第276号 2018.7.10発行
「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしの人たち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)
【今週のお知らせ】
※「泉美木蘭のトンデモ見聞録」…今回は、世界中の戦争報道に多大な影響を与えた20世紀を代表する戦場カメラマン、ロバート・キャパを紹介!ハンガリーのブダペストに生まれたユダヤ人は、如何にして“世界最高の”と冠のつく報道写真家になったのか?そしてキャパの名前を世界的に有名にした写真“崩れ落ちる兵士”の真実とは?
※「ゴーマニズム宣言」…麻生太郎副総理兼財務相は6月24日の講演で、昨年秋の衆院選において自民党の得票率が高かったのが30代前半までの若い層だったとして、「一番新聞を読まない世代だ。読まない人は全部、自民党(の支持)だ」等と述べた。(新聞を読まない人は)「賢いから」自民党支持だ、と言いたいのか?それとも「バカだから」自民党支持だ、と言いたいのか?この発言から、麻生や安倍はじめネトウヨ議員たちが、国民をどう見ているのかが明白に読み取れるのだ!
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!なぜ分厚い本は売れなくなっているの?(男性の)先生がKing&Princeに興味を持った理由は?日朝首脳会談で拉致問題を解決することは可能?どんな環境でアイデアを考えている?大好物の食べ物は何?「秘密基地」を作ったことはある?サンマやクロマグロの漁獲量規制問題をどう見る?…等々、よしりんの回答や如何に!?
【今週の目次】
1. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第88回「戦争写真家ロバート・キャパのこと」
2. ゴーマニズム宣言・第284回「新聞を読まない人は全部、自民党支持(笑)」
3. しゃべらせてクリ!・第234回「ぽっくん衝撃のひとことぶぁい!の巻〈後編〉」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記
第88回「戦争写真家ロバート・キャパのこと」 今日は、世界中の戦争報道に多大な影響を与えた20世紀を代表する戦場カメラマンを紹介しようと思う。
●ロバート・キャパ(1913-1954)
ハンガリーのブダペストに生まれたユダヤ人で、スペイン内戦、日中戦争、第二次世界大戦におけるヨーロッパ戦線、イスラエル独立とパレスチナ戦争、第一次インドシナ戦争と数々の戦争を文字通りの「最前線」で取材し報じてきた“世界最高の”と冠のつく報道写真家だ。
これまで仕事でいろんな写真事務所に出入りしてきたけれど、このキャパの肖像写真はあちこちで見かけた。スタジオに、まるで神棚のように飾っている写真家もいた。キャパに憧れ、影響を受けて報道を目指した人は世界中に大勢いるだろう。
過酷な戦闘のなかで撮った写真に、ちょっとユーモアを交えたキャプションや体験レポートをたくさん添えて残している人物で、写真展ではじっくり目を通したくなる文章も多く展示されていた。まずは代表的な写真を紹介したい。
(C) ICP / Magnum Photos (横浜美術館蔵)
1944年6月6日撮影、第二次世界大戦、ノルマンディー上陸作戦。
連合国側のキャンプに同行して招集がかかるのをひたすら待ち、フランスのオマハ・ビーチに上陸するアメリカ軍の第一陣と一緒になって船に乗り込み、大荒れの海へ出発。兵士らと一緒になって、銃弾が雨あられのように降り注ぐなか、大荒れの海に飛び込み、命懸けで上陸しながら撮影したものだ。
周囲の兵士たちは、海水のなかでどんどん撃たれて死んでゆく。それを撮る。負傷者を救護するために飛び込んだ衛生兵も目の前でたちまち撃たれてゆく。それも撮る。フィルムを交換していると、突如として全身がニワトリの白い羽で覆われ、「誰かがニワトリを殺したのか」とあたりを見渡すと、砲撃に吹き飛ばされた兵士の防寒コートから噴出したものを浴びていたことに気づく。それも、撮る。
キャパはノルマンディー上陸作戦で134枚を撮影。ところが、ロンドンの『ライフ』誌編集部に届けられたネガを受け取った暗室アシスタントが、編集者から「はやくプリントしてくれ!」と急かされて、興奮して慌ててしまったあまり、現像の過程で温度設定に失敗。なんと98枚ものフィルムを溶かしてしまい(!)、なんとかプリントされた写真は、たったの11点だったという。しかも、ピンボケしたりブレたり、きちんと撮れていないものばかり……。
