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第321号 2019.7.2発行

「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしのひとたち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…6月24日、米ブルームバーグ通信はトランプ米大統領が「日本が米国の防衛に駆けつける義務がないのは一方的すぎる」として、「日米安全保障条約を破棄する可能性について側近に漏らしていた」と報道した。日本の自主独立を目指す真っ当な保守の立場からすれば、「日米安保条約破棄」ほど嬉しいことはない!一番素晴らしいことを言ってくれたトランプ大統領に感謝するばかりだ!
※「泉美木蘭のトンデモ見聞録」…今年2月、昭和大学病院(東京都品川区)の内科医・金古政隆容疑者(29)と、研修医・大林久晃容疑者(26)が女性2人を飲み会に誘い、睡眠薬を混入させた酒を飲ませて前後不覚に陥ったところを自宅に連れ込み輪姦したとして、準強制性交などの疑いで警視庁捜査1課に逮捕された。この事件では3回も4回も容疑者を再逮捕して、かなり積極的に追及している様子だ。そこでどうしても思い出してしまうのが、「逮捕を免れた男・Y氏」である。
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!三原議員の「民主党政権の『負の遺産』」発言をどう思う?定時で上がり地域の子供の面倒を見ることと、会社で残業すること、どちらを優先すべき?日本はいつまでG20やG7にいられると思う?吉本芸人の反社闇営業騒動をどう見てる?皇位継承問題、折衷案として「直系男子優先」はどうですか?「趣味コン」は現代では有効?…等々、よしりんの回答や如何に!?


【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第331回「トランプ大統領への手紙」
2. しゃべらせてクリ!・第278回「チャマ・ゴジラ対フクロギドラ!地上最大の決戦ぶぁ~い!の巻〈後編〉」
3. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第132回「伊藤詩織『Black Box』裁判記録とその検証《6》~“酩酊”と“麻痺”」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記




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第331回「トランプ大統領への手紙」

 拝啓 アメリカ合衆国大統領 ドナルド・トランプ閣下

 トランプ大統領にはこの度、素晴らしいお言葉を賜りました。
 今回のライジングでは、その感激の思いを記して大統領に捧げたいと存じます。

 思えばわしは、トランプ大統領が誕生した時からその発言に注目し、ずっと期待して参りました。
「米国を再び偉大な国にしよう」
「私たちは、『米国製品を買い、米国人を雇う』という2つの単純なルールに従うことになる」
「自由貿易は恐ろしい。もし国民が賢ければ、自由貿易は素晴らしいものになる。しかし、我々の国民は愚かだ」
「もう私たちは、この国や国民をグローバリズムの偽りの唄に溺れさせない」
「メキシコが人々を送り込んでくるとき、それは最良の人々ではない。彼らは多くの問題を抱えた人々を送り込んでくるんだ。薬物を持っていたり、犯罪者だったり、強姦魔だったり」
 最後のメキシコ云々の発言は物議を醸しましたが、これらの発言で主張しているのは内需優先、保護主義、自由貿易・グローバリズム反対、移民制限であり、これはわしの意見とも一致する、素晴らしい政策だと思ったものです。

 北朝鮮外交ではトランプ大統領は戦争も辞さないかのように、ツイッターでこう挑発をされました。
「北朝鮮の外相が国連で演説するのを今聞いた。もし小さなロケットマンの考えを繰り返すなら、彼らは長く続かない」
 これを北朝鮮外相が「宣戦布告」と見なし、「米国が我が国に宣戦布告をしたのだから、我々にはあらゆる対抗措置を取る権利がある」と述べた時には、ついにツイッターから戦争が始まる時代が来たかと思ったものです。
 しかし今では、大統領はツイッターで金正恩と会談したい意向を表明して、
「もし金委員長がこの書き込みを見ていたら、握手をして挨拶をするためだけに会おうと思う」
 と書き込んでおられます。
 やっぱり大統領は、ツイッターは戦争を起こすのではなく、友好のために使った方がいいと考える、心優しいお方だったのですね。
 今はイランに対して、イスラエルを助けるために、ものすごく居丈高に振る舞っているけれども、それもきっと本心からではないのでしょう。もし偶発的にでも戦争が始まってしまったら大変なことになるということくらい、わからないはずがないですから。

