小林よしのりライジング

「芸人の闇営業や、哀れ」小林よしのりライジング号外

2019/07/09 14:40 投稿

コメント:82

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(号外 2019.7.9発行)

【目次】
1. ゴーマニズム宣言・第332回「芸人の闇営業や、哀れ」
2. 泉美木蘭の小説「正しい宗教のつくりかた」・第2回「真実を広めたい」




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第332回「芸人の闇営業や、哀れ」

 芸人の「闇営業」問題には、可哀そうで気の毒でたまらない思いがする。
 あれを謹慎処分にするなんてことは、しちゃいけない。しかも無期限だなんて、あんまりだ。

 そもそも芸人の間では、事務所を通さない営業は「直(じか)営業」とか、内職をひっくり返して「ショクナイ」とかいって、普通に行われていたことだという。
 なにしろ吉本興業の若手芸人って、事務所を通した仕事では本当に食えないのだ。
 吉本興業には6000人の所属芸人がいるが、お笑いで食えているのはほんの一握り。
 現在、吉本の芸人になりたい者はまず吉本が運営する吉本総合芸能学院(NSC)に入るが、NSCを卒業しても吉本芸人として身分が保証されるわけではない。
 NSC東京校の場合、卒業生は劇場でネタバトルランキングを行い、客の投票でギャラがアップしていくシステムとなっている。
   ギャラが出るのは上位190組で、それ以下はノーギャラ。しかもギャラが出るといっても、最底辺のランクでは1ステージ500円だという。

 1日放送のテレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」で証言した元芸人の場合、1ステージ500円で、しかもトリオだったから1人がもらえるのはわずか167円。横浜の自宅から渋谷の劇場まで行っていたから、交通費が往復1100円かかり、一度ステージに立つごとに933円の赤字だったという。
 そのうえ吉本には所属芸人が山ほどいるので、ライブは1カ月1回、60秒しかチャンスがない。そこで勝てば3分とか、月3回とか出られるようになり、吉本社内から注目され、仕事やオーディションの声がかかるようになるが、それまでが過酷だという。
 しかもそこを乗り越えたとしても、若手芸人は月10~15本のライブをこなしても月収2万円程度で、とても食っていけるわけがなく、飲食店アルバイトなどで生活費を稼ぐしかないという。
 ところがこの話が放送されたら、現役の芸人がツイッターに「そういう『ぬるい』情報を流すのはどうかと思う」「俺ならもっと厳しい現実を言える」と書いたというから、実際にはどこまで暗黒が広がっているのか想像もつかない。

 テレビ等のギャラの、芸人と所属事務所の配分は通常「5:5」か「6:4」で、良心的な事務所だと「7:3」という場合もあるが、吉本の若手はなんと「1:9」だという。
 実際、ある程度売れている若手でも、同じ程度の芸歴の人の同じ程度の仕事のギャラを比べたら、吉本よりも他事務所の方が何倍も高いということなどザラだそうだ。
 それを「ケチモト」とか、「ピンハネじゃなく『ピンクレ』だ」(ピン=1割をかすめ取るのではなく、1割しかくれない)とか言ってネタにもしていたのだが、もうさすがに笑い事では済まなくなっている。

 わしにも新人漫画家だった時代はあるから、そういう話を聞くと身につまされる思いがする。
 わしは幸いにもデビューしてすぐ「週刊少年ジャンプ」で連載が決まったものの、その時は大学を出たてで全くお金がなかった。原稿料は作品が雑誌に載ってから1カ月くらい経たないと入らないので、生活費も底をついて、ついにはバイトをしながらじゃないと描けないという状態になってしまった。
 そんな時に編集者から「次のコンテをなぜまだ送ってこないのか」と催促の電話が来たので、素直に「バイト先を探していたもので」と言ったら編集者がびっくりして、連載も始まっているのにバイトなんかやられちゃ困る、専属契約にして契約金を払うから描き続けてくれということになり、それで原稿料とは別に50万円が入ってきて、安心して執筆に専念できるようになったのである。

 わしはその時の50万円がそれまで見たこともない巨額の大金に思えて、仰天したものだ。昭和50年(1975)のことで、当時の大学初任給が平均89300円だったというから、給料約5カ月半分。現在の価値に換算すると90万5000円くらいに相当するらしいが。
 専属契約金は2年目以降、100万円、150万円と上がっていった。
 その代わり専属契約だから集英社以外の出版社では一切描けず、それが後々には嫌でたまらなくなってきた。連載が終わっても他社の雑誌に移ってすぐ次の連載を起こすということはできず、集英社の雑誌からお声がかかるのをじっと待っていなければならないのだ。
 それで、わしはもう勝手にどこででも描きたいと思って専属契約を打ち切り、少年画報社の「週刊少年キング」で連載を始めたのだった。

