第130号 2015.4.28発行
「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、小林よしのりに関するWikipediaページを徹底添削「よしりんウィキ直し!」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが無限に想像をふくらませ、とことん自由に笑える「日本神話」の世界を語る「もくれんの『ザ・神様!』」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)
【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…野党の無力と国民の無関心によって、集団的自衛権行使を可能にする安保法制の制定に向けた作業は、まさに「粛々と」進められている。「例外なく事前承認」は本当か?集団的自衛権を行使するために「武力攻撃事態法」を改正する必要はあるのか?従来の「周辺事態法」を「重要影響事態安全確保法」に改称するのは何故か?新法「国際平和支援法」の欺瞞とは?このまま行けば戦死者は必ず出る!安保法制を進めるのであれば、戦死者の祀り方を真剣に議論せよ!
※「よしりんウィキ直し!」…今回は「皇族志願の男系男子っているのか?に関する間違い」と題する項目をウィキ直し!竹田恒泰が言う「皇族志願の男系男子」など本当にいるのか?「旧11宮家の当主たちが意思統一」などあり得るのか?詐欺師・竹田恒泰に騙された、男系固執派の哀れな記述を徹底添削!!
※おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて、一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてくり!」。国産ゴジラ新作製作決定記念ぶぁい!ゴジラの着ぐるみ着て、大暴れしちゃるぶぁ~い!!!
【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第126回「安保法制と戦死者の祀り方」
2. しゃべらせてクリ!・第90回「ピギャース! ぽっくんなりきりゴジラぶぁい!の巻〈前編〉」
3. よしりんウィキ直し!延長戦・第12回「『ゴーマニズム宣言スペシャル・天皇論追撃篇(新天皇論)』過去版 ~「皇族志願の男系男子っているのか?に関する間違い」の間違い~」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 読者から寄せられた感想・ご要望など
7. 編集後記
第126回「安保法制と戦死者の祀り方」 野党の無力と国民の無関心によって、集団的自衛権行使を可能にする安保法制の制定に向けた作業は、まさに「粛々と」進められている。(権力は民意を無視するときにこの「粛々と」を使う)
大多数の国民はこの安保法制について漠然とした不安感は抱いているようだが、具体的にはわからない、難しすぎると思っているようだ。マスコミも国民に分かり易く伝えようという意欲が薄く、危機感が足りない。
例えば新聞各紙は、自民・公明両党が他国軍の支援に自衛隊を派遣する際に「例外なく国会の事前承認を必要とする」ことで合意したと報じている。
これだけ見れば、「例外なく事前承認」を求める公明党に自民党が譲歩し、自衛隊の海外派遣に一定の歯止めが掛けられたかのように見える。
これは怪しい、きっとどこかにトリックがあるはずだと思っていたが、そうしたら案の定、社長が安倍晋三と会食していない東京新聞だけが4月22日の1面トップで「『例外なく事前承認』は一部」と報じた。
そもそも、「安保法制」とは一つの法律のことではない。10個の関連法の改正と1つの新法制定が行われる。そしてここで問題となるのは、以下の2つの法改正と1つの新法である。
〈1〉武力攻撃事態法改正案
〈2〉重要影響事態安全確保法案(周辺事態法改正)
〈3〉国際平和支援法案(新法)
この3つの法の名前からして、意味が伝わってこないし、覚えることも出来ない。わざと難しくして、国民を煙に巻こうとしているからだ。
この3つのうち、実は「例外なく事前承認」とされたのは〈3〉だけ。
〈1〉と〈2〉は「原則、事前承認」ではあるが、緊急時には例外的に事後承認を認めることになっている。
ここをはっきりしておかないと、全ての自衛隊海外派遣に事前承認が必要になったかのような誤解を生んでしまうのだが、マスコミはわざと誤解させようとしているとしか思えない。
一応は「例外なく事前承認」となっている〈3〉の「国際平和支援法案」だが、これは福島瑞穂が言ったとおり、実態は「国際戦争支援法案」である。
これまでインド洋への給油艦派遣など、日本の安全には直接関係のない自衛隊海外派遣にはその都度「特措法」を作っていたが、これを「恒久法」にして、いつでも「他国での戦争支援」に、自衛隊を送れるようにしようというのがこの法律である。
「国際平和支援法案」には「例外なく事前承認」が必要になったと、マスコミは報じるが、いやいやそれは違う。
今までは「特措法」を作ることが、国会の「例外なく事前承認」だったわけで、「恒久法」にして「例外なく事前承認」と言ったところで、それは今まで通りなだけである。特別な縛りをかけたわけでも何でもない。
しかもその国会における事前承認には、「努力規定」とはしているが、7日以内に衆参両議院が可決するという条件が付けられている。
国会は政府に承認を求められてから、最長でも衆院7日、参院7日、合計たったの2週間で結論を出さなければならないのである。
そんな短い期間では十分な情報提供と議論が行われる保証はなく、「見切り発車」になる可能性がある。もう抜け穴は開けてあるのだ。
一方、〈1〉の「武力攻撃事態法」は、北朝鮮がミサイル撃ってきたとか、中国軍艦が尖閣に向かってきたとか、直ちに日本の存立が脅かされる事態を想定している。
こういう緊急事態まで「例外なく事前承認」なんて言ってはいられないのは確かで、この場合は事後承認もありうるのは当然とは言える。
ただし、これは本質的に個別的自衛権の問題である。
個別的自衛権を行使するにも現状では様々な不備があるのに、それを放置したまま、集団的自衛権を行使できるように法改正するというのがそもそも本末転倒なのだ。
そして最も問題なのは〈2〉の「重要影響事態安全確保法案」である。
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