小林よしのりライジング

「森永ヒ素ミルク事件 後編」小林よしのりライジング Vol.421

2021/12/28 16:55 投稿

コメント:257

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第421号 2021.12.28発行

「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしのひとたち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…前回、前々回と「森永ヒ素ミルク中毒事件」の歴史を見てきた。岡崎哲夫という、たった一人の人物が執念と理想と信念を捨てずに戦い抜いたことで、絶望的な状況を逆転し、世の中を変えることができたという実例は今後にも大きな希望となるし、ここで話を終えられれば本当に良かった。だが現実は、そうはいかないのである。「森永ヒ素ミルク中毒事件」の歴史から得られる恐ろしい教訓とは何か?
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…『週刊エコノミスト Online』に掲載された「『ワクチン格差』がある限りコロナ禍は終わらない」(2021.12.26)という記事がひどい。オミクロンによる感染拡大の要因は「ワクチン接種から時間がたち、予防効果が薄れてきている」ことであるとし、各製薬会社の発表を鵜呑みにしたワクチンや治療薬の宣伝が続くのだ。そんな製薬会社PRマンが目を反らすオミクロン株の実態、そしてワクチンブースター接種後の癌患者を襲った懸念すべき症例報告とは?
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!多くの人がマスクを外せないのはマスクを外すことが「不道徳」だと考えられているから?性別適合手術は逆に「男らしさ」「女らしさ」に拘りすぎなのでは?学校に会社と同じ様な生理休暇を採用する事についてどう思う?おみくじってどれくらい信じる?「悪いことの全てを他人や時代のせいにするな」という美徳は思考停止を生んでいる?…等々、よしりんの回答や如何に!?


【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第448回「森永ヒ素ミルク事件 後編」
2. しゃべらせてクリ!・第377回「しゃべクリアワード2021」
3. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第242回「お薬業界のPRマンとブースター接種後の実態」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記




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第448回「森永ヒ素ミルク事件 後編」

 前回、前々回と「森永ヒ素ミルク中毒事件」の歴史を見てきた。
 岡崎哲夫という、たった一人の人物が執念と理想と信念を捨てずに戦い抜いたことで、絶望的な状況を逆転し、世の中を変えることができたという実例は今後にも大きな希望となるし、ここで話を終えられれば本当に良かった。
 だが現実は、そうはいかないのである。

 森永乳業は倒産の危機に瀕するほどの不買運動に遭い、刑事裁判で有罪判決が確定するに至ってようやく企業責任を認め、被害者への恒久対策を行うことを約束した。事件発生から実に19年もの歳月が経過していた。
 娘がヒ素ミルクの被害を受け、「森永ミルク中毒のこどもを守る会」(被害者が全員成人したのに伴い「森永ミルク中毒の被害者を守る会」に改称、略称・守る会)を立ち上げて戦ってきた岡崎哲夫氏は、この機に長年勤めた社会福祉協議会(社協)を辞め、守る会の専従となった。
 妻の幸子氏は社協の職に留まるべきだと意見したが、岡崎氏は社協の仕事には後任者がいるが、守る会の仕事は、立ち上げからずっと関わってきた自分にしかできないとして譲らなかった。
 だが、ここは幸子氏の方が正しかったのかもしれない。

 一生障害が残るヒ素ミルク被害者に対しては、一度限りの「損害賠償」ではなく、生涯の医療や生活を保障する「恒久対策」でなければならないというのは、岡崎氏ら被害者の親たちの一貫した主張だった。
 これを長年の死闘によってようやく勝ち取り、恒久対策を実施する「財団法人ひかり協会」が設立されることは決まった。
 しかし、実際に約束通りの恒久対策が行われるかどうかはこれからの問題だった。何しろ相手はこれまで19年間被害者を騙し、蔑ろにし続けてきた森永である。約束が反故にされ、対策が骨抜きにされるということは十分にありうる。
 だからこそひかり協会を監視し、恒久対策を確実に実施させるために、被害者団体である守る会の存在が一層大事になるという岡崎氏の考えには、確かに一理あった。
 だがその肝心の、自らが心血を注いだ守る会が変質してしまうとは、岡崎氏は夢にも思わなかったであろう。

 森永ヒ素ミルク事件が社会的な関心事となって以降、守る会には支援と称して様々な人が入ってきた。そしてその中にはイデオロギーに染まったプロ活動家がいた。
 運動の一時的な勝利によって守る会には組織と金が生じており、プロ活動家はこれに「利権」として目をつけた。
 岡崎氏は守る会において、特に重症者に対する手厚い救済事業の実施と、森永乳業に対する警戒心の保持を第一と考えていたが、このような方針はプロ活動家にとっては邪魔なものだった。プロ活動家の目的はあくまでも運動の継続にあり、被害者の救済にはないからだ。
 岡崎氏は変節を始めた組織を是正しようとするが、これに対してプロ活動家たちは岡崎氏や家族に対してまで、あらゆる誹謗中傷とプロパガンダを展開していったのだった。

 これはもう、わしが薬害エイズ運動で目の当たりにした「HIV訴訟を支える会」とそっくりである。
 薬害エイズが社会的関心事となり、運動が奇跡的勝利を達成したあたりから、それまでの苦しい闘いをしていた頃には見たことのなかったような人がどこからともなく現れるようになり、いつの間にか専従職員に収まったりしていた。そして、これからも運動の継続が必要だとか言って、運動に参加した学生たちを組織化しようとし始めた。
 わしはそれに対して、あくまでも訴訟の支援運動なのだから、訴訟が終わった以上は解散しろ、学生は日常に帰れと訴えた。
 そうしたら、わしに対してものすごい誹謗中傷が始まった。
 わしは会を辞めたが、その後に会が作成した運動の歩みを紹介するVTRでは、薬害エイズ運動の中に「小林よしのり」という人物は一切存在しなかったかのように編集されていたそうだ。

