第482号 2023.10.4発行
「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしのひとたち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)
【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…10月2日のジャニーズ事務所記者会見を見たが、くだらなさが極限に達していた。なにしろその会見場にいる者が誰ひとり、事の本質を一切理解していないままに進行していくのだ。ジャニーズは情緒的なものだけに流され、法治主義をかなぐり捨て、ひたすら「八つ墓村のオキテ」に平伏してしまった。あとは法治主義を守る気のない馬鹿と阿呆で糾弾会をやっているから、無法地帯になるだけで、「立証責任を問わない」という狂気が、さらなる狂気を育ててしまっていた。あの場の弁護士は、いったい何のためにいたのだろう?これは、単にジャニーズ事務所だけに留まる問題ではない。
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…今週は、日本保守党の1つのお祭りウイークであった。まず、百田尚樹と有本香がネット番組「Abema Prime」に出演。その後、日本保守党の公式サイトが開設され、党員募集がはじまった。たちまちネット上の自称保守たちが集結し、募集開始から24時間で党員登録は3万5千人を超えたという(10月2日正午時点)。「Abema Prime」では、百田と有本から、結党の背景にあるLGBT法に対する怒りと「安倍亡き後の自民党」へのアンチ感情が表明された。二人はどんなことを語ったのか?今回も自称保守ウォッチをお届けする。
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」…ウクライナ戦争をきっかけに良くも悪くも印象が変わった国はある?「芸能界はヤクザな世界」とは言いつつも女性を性被害から守るという「人権」は取り入れているのは何故?虚無の対義語は何?パレスチナ、そしてアラブ諸国の現状をどう見る?「40代は脂ののったとき」と言われるけど本当?ジャニーズ系俳優で先生が最も演技力を評価するのは誰?ジャニーズはどうすれば良かったと思う?「人権派」「リベラル」あるいは逆に、もろネトウヨな人の発言であっても、良いと思ったら評価するのはアリ?『ゴジラ-1.0』に期待してる?…等々、よしりんの回答や如何に!?
【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第511回「ジャニーズ廃業会見、立証責任の重要さ」
2. しゃべらせてクリ!・第438回「へごわっしゅ! メイドお父ちゃまがシュークリーム差し入れぶぁ~い!の巻【前編】」
3. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第305回「不思議の国・日本保守党」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記
第511回「ジャニーズ廃業会見、立証責任の重要さ」 10月2日のジャニーズ事務所記者会見を見たが、くだらなさが極限に達していた。
なにしろその会見場にいる者が誰ひとり、事の本質を一切理解していないままに進行していくのだ。まるで異次元の会話を延々と聞かされているようで、ストレスが溜まって仕方がなかった。
今後、「ジャニー喜多川」という人物の痕跡はこの世から完全に消し去られるらしい。
史上最大・最速のキャンセルカルチャーの成立である。
「ジャニーズ事務所」の名称は「スマイルアップ」に変更され、「被害者」への補償などの業務のみをする会社として存続し、その業務が終了次第廃業するという。そして現在所属しているタレントのマネジメント等の業務は新たに設立する別会社に移行し、その新会社の名称は公募するのだそうだ。
先月7日の会見に引き続き、ジャニーズ側はひたすらベタ折れ、平謝り。自ら血祭りに遭いに行っているのだから、どれだけマゾなのかと言いたくなった。
この問題はわしから見れば、これほどまでにチンケな話ってあるのかっていうくらい、卑小な話だ。弁護しようと思えばいくらでも方法はあった。
それをものすごい大事件のようにデッチ上げられ、そのままに流されてしまったのだから、こんな情けない話はない。
そんなジャニーズに対して、さらに図に乗って襲いかかろうというハイエナみたいなマスコミの醜悪さは、とても見られたものではなかった。
前回の会見の質疑応答で「1社1問まで」という取り決めを無視して、ひとりで10分以上東山紀之を糾弾しまくった東京新聞の望月衣塑子は、今回も最前列中央に陣取り、質疑応答で挙手しまくっていたが、さすがにジャニーズ側も前回のルールもマナーも無視した所業を見かねたようで、司会者は徹底的にスルーし続けた。
