昨日の第33回ゴー宣道場「景気と幸福について考えよう」に参加したna85です。最高に面白かったのですが、内容については動画公開まで触れません。私は、発言用に江戸期の景気循環と庶民の幸福について考えていきましたが体調悪化のせいで断念し、今回参加されていた道場チャンネル掲示板の知己であるmagome21さんが私と同じ江戸推しだったので江戸期についての発言を託しました。結構面白い話をされ、よしりん師範も真剣に聞いておられましたので動画2部の公開をお楽しみに。 師範の先生方、道場の運営をサポートされた設営隊の皆様、ありがとうございました。参加された皆様、お疲れ様でした。 さて以下では、私が今回用意していった内容を書かせていただきます。ライジングには2度※しないという自分ルールを侵します。 私は今回のテーマに即して、江戸時代の景気動向と庶民の幸福との関係はどうだったのかを考えましたので、発言させていただきたいと思います。 江戸時代にも現代と同じように景気循環があり、元禄時代、田沼意次の時代、文化・文政年間は好景気で、その間の時代に新井白石が正徳の治、室鳩巣が享保の改革、松平定信が寛政の改革、水野忠邦が天保の改革をやった時代は不景気になったようです。好況の時代に幕府が行ったことは、金銀に不純物を混ぜて流通量を増やしたことが今でいう金融政策に当たり、また幕府や諸藩が公共事業をしたり、大奥が消費を増やしたりということが財政政策になっていたようです。ただし出島より内側に外国商人を入れず、幕府が貿易を一元管理する鎖国政策を採っていましたので、その景気対策の効果が国外に流れることはありませんでした。だから、好景気の時の江戸の庶民は「カネは天下の回りもの」「宵越しの銭は持たない」と言って好景気を謳歌していました。 さて、以前の道場で堀部師範に紹介していただいた渡辺京二の『逝きし世の面影』という書物には、幕末・明治に日本を訪れた欧米人が日本の庶民を大絶賛していた事例が集められています。日本の庶民は朗らかで人当たりが良く、欧米人には世界一幸せそうに見えたようです。しかしこの欧米人が訪れた時代は、天保の改革が失敗して大不況になり、一揆や打ちこわしが頻発し、大塩平八郎が貧民のために反乱を起こした時代を過ぎ、さらにペリー来航で幕府が不平等条約を結ばされ、関税自主権を失って日本の富が次第に流出していき、ついに景気が一度も回復しなかったような時代です。それでも欧米人には日本の庶民が世界一幸福に見えたのなら、景気と幸福にはあまり相関関係はないように思えます。ではなぜ不況の真っただ中でも日本の庶民は幸福そうに見えたのでしょうか。 私は日本人の幸福感の秘密は「江戸しぐさ」にあると考えています。江戸しぐさとは、傘傾げ:雨の日に狭い往来を行き交う時お互いが傘を反対方向によけてすれ違いやすくする、肩引き:狭い往来でお互いに肩を反対方向に引いてすれ違いやすくする、うかつ謝り:足を踏まれたとき踏まれる所に足を出していたことを謝る、陰り目しぐさを嫌う:気分がすぐれないときも憂鬱な表情をしない、などが有名ですが、これらは皆相手を気持ちよくさせ、不愉快にさせないための行動であり、江戸の庶民はこういう振る舞いを子供の頃から寺子屋で仕込まれていたそうです。だから幕末に日本を訪れた欧米人は皆、庶民が自然に行う相手を気持ちよくさせる振る舞いを絶賛したのだと思います。また江戸だけではなく、日本全国の寺子屋でも農・工・商の庶民階級の子供たちに江戸しぐさに類することがしつけられていたようです。この「江戸しぐさ」的な振る舞いは、同じ村に住む農民が大勢集まって一つの田で共同作業するときも、大工などの職人集団が共同作業するときも、商家に勤める商人や個人で売り歩く商人が商売をする上でも役に立ったはずであり、働くことに生きがいを感じる日本人の幸福につながっていたと思います。またお互いのこのような振る舞いは共同体をうまく機能させるため、共同体の成員同士の繋がりは強くなり、前世代から受け継いだ知恵を次世代に伝えたりすることによっても生きがいを得やすくなると思います。 さて、この江戸しぐさ的振る舞いの源流は江戸初期に明から日本に伝わった陽明学にあり、近江聖人・中江藤樹とその弟子らが日本中にこれを伝え、瞬く間に行き渡りました。その陽明学の中心となる思想は知行合一ですが、これは考えることと行動が同時に起こるのが正しいとされるものです。