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第465号 2023.4.11発行

「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしのひとたち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…4月1日、「こども家庭庁」が発足した。担当大臣・小倉蔣信は同庁ホームページに上げたビデオメッセージで、「こどもまんなか」を合言葉に、日本をもっと子供を生み育てやすい国にすべく、子供や若者の意見を聞き、様々な政策・支援策に生かしていくと語っている。だが、わしは「こども家庭庁」に大きな懸念を抱いている。なぜなら、この「こども家庭庁」の裏では統一協会が動いており、当初の理念を乗っ取り「伝統的家庭観」を普及するための機関にしてしまおうという企みが行われているからだ!!統一協会は何も変わっていない。「ステルス侵略」がバレて「見える侵略」になっても何も動じず、今もなお日本の政治の中枢に食い込んで侵略を続けている!
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…今月5日、国立感染症研究所などが2022年の「超過死亡」が、最大約11万3千人に上ったとの推計を明らかにした。「ワクチン接種が超過死亡に繋がっているのではないか」という論調も拡がり、ワクチンに対する懸念も拡がる中、3月28日、世界保健機関(WHO)がコロナワクチンの接種指針を見直し、健康な成人と子どもへの2回目以降の追加接種について「推奨しない」と方針を転換したことを発表した。全世代における接種を推奨してきたWHOが、完全に真逆のことを言い出したのだ。それにも拘わらず、日本では引き続きワクチン接種が推奨され、なんと小児向け予防接種スケジュールにも組み込まれているのである!正気の沙汰ではない!!
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」…中国と国交を保ったまま台湾と国交を結ぶことはできるの?自民党は自民党で酷いが野党も酷すぎる…次の選挙の投票基準はどう考えたら良い?食品の添加物はいけないという主張をどう思う?子どもを寿司屋に連れて行くのはアリ?ナシ?女性の戒名に旦那さんの字から1字取ってつけるお寺さんがあることをどう思う?女性に「漢気溢れる」「漢だぜ!」といった誉め言葉は失礼?「人の握ったおにぎりを食べれない」という子供にはどう指導すべき?「漫画の描き方のコツ」は何年プロをやっても分からないもの?…等々、よしりんの回答や如何に!?


【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第494回「【こども家庭庁】への疑惑」
2. しゃべらせてクリ!・第421回「日本一の茶魔太郎! 袋小路オニ退治ぶぁ~い!の巻【後編】」
3. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第288回「WHO、2回以上のワクチン接種は『推奨しない』ってよ」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記




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第494回「【こども家庭庁】への疑惑」

 4月1日、「こども家庭庁」が発足した。
 担当大臣・小倉蔣信は同庁ホームページに上げたビデオメッセージで、「こどもまんなか」を合言葉に、日本をもっと子供を生み育てやすい国にすべく、子供や若者の意見を聞き、様々な政策・支援策に生かしていくと語っている。
 だが、わしは「こども家庭庁」に大きな懸念を抱いている。

 もともと「こども家庭庁」の構想は、子供に関する行政の所管が、文部科学省・総務省(教育・いじめ対策・自殺予防対策など)、厚生労働省(児童養護施設、児童福祉施設、学童保育、保育所・保育園、ひとり親家庭支援、ネグレクト・児童虐待防止など)、内閣府・農林水産省(託児所・認定こども園、少子化対策、子供の貧困対策など)、警察庁生活安全局(少年少女犯罪対策、少年少女売春・児童買春対策など)などのように様々な省庁に分かれ、「縦割り行政」の弊害が指摘されていたことに端を発する。
 そこでこれらの事務の一元化を目指して民主党政権時代に「子ども家庭省」の設置が検討され、自民党への政権交代後も「子ども庁」として同様の検討は続けられていた。

 この構想自体はいいことだと思うのだが、安倍政権下では実現に向けた動きがほとんど見られなかった。
 そしてその後、縦割り行政の打破を目標とする菅義偉が首相になったことで、令和3年(2021)にようやく「こども庁」設置へ向けた動きが始まったのだ。
 菅は同年9月で首相を退任したため、後任をめぐる自民党総裁選においてもこども庁構想は争点のひとつとなった。そして4人の候補者のうち、最も意欲的だったのが野田聖子で、岸田文雄、河野太郎も意欲を示した。だが、高市早苗は態度を明確にしなかった。要するに、はっきり態度を表明するとマイナスイメージになるからダンマリを決め込んだけれども、本音ではこども庁構想に消極的、というより反対だったのだろう。
 そして総裁選は岸田が勝ち、首相に就任したため、こども庁構想は引き続き推進された。

 そんな中で同年12月、与党内からいきなり、名称を「こども家庭庁」にすべきだという意見が出て来た。
 もともと名称に関しては当初から、与党にも野党にも「子ども庁」と「子ども家庭庁」の2案があったが、それが「こども庁」に落ち着くまでには、多くの議論があった。
 そもそも、子供と家庭の関係は一様ではない。家庭ではなく施設などで育つ子供もいるし、家庭で虐待される子供や、宗教2世のケースでは「子供」と「家庭」が両立しない。
 家庭が楽園である子供も、家庭が地獄である子供も、家庭がない子供もいる。また、逆に子供がいない家庭もあるので、名称に「家庭」を入れると理念に混乱が生じてしまう。
 だからここはシンプルに「子供のことを考える」という理念だけを掲げる「こども庁」にすべきというのが第一の理由だった。

 また、「こども家庭庁」という名称では、子供は親とは別の人格を持ち、個人として尊重されるべき存在であるという当然の視点が薄れ、子供を親に付随する要素と見たり、家庭という枠組みの中だけに収めたりしようとする意識を感じるという理由もあった。
 そしてさらには、子供は家庭だけではなく、社会で守り育てるべき存在だという理由があった。
 家庭だけで子育てを背負おうとすればするほど、かえって親が追い詰められ、その皺寄せが子供に行ってしまうというケースは、枚挙にいとまがない。
 家庭は大事で、支援が必要なのはもちろんではあるが、学校や地域などのコミュニティ・共同体も同様かそれ以上に大事で、支援が必要である。
 それならば「こども家庭学校地域コミュニティ共同体庁」とでもした方がいいということになるわけで、それを「こども家庭庁」とすると、子供の問題を全て家庭だけに押し付けるような意味合いになってしまうのだ。

 名称ひとつにしてもこれだけの慎重な議論があって、「こども庁」の名が採用されていた。「こども」とひらがな表記にしたのも、子供のための役所なのだから子供に読めるようにというこだわりだったという。
 ところがそれまでの経緯を全部すっ飛ばして、いきなり「こども家庭庁」の名称がゴリ押しされ、岸田はそれをあっさり受け入れた。
 そのとき共同通信は、岸田政権が「伝統的家族観を重視する自民党内保守派に配慮」して、名称変更の調整に入ったと報じた。
 そして、実際には自民党内にも「こども庁」でいきたいと声を上げた議員は多くいたにもかかわらず、岸田は何の議論も説明もしないまま、「こども家庭庁」への名称変更を閣議決定してしまった。
 岸田は、「子供を第一に」ではなく、「自民党内保守派を第一に」考えたのだ。
 この時点では「伝統的家族観を重視する自民党内保守派」、すなわち安倍晋三とその一派の力はまだそれほどまでに大きかったわけである。

 ところがそれからわずか7か月後、安倍晋三の暗殺で事態は劇的に変わった。