第269号 2018.5.8発行
「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしの人たち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)
【今週のお知らせ】
※「泉美木蘭のトンデモ見聞録」…芸術家と偏執性シリーズ第2弾。今回は「ロダンとカミーユ編」である。“近代彫刻の父”と称されるフランスの彫刻家オーギュスト・ロダン。偏執的で鬼気迫る彫刻家である彼の傍らには、これまた鬼のように凄まじい才能を持つ女性が常に一緒にいた。美貌の彫刻家カミーユ・クローデルである。強烈な才能がぶつかり合った先にあるものとは?「ハラスメント」という言葉に覆い隠されつつある人間の真の姿。物事の本質を見失うな!
※「ゴーマニズム宣言」…「動物学研究家・随筆家」の竹内久美子が「『日本型リベラル』の男はキンタマが小さい」なるトンデモ説を唱えている。常識から考えれば一笑に付されて終わる珍説が、自称保守派の中で持て囃されている理由…それはナチスの優生思想にあった!笑ってばかりもいられない、この危険な現象から目を離してはならない!!
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!なぜ日本の男は甘ったれているの?昔のような“私生活が全く見えない”スターは誰が思い浮かぶ?アンコウの雄とカマキリの雄、どっちが哀れ?「九州ゴー宣道場」に参加予定!福岡のオススメは何?日本の三大都市といえば?セクハラ罪なんて作って大丈夫?…等々、よしりんの回答や如何に!?
【今週の目次】
1. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第80回「芸術家と偏執性~ロダンとカミーユ編」
2. ゴーマニズム宣言・第276回「竹内久美子の睾丸トンデモ説とナチスの優生思想」
3. しゃべらせてクリ!・第227回「問題棚上げ、はっきょい、のこったぶぁ~い!の巻〈前編〉」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記
第80回「芸術家と偏執性~ロダンとカミーユ編」 彫刻『考える人』を知らない人はいないと思う。
“近代彫刻の父”と称されるフランスの彫刻家オーギュスト・ロダンによるものだ。
(C) 江戸村のとくぞう (Edomura no Tokuzo) in 静岡県立美術館
ロダンには『地獄の門』『カレーの市民』『接吻』など数えきれないほどの傑作がある。
時代の先を走りすぎていて、当時は酷評・嘲笑されて引き下げられ、死後ようやく絶賛された超有名作もある。『バルザック記念像』という高さ3メートルの像だ。
1891年、フランス文芸家協会から、『ゴリオ爺さん』などで知られる小説家オノレ・ド・バルザックを顕彰する像の注文を受けたロダンは、バルザックのすべての小説、書簡を何度も丹念に読み込み、バルザックの服の仕立て屋まで探し出して、正確な体の寸法を得るなど徹底調査していった。
しまいには、まるで自身がバルザック作品の登場人物になったかのようにふるまいながら生活するという命の懸けっぷりで、なんと7年もかけて、裸体から着衣まで、さまざまなポーズ、表情、年齢のものを大量に彫り上げている。
そうしてようやく「最終形」として仕上がったものをサロンに出品すると……
ロダン 『バルザック記念像』(最終作)
「なにこれ傾いてるやん」
「ひっくり返るよ。酔っぱらったバルザック?」「雪だるま(笑)」「袋に入ってるよ」「借金取りに叩き起こされてベッドから起き上がる瞬間のバルザックですか(笑)」「眼がなくて怖いんだけど」
まったく理解されず、嘲笑われた挙句、文芸家協会からは受け取りを拒否され、挙句の果て、代金も支払われないという結果に。
なんとも気の毒な話だが、ロダン本人は、この作品について、「右後方、台座から20歩離れたところから見よ」と不思議なコメントを残している。そういうわけで、指定の場所から眺めると、こうなる。
松岡茂雄「ロダンのバルザック 右側のプロフィルに隠されたファロスの表像」
(『美術史論集 第7号』,神戸大学美術史研究会,2007)より
ロ、ロダン・・・!
おわかりいただけるだろうか。屹立した男性像が、「ナニ」を表現しているのかを。
正解を書くと、Appleの都合により伏字対応か、削除依頼がくるかもしれない。
当初傾斜角度は8°だったが、ロダンは「もっとグ~ンとそそり立たなあかんよ~」と、わざわざ12°まで傾けて調整したそうだ。
バルザックという作家を研究し尽くし、作風と感性を吸い上げた巨匠ロダンが「バルザックの創作の根源とはなにか」を削り出してしまった、という話であった。
「人が嘲笑い、破壊できないためしつこく笑いものにしたこの作品は、私の全人生の成果であり、私の美学の軸そのものである」 オーギュスト・ロダン
(1908年、ル・マルタン紙にて)
■“ロダンのミューズ”カミーユ・クローデル
偏執的で鬼気迫る彫刻家ロダンだが、彼の傍らにはこれまた鬼のように凄まじい才能を持つ女性が常に一緒にいた。
美貌の彫刻家カミーユ・クローデルである。
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イチ川みおりん