ところが、『ライフ』誌は商魂たくましい、というか、まったくふざけてるというか、この事実をまだ戦場にいるキャパに内緒にしたまま、残されたピンボケ写真に
《その瞬間の激しい興奮が、写真家キャパのカメラを震わせ、写真にブレをもたらすことになった》
というもっともらしいキャプションを勝手につけて、誌面で大々的に発表。すると、このピンボケブレブレ写真が、戦場の凄まじい衝撃をイメージさせることになり、大変な反響となった。
キャパ自身も「戦闘の興奮を伝えるためには、ほんの少しカメラを動かしてみるといい」と何度も後進の報道写真家たちのために語っており、あえてボケ・ブレで撮った戦場写真は多数残っている。銃弾が降り注ぎ、どんどん人が血まみれで死んでいくなかで、表現のためにカメラを動かしながら撮るなんて、それだけで普通の精神状態じゃないが、キャパの代表作は、こんなユーモラスなタイトルだ。
『ちょっとピンぼけ』(ダヴィット社)
●反骨精神と架空の写真家「ロバート・キャパ」
ロバート・キャパは、本名をアンドレ・フリードマンという。アンドレの出身地ブダペストは、もともとは「ブダ」と「ペスト」の二つの都市が合併した場所だ。
コメント
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ゴー宣で取り上げられた麻生の発言は知っていましたが、あまりにも麻生らしすぎる物言いなので、怒る気にもならずスルーしてしまっていました。
新聞が自民党に批判的だから新聞に協力したくないという考えからは、自民党のことが第一、自分たちの考えこそが正しいという自己中心的な思考回路が如実に表れています。謙虚さのかけらもなく、公論など気にも留めていない様子は、とても権力の中枢にいる人物の発言とは思えません。
よく言われる、
「ネットには左右を問わず様々な意見が上げられ」ており、
「ネットで情報収集している若者は、一紙一局に囚われずより幅広い意見に接している」ため、
「より客観的に物事を判断することができる」などという認識は、論理の飛躍です。
実際に若者が幅広い意見に接しているのか、客観的に判断できているのか、こんなときこそビッグデータでも何でも使って追跡調査してみてほしいです。
新聞を読むようになって実感しましたが、見出しを中心に30分ほど読み流すだけでも、テレビのニュース等を2時間観るよりよほど多くの情報に触れられます。
一度では細部まで理解できなくても、別の日に関連記事が出れば、反復学習によって理解が深まっていきます。
個人的には、ネットで情報を収集していた頃よりも格段に視野も広がり、物事の理解も深まったと感じます。
麻生の恫喝に屈した朝日記者については、「人間の暴力的な部分を拒絶し続けていけば、いい人ばかりの社会がきっと出来上がるはず!」という思想を推し進めた結果、その色に染まらなかった腹黒い連中に権力の座を握られて、その暴走を止められなくなってしまった、という当たり前すぎる顛末を目の当たりにさせられて、笑うに笑えません。
「毒を以て毒を制す」という諺が、今こそ思い起こされなければならないのではないでしょうか。
(ID:29756042)
おはようございます♪
「辻説法」読みましたよ~~☆
春に大地震に遭ってから、極度に「ビンボー恐怖症」になったので、ホントに共感します。「辻説法」の単行本の続編が出たら、この回はベストに推すかも。
〝「一旦」福祉社会〟ってベーシックインカムも含むの??
最近、財出派も、このお話をよくするから、そういう方向に行ってるのかな~~。。。
私は単におカネをばら撒くのではなく、誰もが普通に働いて生活できるくらいのおカネを稼げる社会にすべきだと思うんだけど、今の政府は貧乏人をどんどん追い込むことしかしないからな~~。。。それくらい社会が疲弊してるってことなのかも。
大地震や先日の水害もだけど、「イキナリお家が崩壊する恐怖」を味わうと、突然、貯金に励みたくなるよ、ホント。
(ID:7919073)
笹師範の「軍事トリビア」を拝見しまして、真っ先に思い出したのが、インパール作戦時の牟田口廉也中将の、
「元来日本人は草食である。然るに南方の草木は全て即ち之食料なのである」という発言です。
そして最後は誰も責任を取らない。
NHKスペシャル ドキュメント太平洋戦争/NHK戦争証言アーカイブス
https://www2.nhk.or.jp/archives/shogenarchives/bangumi/movie.cgi?das_id=D0001200005_00000
戦前、戦中の軍部を礼賛する現代の人間たちの気持ちがわかる。自分たちの疚しさを、無責任さを直視せずに済むから。昔の日本人も自分たちと同じだと開き直ることができるから。