 前置きが長くなりました。
 わしが素晴らしいと感じたトランプ大統領の言葉は、ズバリ「日米安保条約破棄」です。
 6月24日、米ブルームバーグ通信は大統領が「日本が米国の防衛に駆けつける義務がないのは一方的すぎる」として、「日米安全保障条約を破棄する可能性について側近に漏らしていた」と報道しました。
 この報道に対して、菅官房長官は記者会見で「米大統領府から『米政府の立場と相いれない』と確認した」と全否定、米政府側も日本の通信社などに対して「発言はなかった」と回答していました。
 ところが続く26日には、FOXビジネスニュースの電話インタビューで、大統領ご自身が「日本が攻撃された時、アメリカは第3次世界大戦を戦い、猛烈な犠牲を払うことになるが、アメリカが攻撃されて救援が必要なとき、日本はソニーのテレビで見物するだけだ」と安保条約への不満を公言しました。
 日米両政府が火消しに躍起になっているのも一切構わず、堂々と「日米安保条約破棄」が自身の本音であることを公言してしまう潔さは、すごいものがあります。

 思えばトランプ大統領は2016年の大統領選に当選した当時にも「日本は駐留米軍の経費を100%払うべきだ。そうしないならアメリカ軍は撤退する。その代わりに核武装を許してやろう」と発言しており、その考えは一貫して全くブレていません。
 とにかく「日米安保条約破棄」という、一番素晴らしいことを言ってくださって、感謝するばかりです!
 日米安保条約がある限り、日本は米軍の占領状態が継続され、主権を喪失し、軍隊を持つこともできない属国であり続ける以外になく、主権がない以上、民主主義も機能しません。
 アメリカ大統領が日米安保条約破棄に言及するということは、日本を属国にするのをやめると言っているのと同じことです。これでようやく日本が独立した民主主義国家になるチャンスが生まれてきました。これは大喜びです。パーティーでも開きたい気分です!

 トランプ大統領は24日にツイッターで「中国は原油の91%、日本は62%、ほかの多くの国も同様にホルムズ海峡から輸入している。なぜアメリカはこれらの国のために無償で航路を守っているのか。これらの国は自国の船を自分で守るべきだ」とも発言しています。
 全くの正論です。守りましょう、ぜひとも!
 日米安保条約さえ破棄されれば、直ちに自主防衛体制を整え、自国の船は自力で守るようにします!
 当然、沖縄から米軍基地も叩き出しますし、日本の領空を米軍が占領している状態も、すぐにもやめていただきます。オスプレイも、イージス・アショアもやめましょう! そして日本は必ずや核を自前で持ちます!
 そうすれば、日本は外交交渉も自分の意思でできます。北方領土が返還されても絶対そこに米軍基地を置かないとロシアに確約できるから、返還交渉が進む可能性も格段に高まります!

 ところがおかしなことに、日本には「日米安保は片務条約ではない」とか言って、トランプ大統領に異議を唱える人がいます。沖縄に米軍基地を置くことで、アメリカの世界戦略に協力しているとか、しかもその駐留経費に莫大な「思いやり予算」を投じているとか言って、日本も相応の負担をしていると言い張るのです。
 親米保守派がそう言うのはまだわかるのですが、どういうわけだか最近では、左翼リベラルの論者にもそう唱える人が出てきて、「朝日より左」と言われる東京新聞までが6月29日の社説で「『安保ただ乗り論』は当たらない」と同様の主張をしており、わしは全く理解に苦しんでいます。