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第161号 2016.1.12発行

「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが無限に想像をふくらませ、とことん自由に笑える「日本神話」の世界を語る「もくれんの『ザ・神様!』」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…年頭、「今年は景気が良くなる」と全マスコミが言い出した。安倍政権を擁護する者たちも「アベノミクスは成功しつつあり、そのうち庶民にも恩恵がくる」と言う。しかし庶民の感覚としては、そんな様子は微塵も感じられない。なおかつ小泉構造改革の時代から長年、政府の経済政策に影響を与え続けている竹中平蔵自らが「トリクルダウンなんてありえない」と言い出したのである!アベノミクスは「トリクルダウン効果」を根拠とした経済政策のはずだ。一体どうなっているのか?擁護工作に騙されず「アベノリスク」を直視せよ!
※「ザ・神様!」…長らく神々の物語のつづいた「ザ・神様!」は、いったん本を閉じて表紙にもどります!『古事記』の物語の冒頭、伊勢神宮に祀られることになるアマテラスオオミカミが生まれるよりも、ずっとずっと昔、そもそものことのはじまりのお話。1300年以上も昔に編纂された古文書に、なんと宇宙の始まり「ビッグ・バン」が記されていた!?
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!エッチな深夜番組がなくなったのは何故?好きな人が水商売をしていることを知ってしまった!どうするべき?「朝ナマ」のヤラセ問題、その真相は?暴力を使った喧嘩はしたことある?女性が働くことと、結婚&出産の推進は両立するの?将来的に皇族方が国際結婚される可能性はある?昨年開催されたという「おっぱい募金」をどう思う?…等々、よしりんの回答や如何に!?


【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第157回「トリクルダウンがなければアベノリスクは確定」
2. しゃべらせてクリ!・第121回「日本へきゃしゅ話・浦茶魔太郎ぶぁ~い!の巻〈前編〉」
3. もくれんの「ザ・神様!」・第72回「古事記の冒頭は、『宇宙のはじまりビッグ・バン』だった」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 読者から寄せられた感想・ご要望など
7. 編集後記




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第157回「トリクルダウンがなければアベノリスクは確定」

 今年は元旦の『朝まで生テレビ』出演からスタートとなったが、番組はいつもより長丁場で5時間近くに及んだにもかかわらず、そのうち3時間近くがアベノミクスに関する議論に費やされた。
 そのために予定にあった慰安婦問題の「日韓合意」に関する議論は一言も触れられずに「時間切れ」で終わってしまった。
 
 わしはアベノミクスの議論をテレビでやってもしょうがないと思っている。テレビにはスポンサーが必要だし、スポンサーはアベノミクスを批判してほしくないのだし、年頭から景気が悪くなっているという悲観論を好むはずがない。
 大企業はアベノミクスの恩恵を受けているし、円安の為替差益だけでぼろ儲けして、内部留保を溜め込んでいる。
 経団連は安倍政権と蜜月状態なのだから、大企業はアベノミクスを批判するようなテレビ番組のスポンサーにはなりたくないだろう。
 さらにテレビ局の上層部は頻繁に安倍総理とゴルフをしたり、食事会をしたりしてるのだから、政権擁護になるのは仕方がない。
 アベノミクスに不利な番組作りをするはずがないのだから、この議題で3時間を費やすのは、安倍政権の応援としか思えないのだ。
 本気の議論ならわしなんか呼ばずに、浜矩子や榊原英資を呼べばいい。芸能タレント化している森永卓郎では勝てるはずがない。

 それよりも、年末のどさくさ紛れにバタバタと行われ、未だ評価の定まっていない慰安婦問題の「日韓合意」の方が視聴率が取れるはずだし、そのためにわしが呼ばれたのかと思っていた。
 この議論をやれば、共産党の小池氏と、民主党の辻元氏と、リベラルの三浦氏が安倍首相を擁護して、わし一人で批判するという興味深い対立が生まれたはずなのに、最後まで慰安婦問題は触れられなかった。
 それでわしはテレ朝に対する疑惑が生じてしまい、そこに「ヤラセ問題」が発覚したので、愕然としてしまったのだ。

 番組中に観覧席から「一般人」として民主党批判の発言をした大森昭彦なる人物は、実は自民党の大田区議だったという「ヤラセ疑惑」が放送終了後に発覚する事態となった。
 大森は約20年前から朝生のディレクターと知り合いで、当然ながらディレクターも大森が区議であることを知っていた。
 番組では、客席から意見を求める際に進行役の渡辺宜嗣アナが「大田区で建築板金業を営んでいらっしゃる大森さん、いらっしゃいますか」と指名して意見を求めたし、画面では大森がマイクを握ると「大森昭彦さん 建築板金業」という字幕が出た。
 大森が「自民党区議」であることを隠し、一般の「建築板金業者」として発言することは、事前に仕込んであったのだ。特定の政治的意図に基づいた「仕込み」だったのか否か、そこはわしには分からない。
 マスコミに安倍政権の圧力が浸透し、番組スタッフも権力に迎合していると、囁かれている現状があるにも関わらず、「朝ナマ」のこの失態はどうしたことか?
 実はこの件に関しては、今月中に田原総一朗氏と対談することになっている。来月の「SAPIO」に掲載されるだろう。

 とはいえ、いくら周到に安倍政権の擁護工作をしたところで、想定外の事態は起こるものだ。
 この日のわしにとっての最大の収穫は、元総務相・慶応大教授で、今も政府の産業競争力会議の議員を務める竹中平蔵の口から、「トリクルダウンなんてありえない」という発言を引き出したことである。