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号外 2021.3.16発行


【目次】
1. ゴーマニズム宣言・第413回「コロナ禍の被害者」
2. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第207回「世界大混乱! トンデモ二重マスク教」




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第413回「コロナ禍の被害者」

 コロナ禍の本当の被害者は誰か?
 それは、コロナに罹って死ぬ高齢者ではない!
 わしはこれまで何度もそう言ってきたが、それでも未だに本当の被害者に目を向け、手を差し伸べようという動きが一向に高まらないので、今回も改めてこの問題についてまとめて述べておきたい。

 東京新聞は3月12日、『コロナと障害者』と題する社説を掲載し、コロナ禍のしわ寄せが社会的弱者に集中していることを指摘、障害者も例外ではないと主張している。
 例えば視覚障害者は、外出先で声をかけてくれる人が少なくなっていて、危険が増しているという。
 確かに、以前だったら白杖をついて電車のホームを歩いている人がいたら、周囲の人が腕を取って案内することもできたが、今では人との接触を避けるということでそれができなくなっている。そのためか、視覚障害者が線路に転落して列車にはねられ、死亡するという事故も相次いでいる。
 しかも視覚障害者がマスクをすると嗅覚が鈍くなるため、これも危険を増すことになり、ストレスを高めているらしい。
 そしてさらには、視覚障害者が多く働く鍼灸院やマッサージ業も客が激減しており、解雇が相次いでいるという。

 一方、施設で暮らす知的障害者は家族らとの面会が制限され、孤立感を募らせているし、自立訓練などを行う障害福祉事業所も、コロナ禍で経営難に直面している。
 事業者への報酬は、利用回数を基にした日額払いとなっているので、利用者がコロナ禍で減れば減収となってしまい、それでも固定費は重くのしかかるのだ。
 障害者には健常者に比べ、手洗いやマスクの装着が難しい人が少なくなく、しかも精神科病院では、換気が十分ではない閉鎖病棟のためにクラスターが多発しており、これまで30以上の病院での発生が確認されている。
 ところが一般病院へ転院させようとしたら、患者の対応の難しさを理由に拒まれ、死亡する例も出ているという。
 このような完全に弱者の立場にいる人たちが、とてつもない地獄に追い込まれてしまっているのだ。

 女性が置かれている状況も深刻である。同じく東京新聞3月12日付に掲載された「データで見るコロナ禍の女性」では、非正規労働の女性は、休業を命じられても補償を受け取れない人が多いと指摘している。
 総務省が発表した2020年平均の労働力調査によると、非正規労働者は前年から約75万人減少して2090万人。
 これを男女別で見ると、男性が約26万人減の665万人に対して女性が約50万人減の1425万人と、減少数が約2倍になっているのだ。
 さらに「失業予備軍」とされる休業者は、男性が35万人増の104万人に対し、女性は45万人増の152万人。
 しかも、パートやアルバイトのシフトが5割以上削減された上に、労働基準法が定める休業手当も受け取れず「実質的失業者」とされる女性は、推計90万人に上っている。
 ところがこのようなデータも、十分には浸透していない状態だ。

 そのうえコロナ禍による経済不安や自粛生活によるストレスは、女性への暴力を深刻化、増大化させている。
 内閣府の調査によると、ドメスティックバイオレンスの相談件数は昨年4~12月の総数で約14万7000件と、これまた過去最多。特に5、6月は前年同月の約1.6倍に増加している。
 性暴力被害も増大していて、支援センターに寄せられた相談件数は、昨年4~9月の累計が前年同期の約1.2倍。
 外出自粛で家庭内性暴力が深刻化したり、虐待や暴力から逃れるために家出した少女がSNSで知り合った男の家に泊まって性的搾取に遭ったりする事案があり、望まぬ妊娠の相談件数も急増しているという。