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第264号 2018.4.3発行

「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしの人たち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…日本の社会はもはや、中国や北朝鮮まであと一歩というところまで来ている。それを象徴する出来事が、森友学園問題における籠池前理事長夫妻の逮捕と長期勾留である。そもそも、籠池夫妻を「詐欺」容疑で逮捕すること自体が不当であり、これは「冤罪」以外の何物でもないのだ。そしてもうすぐ9か月となる厳重かつ長期の勾留、家族との接見禁止等の異常な処遇は、憲法にも国際規則にも完全に違反している。なぜこんなことが許されているのか?籠池氏の現状を見ていくと、佐川前国税庁長官がなりふり構わず安倍を守った理由も明らかになるのだ。
※「泉美木蘭のトンデモ見聞録」…フェイクは、乱発すればするほど、なにが真実かを見つけようとする側の意欲を削ぐことにつながっていく。その結果、最初は「真実VSフェイク」だった対立が、「真実を見破る者VSどうでもよくなった大勢」という構図に移り変わっていく恐れがある。政権擁護のためのフェイクを乱発する安倍信者たち。「劣化のトレンド」に目を光らせよう!
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!大家の漫画家には秘書がいるもの?次の首相は誰が良い?よしりん初心者入門向けの作品はどれ?画力で他の漫画家を羨ましいと思うことはある?アメリカからの輸入品に高い関税をかける事は出来ないの?漫画作品などの海賊版の氾濫をどうしたら止められる?バーで隣の席の女性が泣いている…私はどう行動すべき?…等々、よしりんの回答や如何に!?


【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第271回「籠池は冤罪であり、不当な勾留であり、人権侵害であり、憲法違反である」
2. しゃべらせてクリ!・第222回「マチャイ族の酋ちゃまと対面ぶぁ~い!の巻〈後編〉」
3. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第75回「昭恵擁護のフェイクは日系ブラジル人『勝ち組』と完全に一致」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記




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第271回「籠池は冤罪であり、不当な勾留であり、人権侵害であり、憲法違反である」

 日本の社会はもはや、中国や北朝鮮まであと一歩というところまで来ている。
 それを象徴する出来事が、森友学園問題における籠池前理事長夫妻の逮捕と長期勾留である。
 そもそも、籠池夫妻を「詐欺」容疑で逮捕すること自体が不当であり、これは「冤罪」以外の何物でもないのだ。
 森友学園が校舎の建築に際して、国土交通省の「サスティナブル建築物先導事業に対する補助金」というのを不正に受給したというのが逮捕容疑なのだが、これに「詐欺罪」を適用すること自体がありえない。
 素人考えでは、お金を騙し取ったのなら詐欺罪じゃないかと思ってしまいそうだが、国の補助金を騙し取った場合には「補助金適正化法違反」が適用されるのだ。

 お金を騙し取れば、一般に詐欺罪が適用される。
 ただし、騙し取ったお金が国の補助金であれば、特別に補助金適正化法違反が適用される。
 一般的に適用される法律があるのに、それとは別に、適用範囲が狭い特別の法律が存在するのである。
 このような場合、適用範囲の広い方(詐欺罪)を「一般法」、狭い方(補助金適正化法違反)を「特別法」という。
 お金を騙し取るという行為は同じでも、そもそも国の補助金というものは当局の十分な審査を経て支給されるべきものであり、不正な受給があれば、交付した国の側にも責任があると言わねばならない。
 そこで国の補助金を騙し取った場合には、特別に「詐欺罪」よりは罪の軽い「補助金適正化法違反」という犯罪とすることにしたわけだ。
 詐欺罪は「10年以下の懲役」で「未遂罪」も設けられているが、補助金適正化法違反は「5年以下の懲役・罰金」で、「未遂罪」はない。

 このような法の趣旨から、「一般法」と「特別法」の両方が存在する場合は、必ず「特別法」が適用される。
 籠池夫妻の場合、あくまでも国の補助金なのだから「補助金適正化法違反」が適用されなければならず、大阪地検は法律上の「基本のキ」も外したデタラメな逮捕をしたのである。
 しかも、籠池は虚偽の請負契約書などを提出して不正に補助金を引き出そうとしたものの、当局はそれに騙されずに審査し、適正な額の補助金を交付したということなので、これは「未遂」だったことになり、未遂罪のない補助金適正化法違反は適用されない。
 そのうえ籠池は既に補助金を全額返済している。過去には、よほど多額の補助金不正受給でない限り、全額返済しながら起訴された例はないという。
 つまり、籠池夫妻は本来適用されるべき補助金適正化法違反で起訴される可能性はほぼなく、事件化などされるはずがなかったのだ。
 それをあろうことか、大阪地検は詐欺罪で逮捕・起訴してしまったのだから、これは過去に数々あった検察不祥事にも匹敵する、もしくはそれ以上の暴挙としか言いようがない。

 そもそも、籠池夫妻を逮捕・勾留する必要がどこにあるのか?
 逮捕が認められるのは「逃亡のおそれ」「証拠隠滅のおそれ」がある場合だが、籠池は「逃げも隠れもしない」と公言し、「百万円返す」と安倍を追いかけたりして人ごみの中にも平気で現れ、「危険だから少し隠れてくれ」と言いたいほどだったから、逃亡のおそれなど全くない。
 証拠隠滅にしても、すでに検察は補助金受給をめぐる事実関係に関する主要な物証をほとんど押収し、関係者の取調べも実質的に終えており、実際に逮捕の翌月には夫妻を起訴している。収集した証拠で十分と判断したからこそ起訴したはずで、もはや証拠隠滅のおそれなど全く関係ない。
 それなのに籠池夫妻の勾留はもうすぐ9カ月となる。家族との接見も禁止、手紙のやり取りも弁護人を通じてしかできないという異常な状態が未だに続いている。
 しかも司法当局は、なぜ籠池夫妻がこのような厳重かつ長期にわたる勾留をされているのかについて、法的根拠の説明を一切していない。