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第327号 2019.8.27発行

「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしのひとたち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…「あいちトリエンナーレ」の企画展「表現の不自由展・その後」が、過剰な抗議と恫喝・脅迫によって運営が機能不全となり、開催3日で展示中止に追い込まれた。慰安婦少女像は政治的プロパガンダのための木偶(でく)人形であり、韓国の恥の象徴である。あの木偶人形に対する「批判」や「嘲笑」や「侮蔑」は構わないし、慰安婦像が「神聖不可侵」にならないようにするべきである。ただし、抗議・恫喝・脅迫は許されない!抗議・恫喝・脅迫は確実に表現の自由を萎縮させる。「批判」と「抗議・恫喝・脅迫」はまったく別物である!
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…あいちトリエンナーレの『表現の不自由展・その後』が大炎上して以来、慰安婦像に過剰に肩入れし、「女性の人権」という言葉を振りかざして過去の時代の人々を糾弾する声がよく聞こえるようになった。そんな中、慰安婦問題と日本の現代の性産業とを結びつけて、「性産業は女性差別だ」と糾弾する意見を直接聞かされる機会があった。果たして性産業で働く女性は社会的に搾取されているのだろうか?
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!テレビ局があおり運転の事件ばかり扱うのは何故?「モテる男はつらい」って本当?石破議員が、韓国のGSOMYA破棄について日本の対応を批判したことをどう思う?文在寅大統領は朝鮮半島をどうしたいの?昆虫採集をしたことがある?ゴー宣道場参加者への殺人の脅しを受けた場合はどうする?おぼっちゃまくんの亀は何故ちゃまが乗ってもつぶれないの?…等々、よしりんの回答や如何に!?


【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第338回「抗議・恫喝・脅迫が表現の自由を委縮させる」
2. しゃべらせてクリ!・第284回「みんな元気にてんでバラバララジオ体操ぶぁ~い!の巻〈後編〉」
3. 泉美木蘭の「トンデモ見聞録」・第137回「風俗で働く女性は“搾取”されているのか?」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記




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第338回「抗議・恫喝・脅迫が表現の自由を委縮させる」

 慰安婦少女像は政治的プロパガンダのための木偶(でく)人形である。韓国の恥の象徴である。
 韓国内にも慰安婦少女像に恥を感じる人たちはかつていたらしい。そりゃそうだろう。慰安所を利用していた老人がいたはずだから。
 世界中に国家の恥の象徴をバラまく今の韓国人の感性は「反日」イデオロギーのせいで、相当に劣化している。
 本来なら日本や世界中であの少女像を展示するということは、韓国の恥を展示することであり、自国に対するヘイトスピーチに近いので、わしとしては腹も立たない。自国民をヘイトするヘンタイ国民だなと思って、嗤ってしまう。
 恥のイコン・慰安婦少女像を日本で展示してやろうという相当意地悪なことを企んだ津田大介という男は天罰が下っても止むをえない馬鹿である。

 呉智英氏によれば、慰安婦少女像はぜんぜん「表現の不自由」じゃなくて、日本大使館前でも、韓国中でも、アメリカでも展示されているのだから、「表現の自由」を謳歌している、それをわざわざ展示して、炎上を誘って「表現の不自由」をねつ造してしまったのだから、津田大介という人間は「当たり屋」みたいなものだと言っている。これはなかなか凄い見方だ。

 その恥のイコンを「芸術」とまで勘違いする輩が現れているようだから、あの木偶人形に対する「批判」や「嘲笑」や「侮蔑」は構わないのである。いくらでも罵ればいい。慰安婦像が「神聖不可侵」にならないように、批判と侮蔑をしておけばいいのだ。
 ただし、抗議・恫喝・脅迫はダメなのだ!
 日本ではできる限り広い範囲で「表現の自由」を担保しておかねばならない。
「表現の自由」の範囲が広ければ広いほど、その国は民主主義が発達していて、中国や韓国や北朝鮮などは、「表現の自由」が狭い分、民主主義が未発達であり、独裁制が幅を利かせているということなのだ。

 愛知県で3年に1度開かれている国内最大規模の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の企画展「表現の不自由展・その後」が、開催3日で展示中止に追い込まれた。
 同展は4年前に東京で行われた、各地の美術館で展示できなくなった作品などを並べる「表現の不自由展」を見たトリエンナーレ芸術監督の津田大介が、当時の実行メンバーに「その後」展をやってほしいと打診して実行されたものだった。
 先の「表現の不自由展」では在特会が拡声器を持って「ぶっ殺してやるから出てこい」と罵倒、なんと来場者の姿を勝手に撮影してネットに上げるなどの嫌がらせをしたため、会期中は総勢80人のボランティアが警備に当たり、来場者が無断撮影されないようシーツで出入り口を隠すなどの対応に追われたという。
 そんなことから、実行メンバーは「その後」展の実行委を引き受ける際には「相当の覚悟と準備が必要」と考え、津田にも不当な暴力に屈しないよう釘を刺していた。そして津田も、圧力に屈しないよう「僕も一緒に闘う」と言っていた。

 ところが開幕してみると案の定、慰安婦少女像の展示や、昭和天皇の肖像を燃やす映像展示に対する抗議が殺到した。
 その抗議のやり方は尋常なものではなかった。トリエンナーレ事務局は大量の抗議電話によって事務所機能が完全に失われ、トリエンナーレとは無関係の組織にまで大量の抗議電話が押し寄せた。
 中には「お前の母親の写真を燃やしてやるぞ」「実名をネットでさらす」といった、抗議というより恫喝というべき電話も多く、連日未明まで続いた対策会議では、「このままでは自殺者も出かねない」という報告も出されたという。
 2日目早朝には「ガソリン缶を持って行く」と、京アニの事件を思わせる脅迫ファックスが届き、その翌日には、このままでは円滑で安全な運営ができないとの判断から、トリエンナーレ実行委員会会長の大村秀章愛知県知事が「表現の不自由展・その後」の展示中止を発表した。
 同展の実行委は、「一緒に闘う」と言っていたはずの津田が3日で折れ、何の相談も説明もなく中止が決められてしまったことに相当憤慨している
 十分予想のついていたリスクに対して全然対応できなかったことに対して、津田は「準備不足だったことは認めます。ただ、どのような準備をすれば可能だったのか…」と泣きごとを言っていた。

 この件ではトリエンナーレ実行委委員会会長代行の河村たかし名古屋市長が会場を視察し、「日本国民の心を踏みにじる行為」だとして大村知事に展示中止を求める抗議文を出していたことから、権力による「検閲」だとの声もあったが、大村知事や津田は「検閲」を否定している。
 まあ、「検閲」よりも、津田が説明しているとおり、過剰な抗議と恫喝・脅迫によって運営が機能不全となり、死者が出かねないと判断したものだろうと思う。
 最初の脅迫ファックスの犯人は逮捕されたが、展示の中止後も愛知県の関連施設には「県庁職員らを射殺する」「県内の小中学校、高校、保育園、幼稚園にガソリンを散布して着火する」といった脅迫メールが770通以上届き、その脅迫犯はまだ捕まっていない。
 このような抗議・恫喝・脅迫が、表現の幅を確実に狭めてしまうのだ。