので、日本語訳発売当時の書評などでしか確かめていないのですが、日系アメリカ人が書いた絵本で、イチローが日米でのかつての戦争のわだかまりを解くきっかけを作ったという内容です。
↓↓
https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=3896

日系アメリカ人で米国内で苦労されたということもあるのかも知れませんが、むしろアメリカ人の方が日本人の活躍を先の大戦でかつて戦った相手として考えるという事をしていることがわかります。
過去に小林先生も西部邁氏と「反米という作法」という本を書き、マナーとしての反米を説いておられましたね。

日本がいつまでもアメリカやヨーロッパに憧れるのではなく(大谷も憧れるのをやめましょうと言ってましたね)、日本の文化や価値をよりよく発展させていく事が重要と思います。
愛子様を皇太子にすることも日本が古来持っていた女性天皇の歴史を発展させ、より良い日本になるものだと感じます。

No.126 10ヶ月前
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