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第138号 2015.6.23発行

「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが無限に想像をふくらませ、とことん自由に笑える「日本神話」の世界を語る「もくれんの『ザ・神様!』」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…第48回ゴー宣道場は6月14日、「戦争と道徳」をテーマに、思想家・東浩紀氏と社会学者・宮台真司氏をゲストに迎えて開催された。敗戦国である日本が戦勝国のレジームを引き受けるのは当然なのか?国際社会からの信頼を得るためには、連合国と交わした「手打ち」を今さら蒸し返すべきではないのか?何が正しく何が真実なのか、思考せよ!!
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!ファンからの批判で考えを改めたことはある?自分の才能を超えていると思うような商売敵が現れた時、どう感じる?柏木由紀はどうすれば復活できる?革命を題材にした傑作といえば何?「ふしだら」「尻軽」な女性と、「性に奔放」「自由恋愛を謳歌している」女性の境界線って何?…等々、よしりんの回答や如何に!?
※新企画開始!ネット上に匿名で書かれた、タダで読めるクズみたいな文章なんか相手にするのはもう止め止め!やっぱり本です!これからは著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍に記された、立派な御意見を拝聴して、思いっきり誉めそやし、持ち上げよう!記念すべき第1回に拝聴する御意見は渡部昇一・中川八洋両氏の『皇室消滅』。さぁ、よいしょするよー!!


【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第133回「宮台真司氏との対立点は何か?」
2. しゃべらせてクリ!・第98回「KOぶぁい!ハードパンチャーぽっくんの巻〈前編〉」
3. 新企画!御意見拝聴・よいしょでいこう!・第1回「『皇室消滅』①〔男系男子天皇制度〕はGHQも支持した皇室の神髄?」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 読者から寄せられた感想・ご要望など
7. 編集後記




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第133回「宮台真司氏との対立点は何か?」

 第48回ゴー宣道場は6月14日、「戦争と道徳」をテーマに、思想家・東浩紀氏と社会学者・宮台真司氏をゲストに迎えて開催された。
 東氏が主宰する「ゲンロンカフェ」がゴー宣道場をジャックするというコンセプトで、第1部では司会を東氏に任せ、宮台氏とわしらの議論を自由に仕切ってもらうという初の試みに挑戦した。
 試みは成功したようで、参加者のアンケートを見ても好評なものが多く、特に二人の人柄の面白さに好感を持った人が多かったようだ。
 だが、言うまでもなく東・宮台両氏とわしの意見が完全に一致しているわけではない。むしろ、相違点があるからこそゲストとして招く意味があるのだ。
 会場が和気あいあいの雰囲気になったのはいいが、それに流されてしまわぬように、当日の宮台氏の発言の中で、わしが疑問を感じた部分を挙げておこう。

 宮台氏は、「戦争に負けたんだから、戦勝国のレジーム引き受けるのは当たり前」という。そうしなければ、誰も戦後復興に協力してくれなかったからだという。
 その上で、「東京裁判史観」とは日中共同声明で周恩来が繰り返した「日本国民は悪くない。日本国民も中国国民も、共通して日本の軍国主義者の被害者である」というものだという。
 つまり「A級戦犯」とは天皇陛下や日本国民から戦争責任を免罪するためのスキーム(仕組み)だというのだ。

 要するに宮台氏は、東京裁判の図式を認めれば中国と友好関係が築けると考えている。
 村山談話のような謝罪を繰り返して、靖国神社からいわゆるA級戦犯を分祀するか、国立追悼施設を作るなどしてしまえば、首相の靖国参拝も天皇陛下の御親拝も許されるし、宮台氏の言う重武装中立が可能になるというわけだ。
 まあ、いわゆるA級戦犯の方々に申し訳ないが、軍部=悪、国民=犠牲者の図式を建前上だけ認めておくという偽装ができれば、確実に自主防衛が出来るというなら、妥協してもいいかもしれない。
 だが、わしは宮台氏の意見に異論を呈しておいた。
 わしは、中国には日本を「永遠の敗戦国」にしておきたいという意図があると見ている。
 日本を、ポツダム宣言に言われているような「世界征服を企んだ悪の国」だったことにして、国連の「敵国条項」の中に封じ込め、国際社会の覇権ゲームに参加させないというのが中国の意志であり、それはアメリカもロシアもそうであり、そして韓国も事大主義で日本のプレイヤーとしての復活を願っていないと思うのだ。

 この意見に対して、宮台氏はこう言った。
それはわかる。しかし問題はね、その状態からどうやって僕たちが脱することができるかということだよね。そこから脱するという目標を立てた場合はですね、基本、政治家がやってきたことは非常によくないことなんだよね。
 まず、僕たちは敗戦しました。で、僕たちが民主主義国として再建できるためには、日本国民は駄目な国民ではないという枠組みを作る必要があるので、まあ、極東国際軍事裁判(東京裁判)図式は不可避。それ以外の図式で日本が民主主義国として再出発することはありえない。これまず認める必要がある
 さあ、読者諸君はこの意見をどう思うか?

 さらに宮台氏は、中国は日本を単に「永遠の敗戦国」にしておきたいと思うほど感情的なバカではなく、偉い人はたくさんいると言った。
 そして大事なことは、中国が危惧しているのは、日本が本当に戦前と手を切ったのかという問題なのだという。
 中国はそのことに危惧を抱き続け、1970年代、田中角栄の日中国交正常化の頃には、もうそろそろ危惧するのはやめてもよいかなと思った時期もあったが、すぐその危惧は復活し、現在に至っているというのだ。