そして、今回は決して指名されないと察した望月は、マイクなしで勝手に東山に「セクハラ疑惑」を糺したり、野次を飛ばしたりし始めた。
東山が「セクハラはしていません」と答えても望月は何度も「セクハラ」について怒鳴りまくり、その様子はまるで総会屋か、ストーカーみたいだった。
いくらなんでもこれはひどいと他の取材陣も思ったらしく、井ノ原快彦が「落ち着いていきましょう」と諭した時には拍手まで起きた。
記者会見後のネットの反響を見ても、やはり今回はマスコミ側の異常さを指摘するものが多く、望月がやったことは完全にオウンゴールになった。もっとも、自分が絶対正義だと信じて疑わない望月は、絶対に気づいていないだろうが。
そんな望月の隣で挙手し続け、一緒にスルーされた記者が憤慨してX(旧ツイッター)に長文の恨みつらみを書き連ねていたが、その中でジャニー喜多川がやったことをこう評していた。
「ジェフリー・エプスタイン事件やハービー・ワインスタイル(ママ。正しくはワインスタイン)事件よりおぞましい、戦後史に残る、世界でも最悪といっていい性加害事件」
これだけで、この記者が何もわかっていない馬鹿だということが完全に露呈している。
アメリカの著名な実業家だったジェフリー・エプスタインは児童への性的暴行などの容疑で2006年に起訴され、2008年に禁固18カ月の有罪判決を受けた。そして2019年には別の性的虐待事件で再び逮捕され、拘留中に死亡。自殺と発表された。
アメリカの有力な映画プロデューサーだったハービー・ワインスタインは、長年にわたる性暴力や性的虐待事件によって2018年に逮捕され、2022年にニューヨークの裁判所で禁錮23年の判決を受け、2023年にはロサンゼルスの裁判所で更に禁錮16年が上乗せされ、現在服役中である。
だが、ジャニー喜多川は犯罪者ではない。
ジャニー喜多川は逮捕も起訴もされなかった。
ジャニー喜多川の「性加害」は、1件の刑事事件にもなっていないのだ。
会見中、記者たちの発言に「ジャニー氏の犯罪」などという言葉が平気で出て来ていたが、それを聞いても、誰ひとりこのことすら認識していないのは明らかだった。
ジャニー喜多川の「性加害」の事実は最高裁で認められているというが、それは民事裁判においてである。
民事裁判と刑事裁判は全く違う。というより、裁判には「刑事」と「民事」があるということすら、はっきりわかっていないのではないか?
コメント
コメントを書く(ID:125042837)
「日本人論」、読みました。
やっぱり紙面にしてみると、ジャニーズ問題の肝というか最も重要な論点が整理されていて、見てて頭にスウッと入ってきます。
あんなヒステリックな記者団の前で会見された東山紀之氏や井ノ原快彦氏にこれを言うのは酷かもしれませんが、やっぱりジャニーズを守ってほしかったと思います。記者団の暴言・要求を突っぱねてほしかったと思います。
ジャニーズはファンの声にこそ耳を傾けるべきで、たとえジャニー喜多川のやった事が受け入れられないとしても、ジャニー喜多川の芸能での薫陶を継いだジャニーズのタレントは評価されるべきで抹殺するべきではない。
容易にジャニーズの看板を下ろすのは間違いでキャンセルカルチャーを企む者の、それこそ思う壺です。
夢を追うジャニーズJr.のためにも、東山紀之氏、井ノ原快彦氏には、「誰も幸せにしなかった」とか「愛情はなくなりました」の発言を撤回してほしいです。
望月衣塑子ほかマスコミの「正義の暴走」はまさに“鬼畜“そのものだと思います。
戦前もマスコミはアメリカ・イギリスを“鬼畜米英“と煽りましたが、令和の今は“鬼畜ジャニーズ“の大号令で国民を扇動するようですね。マスコミは先の敗戦から何も学ばない事がよくわかりました。
いや学ぶどころか、退行しているみたいです。何故なら彼らマスコミは自国のエンタメ産業をぶっ潰しているから。これは自虐史観が別の形で顕れたに他ならないと私は思います。
戦後日本人は戦前日本人より賢くないのも一理あると思います。
長文・駄文で申し訳ないですが、日本人論の続きを楽しみにしています。
(ID:22136524)
感想が途中でした。今度はもくれんさんの方です。
「日本保守党」…名前だけは恰好いいですね。看板が立派なだけの「見かけ倒し」なのでしょう。
こういう結社や組織を結成する際に肝腎なのは、党の綱目であり、基本設計図、(よしりん先生の記事とも関連付けると)法規でしょう。
数あわせ、人数が多ければいい、というものでもないでしょう。かつての鳩山由紀夫の「民主党」と同じような感じがしています。もっとひどいのかな?鳩山家は財をなしていたわけですけれども。
株式会社の株と同じでもないですし、「大半は初めて政党にはいる人」では、よほどの司令官、指揮者がいなければ要をなさないのでは、と。
政党結成をモチーフにしたミステリも知っていますが、その話も資金をめぐるかなえいの内輪もめがあったような…。
私もかなり感情的な人間ですけれども、「感情=情熱・熱意・熱気」なのでしょう。しかし、はたから見ると、「この人たちはなにをそんなに向きになっているのだろう」なのでは?