つまり「江戸しぐさ」的な相手を気持ちよくさせる行為は心で思ったと同時に行い、相手を不快にさせる行為は思いもしないし、たとえ思ったとしても同時に打ち消すことを子供の頃から仕込まれているわけです。もちろんこのような心の優等生ばかりではなかったでしょうけれど、こういう人々が多く住む所なら当時の日本はまさに地上の楽園だったのではないでしょうか。 しかし、幕末に来た欧米人がもう一度明治半ばの開化の進んだ日本を訪れたとき、日本の庶民の幸福感やよき振る舞いに陰りが見えていたと報告しています。これは開国によってグローバル経済にさらされた結果、日本の富が次第に国外に流出していくとともに、純朴な日本の商人が欧米人に騙されたり、いち早くずる賢くなった「先見の明」を持つ日本人に騙されたりして古き良き庶民が次第に駆逐されていったためではないかと思われます。 以上のことから導かれる結論としましては、景気は日本人の幸福感にそれほど影響はなく、日本人の幸福は様々な共同体で労働などを通じて認めたり認められたりすることでもたらされ、日本人の不幸は日本がグローバル経済にさらされた結果ではないかと考えられます。つまり現在安倍政権が行おうとしている景気対策は幸福に寄与することはほとんどなく、逆にTPP推進によってさらに不幸のどん底に突き落とされようとしているのではないでしょうか。 日本文化の精華が顕在化していた江戸期の再来を望む na85 自分ルールを破ったついでにライジングでは他の購読者にレスしないという自分ルールも破ります。カレー千衛兵さん、私はカレーさんを掲示板の荒らしだと思ったことは一度もありません。それどころかカレーさんの即レスには考えさせられることも多く、カレーさんと他の参加者の説との間で翻訳作業していたときは私の思想も深まったと感謝しているぐらいです。 ただカレーさんは切れやすくて他の方との軋轢をよく起こされました。切れて一次離脱された後、次に戻ってこられるときの態度にも少し問題がありました。ですので、頭の瞬間湯沸かし器を電気ポットに搭載し直してこられたらいつでも歓迎いたします。 national8505
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昨日の第33回ゴー宣道場「景気と幸福について考えよう」に参加したna85です。最高に面白かったのですが、内容については動画公開まで触れません。私は、発言用に江戸期の景気循環と庶民の幸福について考えていきましたが体調悪化のせいで断念し、今回参加されていた道場チャンネル掲示板の知己であるmagome21さんが私と同じ江戸推しだったので江戸期についての発言を託しました。結構面白い話をされ、よしりん師範も真剣に聞いておられましたので動画2部の公開をお楽しみに。
師範の先生方、道場の運営をサポートされた設営隊の皆様、ありがとうございました。参加された皆様、お疲れ様でした。
さて以下では、私が今回用意していった内容を書かせていただきます。ライジングには2度※しないという自分ルールを侵します。
私は今回のテーマに即して、江戸時代の景気動向と庶民の幸福との関係はどうだったのかを考えましたので、発言させていただきたいと思います。
江戸時代にも現代と同じように景気循環があり、元禄時代、田沼意次の時代、文化・文政年間は好景気で、その間の時代に新井白石が正徳の治、室鳩巣が享保の改革、松平定信が寛政の改革、水野忠邦が天保の改革をやった時代は不景気になったようです。好況の時代に幕府が行ったことは、金銀に不純物を混ぜて流通量を増やしたことが今でいう金融政策に当たり、また幕府や諸藩が公共事業をしたり、大奥が消費を増やしたりということが財政政策になっていたようです。ただし出島より内側に外国商人を入れず、幕府が貿易を一元管理する鎖国政策を採っていましたので、その景気対策の効果が国外に流れることはありませんでした。だから、好景気の時の江戸の庶民は「カネは天下の回りもの」「宵越しの銭は持たない」と言って好景気を謳歌していました。