 吉本興業は最低限の生活保証もせず、あれほど酷いギャラしか払わないのに、それで若手芸人はどうやって食っていけばいいんだ?
 バイトで生活するにしても、芸人はいつ仕事が入るか分からないから、拘束時間が決まっている普通のバイトはなかなか出来ない。
 そうなると若手芸人が直営業をやるのも無理はない。拘束はないし、基本的にギャラは高い。新人でも相場は最低3万円、運がよければ、テレビのギャラならM-1優勝芸人クラスに相当する10万円以上になる。しかもそれが事務所を経由しない「取っ払い」でもらえるとなれば、それは手を出して当然というものである。
 そもそも吉本興業には契約書すらないのだ。契約を交わしていないのなら、事務所と関係なくどこでどんな仕事をやっていても、法的に何の問題もないはずではないか。

 いまでは食えない芸人の窮状もある程度知られているから、今回の「闇営業」に関しては、売れていない芸人に対する風当たりはそれほど強くはなく、もっぱら売れている雨上がり決死隊の宮迫博之と、ロンドンブーツ1号2号の田村亮が矢面に立たされている。
 ただしこれにも事情があるようで、闇営業の仲介をしていたカラテカの入江慎也は人の懐に入って恩を売るのがものすごく上手いらしく、明石家さんまでさえ「俺、入江には世話になっているから、入江に頼まれたら俺も絶対に行っていた」と、参加した芸人たちに同情を示していた。
 そう考えれば、行かなくても食えるのに後輩のために闇営業に行って、特に激しく叩かれて仕事を失った宮迫と亮も、かなり気の毒という気がしてくる。 

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コメント

>>96
よく分かりました。的外れでしたらすみませんが、あの幼い頃のおかあさんと戯れる場面は、スタッフの抵抗だった、とも取れるわけですね。子供の視点を失ってしまった物語は、『シン・ゴジラ』同様、特定の視聴者、一部のマニア向けになってしまうのでしょうか。

感想のつづきです。

SPA!
道場の感想でも書いたような気がするのですが、享保の改革や寛政の改革がいかに間違っていたか、を証明しているような気がします。政府は仁徳天皇の3年間の無税という施策を見習って欲しいです。確か、『ファウスト』にも、埋め立て工事をするために、皇帝にお札を大量に発行させるという場面があった筈です。

FLASH
これも前に記したように思いますし、よしりん先生も描かれていましたが、「命」という字は「令」から生まれた文字で、「天からの命令」であり、「生命」は「天から生きるための命令」を示している語なので、地球や宇宙よりも大きい、というものではないです。自然淘汰があってしかるべきなわけです。『路傍の石』で言っていることは、いのちを生かさなかったら意味がない、ということであり、惰性で生きることではない、とも。あと、カウンセリングについて万能視しすぎているとも感じました。当たり前ですが、カウンセリングにも「予約」が必要であり、「時間」も制限されており、「お金」も要る場合もあるわけです。
それでも、イージス・アショアなどのことから、玉川徹の意見から生まれるものは、一種のアウフヘーベンなのではないか、とも思いました。

生放送、最後の方しか見られなかったので、タイムシフトでゆっくり拝見します。
それではまた次号を期待します。

No.99 64ヶ月前

>>67
門下生チャンネルTwitter様、今、読みました!
わたしの書き込みまで、紹介して下さり、どうもありがとうございます。
(^o^)

自分の子供の宿題を手伝ってしまう親御さんは、どういう心境なのでしょうね。
(^-^)
童心にもどってしまうのか、我が息子・娘の成績を上げたくなってしまうのか。子供の居ない私には、想像の及ばないところです。
(*^^*)

もし、自分に子供が居たら、また、可愛い甥っ子や姪っ子に当てはめて考えてみたら……やっぱし自分でやらせようとするかなと思いましま。
(´;ω;`)

思い出したり、考えたりすると、楽しいですね♪
(^o^)

No.100 64ヶ月前

生放送お疲れ様でした。
 世の中には「小林よしのりは立憲民主党(枝野幸男)を裏切った」等と言う人が居ますが、全くもってふざけています。
 立憲民主党の立党や、その応援に尽力されたよしりん先生の意図を全く鑑みず、女系天皇や憲法改正についてなんのアクションも起こさない、しかも古屋デマヒラのデマツイートを、党の広報ツイッターに福山幹事長が採用したことについても何のコメントを出さない。
 以上の事を考慮すれば、枝野幸男という人間が、信念に基づいて動いているのか、それともお仲間第一主義なのか、一目瞭然だと思います。むしろそれでも枝野幸男に正義を感じているという人は、すでに枝野シンパか、よしりん先生が指摘していたように、立憲主義の皮を被ったサヨクのどちらかです。

No.101 64ヶ月前
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