第333号 2019.10.15発行
「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしのひとたち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)
【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…オリンピックをはじめ、スポーツの国際大会が盛り上がると、ナショナリズムは危険だという刷り込みがある左翼が、決まって「ナショナリズムを煽るな」という全く意味のわからないイチャモンを言い出す。現在開催中のラグビーワールドカップでも案の定、その手の文句が上がっている。確かにラグビーの日本代表チームは外国出身や外国籍の選手が多い。しかし彼らは間違いなく日本人である!ラグビーに国籍は関係ないのか?なぜ我々は自国チームを応援するのか?ラグビーワールドカップを通して新しいナショナリズムのあり方を考えよう!
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…最近、伝統芸能の世界に興味が向くようになり、あれこれ探るうち、映画『残菊物語』を見ることになった。『残菊物語』は、昭和12年に村松梢風が書いた短編小説を原作としたもので、歌舞伎役者・2代目尾上菊之助の恋愛と、芸の修練の道を描いた実話をもとにした物語だ。何度も映画化、ドラマ化、舞台化されている作品だが、見たのは昭和14年の溝口健二監督版と昭和31年の島耕二監督版である。2作品を見比べてみると、脚本の方向性や表現方法が変化しており、そこから時代性を感じることができる。日本人の表現方法や理解力はどのように変化してきたのだろうか?
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!現在の税金問題や財政についてどう考える?今の髪型になったのはいつから?ジョーカー、ハンニバル・レクター博士、アントン・シガー…「最凶」なのは誰?少子化を考えると家族帯同の移民を認め、今の市場を維持拡大させることが必要なのでは?タレントがドラマ等で演技をすることをどう思う?反権力のはずの左派が権力からの交付金を使ってイベント等をするのは矛盾しているのでは?…等々、よしりんの回答や如何に!?
【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第345回「ラグビーだってナショナリズムだ」
2. しゃべらせてクリ!・第290回「へごわーっしゅ! 殺人ドッジボールに絶体絶命ぶぁい!の巻【後編】」
3. 泉美木蘭の「トンデモ見聞録」・第143回「『残菊物語』に見る表現の変化と、意地のこと」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記
第345回「ラグビーだってナショナリズムだ」 オリンピックをはじめ、スポーツの国際大会が盛り上がると、ナショナリズムは危険だという刷り込みがある左翼が、決まって「ナショナリズムを煽るな」という全く意味のわからないイチャモンを言い出す。
そして現在開催中のラグビーワールドカップでも案の定、その手の文句が上がっている。
特にラグビーの日本代表チームは一見すると「なんで外国人ばっかりなの?」という印象になるから、左翼はここぞとばかりにこれを「アンチ・ナショナリズム」の象徴に仕立て上げようとしてくる。
ラグビーはオリンピックやサッカーのワールドカップ等と違い、国籍が異なる国の者でも、代表選手になれる規定があり、今大会では日本代表選手31人のうち15人が外国出身で、日本に帰化していない外国籍の選手が7人いる。
だがこれで、国境なんてもう関係ないんだなどとジョン・レノンの『イマジン』みたいに思っていたら、見当違いも甚だしい。
あくまでもラグビーワールドカップは「国別対抗戦」であり、各チームはナショナルチームである。グローバルチームでもなければ、国境を無視したカオスチームでもないのである。
ラグビーの選手は「本人、もしくは両親、祖父母のうちひとりがその国の出身」「その国で3年以上継続して居住、または通算10年にわたり居住」の条件のうちどれかを満たしていれば、国籍が異なる国でも代表選手になれる。ただし、ひとりの選手は1カ国の代表にしかなれない。
なお、「3年以上継続して居住」の要件は今大会後は「5年以上」になる。
ラグビー代表が国籍を重視しない理由には、ラグビーという競技が生まれた時代の背景がある。
ラグビーは19世紀初めにイングランドで誕生し、その後ウェールズ、スコットランド、アイルランドとイギリス全域に広がり、パブリックスクールや大学で盛んに行われた。
当時のイギリスは全世界の陸地と人口の4分の1を版図に収める「大英帝国」の全盛期であり、ラグビーを経験したエリートたちは世界中の植民地に赴任し、現地でラグビーを普及させていった。
そこで、イギリス人は世界中のどこの国に行ってもイギリス人のままその国の代表になれるようにということで、国籍よりも地縁・血縁を重視する考え方が生まれ、その名残が現在まで続いているのだ。
つまり、これは「ラグビーに国籍は関係ない」という価値観から始まったわけではなく、もともとはイギリスの都合だったのである。
なお、「日本は強豪国じゃないから、助っ人外国人に頼っている」と思っている人も多いようだが、それは誤解で、ウェールズやスコットランドといった強豪国でも外国出身選手の割合は高い。
しかも外国人選手は決して「助っ人」ではない。彼らはれっきとした日本代表の一員だ。
日本代表チーム主将のリーチマイケル選手は、父はニュージーランド出身のスコットランド系白人、母はフィジー出身である。
リーチマイケルは15歳で留学生として来日、今では日本での生活の方が長く、日本人と結婚し、2013年に日本国籍を取得している。
リーチはニュージーランドやフィジーの代表になる資格もあったが、日本を選んだ。彼が高校2年生の時、ニュージーランドの実家が火事に遭い、その時、高校の監督が関係者に呼びかけて義援金を集め、何も言わずに実家に送っていた。後になってそのことを知ったリーチは感動したといい、「その恩はラグビーで返すしかない。何があっても、日本以外の国の代表になるわけにはいかないと思いました」と語っている。
リーチマイケルはワールドカップ開幕前、宮崎での強化合宿を終えた後、メンバーと共に日向市の大御(おおみ)神社にある「さざれ石」を訪れ、その前で『君が代』を斉唱し、本殿でお祓いを受けた。
リーチはこのことについて、次のように語っている。
「このチームはダイバーシティー(多様な人材を積極的に活用しようという考え)、いろんな国の人がいる。もっと日本のことを知ってもらわないといけない」
「日本は1000年以上の歴史を持っている。たくさんいい感じのもの(文化)を持っているし。知ることで日本が好きになるし、もっとがんばらないといけないと思うようになる」
「ここ(大御神社のさざれ石)に来たのは、日本の国歌の意味まで知ることが重要だと思ったからです」。
「日本代表には色々な国の人がいて、それぞれのナショナルアンセム(国歌)があると思います。だからこそ日本の国歌、君が代の意味を知ることは非常に大事です。桜のジャージはできた時から1人の力だけじゃなくて、みんなで大きくなっていると思うので、そこからさらに新しい歴史を作って行くのが僕たちの責任です」
「今日しっかりこれを見て、次、国歌を歌うときに思い出してもらいたいと思います」
リーチマイケルは日本人としてのアイデンティティを強く意識しており、チーム全員でさざれ石を見に行き、君が代の意味を知って、チーム全員のアイデンティティを統一させたのだった。
出身国や国籍は問題ではない。彼らは日本に対する愛国心を持ち、桜のジャージに誇りを持つ、日本チームのメンバーなのである。
ただし、彼らはただ一方的に日本文化に傾倒しているような、いかにも自称保守・アナクロ保守が喜びそうな存在ではない。一方では外国人の目で冷静に日本を見ているところもある。
例えば、日本人は失敗しても「ドンマイ」で曖昧に済ましてしまい、同じ失敗を繰り返す傾向があるとして、これを改め、失敗の原因は徹底的に追及するようにしたそうで、これも日本代表チームが強くなった一因だという。
このようにして今、新しい日本チーム、新しい日本人が作られている最中なのである。
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あれ?1番?