 守る会はプロ活動家に乗っ取られ、その機関紙には毎回岡崎氏に対する誹謗中傷が書き立てられ、それに対する反論は一切載せられなかった。
 守る会はひかり協会に従属する存在となり、協会を監視して恒久対策の完全実施を要求していくという役割は失われた。
 岡崎氏はこれを本来の形に戻そうとするが、古参の役員たちは次々排除され、岡崎氏も昭和61年(1986)、守る会を除名されてしまった。
 一方、被害者の親たちも決して一枚岩ではなく、守る会を乗っ取った活動家に洗脳される者や、森永におもねる者まで出てきて、個々に分断されて発言力はごく小さいものになってしまった。
 こうなれば、もう圧倒的に森永に有利である。ひかり協会が実施する恒久対策には、森永の意向が強く反映されるようになっていった。 

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コメント

「オドレら正気か? 新春LIVE」めっちゃ楽しませて頂きました☆♪

 やはり、小林先生だなあと思いました。凄い人だなあと思いました。そして面白い!

 木蘭先生や、他のゲストの方々の話も、まんべんなく聞けたので、とても満足し、充実した気持ちになれました。
「オドレら」も「道場」も、どちらも、やっぱし良いですね☆☆
(*^^*)

 公論サポーターの皆さま、とても充実した会を、どうもありがとうございました。
Γ○

 小林先生、木蘭先生、ゲストの皆さま、どうもありがとうございました。
Γ○

 サトルさん、青ネギさん、プチ打ち上げ、楽しかったです♪
(*^^*)

 次こそは、近くの参加者の方などにも、もっと、色々と話し掛けたいです。

No.267 27ヶ月前

「おどれら正気か、新春ライブ」ありがとうございました!

なんと言っても衝撃だったのは、

ナチスドイツがユダヤ人を収容所へ送り込んでいた時、それが圧倒的多数であったとしても、アンネフランク一家を匿った人もいた、自分だったら、と考えざるをえない、自分だったら、ユダヤ人を匿うのか、通報して収容所へ送るのか、今は、ナチスドイツの全体主義と同じ、圧倒的多数がそうだからと言って、自分が圧倒的に少数派だからと言って黙っていていいのか、胸に迫りくるものがありました。

衝撃その2
新自由主義、自己責任、誰もが自己責任と思うようになってしまった結果、昔なら記事にしていたことも書かれなくなった。「自己責任だから」喉が詰まって苦しい感覚、「自己責任」って、権力者や政治家にこれほど都合のいいことはない、自分の懐が傷まない人もすごく楽、まさに今の日本を覆っている病巣は「自己責任」だと思う。なにもかも「自己責任」の一言で黙らせられるから。当事者もすべては「自己責任」と思っているから。
冷たい冷たい日本国。冷たい冷たい日本人。

コロナ禍、収入が変わらない、が全体の75パーセント!衝撃でした。
自分は特別生計に支障をきたしてないから、ま、しょうがないね、みんな我慢してるんだもんね、って感じなんでしょう。
ちょっと考えればコロナ禍、仕事を失い家を失いホームレスになったり精神を病んだり自殺に追い込まれる人がいるくらいすぐわかるのに、
自分とは関係ないし、それはそんな不安定な仕事に就いたあなた達の「自己責任」
万一の時のために貯金くらいしとけや、お気の毒だけど、ねえ、それはあなたの「自己責任」今の日本は「自己責任」
人にも社会にも無関心、自分が良ければそれでよし。道義地に堕ちた。

前回の道場でも、よしりんは言った。
すべてが自分の責任と思わなくてもいいんだ!涙が出た。

新春ライブの質問コーナーで、
マスクをしなくてもいい美容室がみつからない、を聞いて、
私の行ってる美容室は、感染対策はほんの最初の数ヶ月だけで 、美容師自身もマスクはしてないし、もちろん客にも言いません。うちはマスクいりませんよーって言ってる。オーナーが早い時期におかしいと思ったらしく、私も、「コロナ論1、2」と「コロナとワクチンの全貌」を進呈しました。なかなか腕もいいので、千葉か東京の方なら是非!教えてあげたかったです。

No.268 27ヶ月前

3回に渡って紹介された「森永ヒ素ミルク中毒事件」を読んで、発起人の岡崎哲夫氏の執念に頭が下がりました。
娘さんの健康管理や普段の仕事のこなしながら運動を続けて勝利を勝ち取った執念は経緯を表するばかりです。
しかし、その後の恒久対策がイデオロギーに染まったプロ活動家たちに破壊されたことに、
当時リアルで追いかけていた薬害エイズ運動と重なり、腹が立ちました。
子供たちの救済のために築き上げたものを何故こうも自分達の欲のために食いつぶせるのか、
義理人情は人間関係を円滑にするためのまやかしとしか思えません。

ひたすらワクチンの追加接種を進める製薬会社に御用学者にはほとほと呆れます。
新薬開発には莫大な銭が掛かっているのは分かりますが、だからといって相手の健康を損ねてまで
売らなけらばならないものでしょうか。結局、隣人は自分が肥えるためのエサでしかないのでしょうか。

No.269 27ヶ月前
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