フィリピンに関する、有本女史の頓珍漢な応答も、暑くなりすぎた結果なのでしょうが、ある意味、「前車の轍」にすべきか、なのかも(見ていませんけれども)。それだけ「演説」は大変なことなのだろう、難しいものなのだろうと思います。それこそ、ジャニーズ会見の東山氏や井ノ原氏の答辯(?)でもわかるような気がします。
(演説上手と呼ばれる)ヒトラーも、自分で政党をたちあげたのではなく、既存の中小政党を拡大・発展したのですから。
「日本保守党」にあまり関心がないので、こんな感じでよろしいでしょうか?今後、「ゴー宣党」が出来るとしたら、どういうふうになるのか、そう思いました。
それとも、そんなものはできてはいけないのでしょうか?既存の政党がもっと理念をしっかりと持ち、頑張って欲しい、そう思います。ニセモノではなく、本物の政治結社として。
こんなところでよろしいでしょうか?
ジャニーズ問題のことをもうすこし記しますが、こんな例え話を。
となりの家で修理をしている人がいきなり訊ねてきて、「お宅の外壁が損傷している。このままでは危ない。となりにも迷惑がかかる。うちの方で修理しようか?」と言ってきたとします。
東山さんや井ノ原さんなどに伺いたいのですが、あなたはそれを「真に受ける」のでしょうか?
隣の修理業者が、あの場に集まった新聞記者やマスコミではないのか、と私は思います。外壁の損傷が「性被害疑惑」のように…なんか、「的外れ」ですか?
名の知れrたマスコミだったとしても、詐欺のようなことをはたらかないと言えるのでしょうか?
ということで、次号を期待します。もっと、何かが賢く変わって欲しい、マスコミでも、正義論者でも。反省をするものは反省をしてほしい、そんな気分です。
私もそんな立派な人間ではないと思ってもいます。「日本人論」も応援しています。はやく、「愛子天皇論」も復活できますように、それ以上に、愛子内親王の皇太子実現を、男女双系継承を、です。
(ID:19289646)
ライジング配信ありがとうございます。
ゴーマニズム宣言・第511回「ジャニーズ廃業会見、立証責任の重要さ」拝読しました。
ある人が犯罪者かそうではないか、その人が犯罪者であった場合にどの程度の罰を与えるかを国が判断する、国VS人の刑事裁判。
人と人との揉め事を解決する、人VS人の民事裁判。
客観的で間違いのない「真実」が求められる、刑事裁判の証拠調べは慎重で厳格。
民事裁判は当事者間の争いごとの解決が目的。両者が納得できる範囲の「真実」であれば、それほどの厳格さは求められないので、刑事裁判より証拠の扱いは緩い。
その違いがよくわかりました。
無罪推定の原則は、マスコミが騒ぎ立てるせいで、ほとんど守られていません。
冤罪を防ぐためにも、刑事裁判で刑が確定するまで、報道規制を行った方がよいのではないでしょうか。
ジャニーズを責め立てる記者たちは、私刑がお好きなようです。
会見は、正義を振りかざして愚行を繰り返す望月記者の醜悪ぶりをあらわにしました。
望月記者が「NGリスト」入りするのは当然でしょう。
会見をやり直すよう主張しているようですが、仮に行われるとしても望月記者が会場に入れることはないでしょう。
望月記者のような「『正義を振りかざせば何をしても許される』と思い込んでいる」タイプは、悪よりもタチが悪い。
散々法を無視しておきながら、いざ自分が不利な立場に置かれれば、法に守られようとするでしょう。
矛盾しています。
泉美木蘭さんのトンデモ見聞録・第305回「不思議の国・日本保守党」拝読しました。
日本保守党は「安倍晋三大好き党」なんですね。
あくまで百田尚樹や有本香の抱くイメージの。
「差別なんてしていない」と主張している輩ほど、酷い差別をしているもの。自分たちのしでかしたことはころっと忘れるので、気づいていないだけ。
「自分の中に差別意識がある」と自覚している方ほど、理不尽な差別をしないよう気をつけて行動されています。