第291号 2018.11.6発行
「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしの人たち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)
【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…シリアで反政府武装集団に3年もの間監禁されていたフリージャーナリスト・安田純平氏が解放され、帰国したが、するとまたもやネトウヨどもが「自己責任」を唱えてバッシングし始めた。そのバッシングはネトウヨだけにとどまらず国民全体に広まってしまい、安田氏が頭を下げなければ収まりがつかない状況にまでなってしまった。そんな国は日本か韓国くらいのものである。日本は民主主義社会ではない、ムラ社会でしかないのだ!
※「泉美木蘭のトンデモ見聞録」…『月刊Hanada』2018年12月号が、「『新潮45』休刊と言論の自由」という大特集を組んでいる。執筆陣は、トップに小川榮太郎独占手記、櫻井よしこ×門田隆将×有元隆志、そして後半ページに小川榮太郎×松浦大悟、稲田朋美、藤原信勝、坪内祐三、匿名の新潮社社員など。新聞に全面広告を出して大々的に発売された『月刊Hanada』、果たしてどんな内容なのか?
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!サウジアラビアのジャーナリストが殺された事件をどう思う?ジャポニカ学習帳の昆虫の写真は気持ち悪い?普通に家庭を持っている友人が、ネットの影響でネトウヨっぽくなってしまうのはなぜ?安田純平氏を「英雄扱い」するのはムリがあるのでは?女性の仕草でこれが好き!というのはある?…等々、よしりんの回答や如何に!?
【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第299回「民主主義国家ではジャーナリストが謝罪なんかしない」
2. しゃべらせてクリ!・第248回「建もの探訪! 貧ぼっちゃまツリーハウス、裏山鹿~!の巻〈前編〉」
3. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第103回「不思議の国のHanada」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記
第299回「民主主義国家ではジャーナリストが謝罪なんかしない」
シリアで反政府武装集団に3年もの間監禁されていたフリージャーナリスト・安田純平氏が解放され、帰国したが、するとまたもやネトウヨどもが「自己責任」を唱えてバッシングし始めた。
わしがこれをブログで「安田純平氏をバッシングするヘタレ虫ども」と批判したら、(https://yoshinori-kobayashi.com/16823/)、ネトウヨどもはわしの4年前のブログ「後藤さんはプロなのだから自己責任だ」(https://yoshinori-kobayashi.com/6780/)を引っぱり出してきて、「小林は、フリージャーナリストの後藤健二氏が殺害された時は『自己責任だ』と言っていた、ダブルスタンダードだ!」と騒いでいたらしい。
度外れた馬鹿である。馬鹿は死ななきゃ治らないと昔から言われているが、その言葉に尽きると、しみじみ情けなくなるのがネトウヨの腐乱脳みそである。
そもそもこの件で「自己責任」という言葉を使うこと自体には、別に問題があるわけではない。
プロの戦場ジャーナリストは誰だって、自分の意思で危険地帯に入っている。自分の身は自分で守るのが原則であり、たとえ命を落とすようなことがあっても、誰のせいでもない。「自己責任」だ。そんなのは当たり前のことである。
だから後藤健二というジャーナリストが殺されても「自己責任」であり、国家のせいでも、誰のせいでもない。
他方で、日本国の国民には「基本的人権」が保障されると憲法には書かれている。
憲法は国民から国家権力への命令書である。
憲法に書いてあるということは、権力は国民から「基本的人権を守れ」と命令されているのであり、国家は自国民であればどんな人でも守らなければならない。
その国民個人の思想信条などは関係なく、反権力の人でも等しく守らなければならないのだ。
だから、この場合に権力者が絶対に「自己責任」という言葉を使ってはいけないことは、言うまでもない。
それが「立憲主義」の基本であり、「自己責任で、勝手に行ったのだから、政府は守る必要はない」「政府に迷惑をかけた」「国民に謝罪しろ」と言うネトウヨは「立憲主義」を知らない腐乱脳の馬鹿どもなのだ。
橋下徹はツイッターで、安田氏の取材活動について、「単に自分自身が現地に行ったというところにしか価値がない。それなら世界の報道機関が報じているもので十分だ」とこきおろしている。
安田氏の取材活動には、ジャーナリストとして価値のある成果があったのかと疑問を呈しているわけだが、これはただの難癖にすぎない。
戦場ジャーナリストが価値のある仕事の成果を挙げられるかどうかなんて、実際に危険地帯に入ってみなければわからない。そこはバクチであり、どんなに腕のあるジャーナリストだって、大ネタをつかめるかどうかは運次第なのである。
それに、少なくとも今回の安田氏の活動によってわかったことはたくさんあり、十分な成果があったといえる。
現地では「人質ビジネス」が拡大していて、100人もの人質を収容する建物まであるということ、各組織から身柄を預かり、人質の世話を受託するビジネスが成立しているという驚くべき事実が明らかになった。これだけでも安田純平氏の体験取材は大成果だと言える。
人質になるとどんな目に遭うのか、どんな虐待があるのかも、得難い情報である。
また、安田氏解放のための身代金を払ったのはカタールだが、なぜカタールの国が身代金を支払ったのかという事情も見えてきた。
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