さて、以前の道場で堀部師範に紹介していただいた渡辺京二の『逝きし世の面影』という書物には、幕末・明治に日本を訪れた欧米人が日本の庶民を大絶賛していた事例が集められています。日本の庶民は朗らかで人当たりが良く、欧米人には世界一幸せそうに見えたようです。しかしこの欧米人が訪れた時代は、天保の改革が失敗して大不況になり、一揆や打ちこわしが頻発し、大塩平八郎が貧民のために反乱を起こした時代を過ぎ、さらにペリー来航で幕府が不平等条約を結ばされ、関税自主権を失って日本の富が次第に流出していき、ついに景気が一度も回復しなかったような時代です。それでも欧米人には日本の庶民が世界一幸福に見えたのなら、景気と幸福にはあまり相関関係はないように思えます。ではなぜ不況の真っただ中でも日本の庶民は幸福そうに見えたのでしょうか。
私は日本人の幸福感の秘密は「江戸しぐさ」にあると考えています。江戸しぐさとは、傘傾げ:雨の日に狭い往来を行き交う時お互いが傘を反対方向によけてすれ違いやすくする、肩引き:狭い往来でお互いに肩を反対方向に引いてすれ違いやすくする、うかつ謝り:足を踏まれたとき踏まれる所に足を出していたことを謝る、陰り目しぐさを嫌う:気分がすぐれないときも憂鬱な表情をしない、などが有名ですが、これらは皆相手を気持ちよくさせ、不愉快にさせないための行動であり、江戸の庶民はこういう振る舞いを子供の頃から寺子屋で仕込まれていたそうです。だから幕末に日本を訪れた欧米人は皆、庶民が自然に行う相手を気持ちよくさせる振る舞いを絶賛したのだと思います。また江戸だけではなく、日本全国の寺子屋でも農・工・商の庶民階級の子供たちに江戸しぐさに類することがしつけられていたようです。この「江戸しぐさ」的な振る舞いは、同じ村に住む農民が大勢集まって一つの田で共同作業するときも、大工などの職人集団が共同作業するときも、商家に勤める商人や個人で売り歩く商人が商売をする上でも役に立ったはずであり、働くことに生きがいを感じる日本人の幸福につながっていたと思います。またお互いのこのような振る舞いは共同体をうまく機能させるため、共同体の成員同士の繋がりは強くなり、前世代から受け継いだ知恵を次世代に伝えたりすることによっても生きがいを得やすくなると思います。
さて、この江戸しぐさ的振る舞いの源流は江戸初期に明から日本に伝わった陽明学にあり、近江聖人・中江藤樹とその弟子らが日本中にこれを伝え、瞬く間に行き渡りました。その陽明学の中心となる思想は知行合一ですが、これは考えることと行動が同時に起こるのが正しいとされるものです。つまり「江戸しぐさ」的な相手を気持ちよくさせる行為は心で思ったと同時に行い、相手を不快にさせる行為は思いもしないし、たとえ思ったとしても同時に打ち消すことを子供の頃から仕込まれているわけです。もちろんこのような心の優等生ばかりではなかったでしょうけれど、こういう人々が多く住む所なら当時の日本はまさに地上の楽園だったのではないでしょうか。
しかし、幕末に来た欧米人がもう一度明治半ばの開化の進んだ日本を訪れたとき、日本の庶民の幸福感やよき振る舞いに陰りが見えていたと報告しています。これは開国によってグローバル経済にさらされた結果、日本の富が次第に国外に流出していくとともに、純朴な日本の商人が欧米人に騙されたり、いち早くずる賢くなった「先見の明」を持つ日本人に騙されたりして古き良き庶民が次第に駆逐されていったためではないかと思われます。
以上のことから導かれる結論としましては、景気は日本人の幸福感にそれほど影響はなく、日本人の幸福は様々な共同体で労働などを通じて認めたり認められたりすることでもたらされ、日本人の不幸は日本がグローバル経済にさらされた結果ではないかと考えられます。つまり現在安倍政権が行おうとしている景気対策は幸福に寄与することはほとんどなく、逆にTPP推進によってさらに不幸のどん底に突き落とされようとしているのではないでしょうか。
日本文化の精華が顕在化していた江戸期の再来を望む na85
自分ルールを破ったついでにライジングでは他の購読者にレスしないという自分ルールも破ります。カレー千衛兵さん、私はカレーさんを掲示板の荒らしだと思ったことは一度もありません。それどころかカレーさんの即レスには考えさせられることも多く、カレーさんと他の参加者の説との間で翻訳作業していたときは私の思想も深まったと感謝しているぐらいです。
ただカレーさんは切れやすくて他の方との軋轢をよく起こされました。切れて一次離脱された後、次に戻ってこられるときの態度にも少し問題がありました。ですので、頭の瞬間湯沸かし器を電気ポットに搭載し直してこられたらいつでも歓迎いたします。 national8505