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第20号 2013.1.8発行



「小林よしのりライジング」

『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、AKB48ブームから現代社会を掘り下げる(本当は新参ヲタの応援記!?)「今週のAKB48」、よしりんの愛用品を紹介していく「今週の一品」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」、『おぼっちゃまくん』があなたの人生相談に真剣回答!「おぼっちゃまくん人生相談~言われたとおりに生きるぶぁい~」、読者との「Q&Aコーナー」、秘書によるよしりん観察記「今週のよしりん」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)



【今週のお知らせ】
※金融緩和、公共投資、インフレターゲット…安倍自民党の経済政策をあてにし、擦り寄る経済界に一撃を加える!今週の「ゴーマニズム宣言」は、年頭を飾るに相応しい、本物のプロの矜持を示した一本です!!
※富士山はわしのもの!?「今週の一品」では、不気味な予言も…!!
※ネットサーフィンで出くわした、とんでもない情報、みるきーの○○写真とは!?その時よしりんは!?「アイドルと恋愛スキャンダル」何がセーフで何がアウトか?今年もAKB48ヲタは止まらない!!


【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第23回「不景気のせいにしてたまるか!」
2. 今週の一品・19品目「富士山」
3. 今週のAKB48・第21回「恋愛禁止ルールは揺るがなかった」
4. おぼっちゃまくん人生相談~言われたとおりに生きるぶぁい~・第98悶~第103悶
5. よしりん漫画宝庫・第20回「『誅(マルチュウ)天罰研究会』③そこいらじゅうに天罰てきめん!」」
6. Q&Aコーナー
7. 今週のよしりん・第20回「新年の誓い」
8. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
9. 読者から寄せられた感想・ご要望など
10. 編集後記



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第23回「不景気のせいにしてたまるか!」

 わしは新年だからといって明るい話題を書かないぞ!

 長らく出版不況が言われていたが、いよいよ断崖絶壁に追い詰められているのかもしれない。
 出版社が発行する新刊のなんと7割が返品になる状態だそうで、コンビニでも雑誌が売れないらしい。
 地域の中小書店は年間1000店前後も減少している。
 出版社、取次、書店のすべてが不況だから、モノを書いて、本を売るという職業が成り立たなくなるくらいの勢いで、本の購読者がいなくなっている。

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 もちろん、わしの本だってその例外ではない。よしりん企画の収益はここ数年赤字続きで、わし個人の貯金を切り崩して、スタッフにボーナスを出しているような状態だ。
 他の著作家に比べて、わしの本が売れないわけではない。『脱原発論』(小学館)も書店の買い取り制で発売したのだが、まもなく完売に近づいているくらいだから、売れる新刊の3割には入っているのである。
 それでも漫画というものは、膨大な人件費・経費を必要とするので、現状程度の売れ方では利益が出ないのだ。
 まあ、考えて見たら、今まで漫画や文章やらの創作活動で、自分だけでなく、数人のスタッフの給料やボーナスまで払っていたのは、幸運な時代だったのかもしれない。
 この事態を不景気のせいにすることは簡単である。


 
新聞・テレビのようなメディアも、スポンサーや広告収入が減って、青息吐息だろう。自動車産業も電機業界も不況だ。もはや製造業が農業化して、エコ減税などの政府の補助なしでは生き残れないほど、弱体化している。
 これが全部、デフレのせいであり、政府の金融財政政策の失敗ということにされている。

 安倍晋三が日銀に圧力かけて、2%のインフレ・ターゲットを強いたり、200兆円の公共事業を始めると言えば、年頭の日経平均株価が10700円まで上がったと言って、テレビの司会者やコメンテーターはホクホク顔だ。まだ株主以外は誰も儲かっていないはずだが。
 誰もが安倍政権のリバイバルを大歓迎の様子である。
 テレビに出てるような奴らは富裕層なんだろうし、マスコミだって景気回復してくれるなら、手を合わせて安倍大明神と拝みたいのだろう。
 「景気は気から」を信じて、信じる者は救われると、視聴者に布教してるのかもしれない。だが、この不況の原因が、単なる「気」のせいだとは、わしは思えないのだが。
 わしは株をやらないから、株価が上がっても関係ない。インフレになんかなって、仕事場の家賃が上がったら、もう福岡に引っ越すしかない。

 しかし、どいつもこいつも、経済はお上次第ということになって、政府の景気対策に甘えてしまっているのが、虫唾が走る。
 ちょっと前まで、経済は一流、政治は三流と言っていたのは、民間の矜持ではなかったのか?

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 わしは出版不況を不景気のせいなんかにはしない。お上に頼るようになったら、おしまいだと思っている。
 出版不況も、単に不況で人々の財布のひもが固くなったというだけの原因ではないだろう。

 もしわしが一般サラリーマンだったら、景気の動向に関係なく、もう本や雑誌は買わなくてもいいなと考えたはずだからだ。小説なら単行本は買わずに、文庫本を買うだろう。あるいは図書館で借りるかもしれない。漫画は漫画喫茶で読むだろう。
 もっと言うなら、もう歴史的に評価の確定した日本や世界の文豪の小説を文庫で読むだけで、人生が終わるだろうから、現代作家の本なんか読む必要がないのである。
 古今東西の天才の創作活動で生み出されたコンテンツが、膨大にあるのだから、現代の中途半端な創作物なんか、要らないのだ。

 ましてや雑誌なんか、新聞広告の見出しだけ大げさで、読んでみたら、見出しの刺激に見合う内容とは程遠い。
 今やわしの本を含めて、ほとんどの出版物が、無駄なものなのかもしれない。
 もちろんわしの本が、現代の「大衆化(マスコミに感化されること)」する人々の歯止めとして、却って必要であるという、ごーまんな信念は持っているのだが。


 しかし、人間というのは理不尽なもので、高尚や教養や有益なものだけを好むのではなく、「無駄」な消費も人生の面白味を増やすために必要とする存在なのである。