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(号外 2016.3.14発行)

ゴーマニズム宣言
「『女性差別撤廃委員会』の勧告という『外圧』の危険性」

 3月7日、国連の「女性差別撤廃委員会」が日本政府に対する勧告を発表、その中には元慰安婦への「完全かつ効果的な賠償」を求めるばかりか、指導者や政治家の慰安婦問題についての発言にも制約を加え、教科書に慰安婦を取り上げろという要求まで書かれていた。
 わしはその報道を聞いてものすごく腹が立ち、即座にブログで「国連女子差別撤廃委員会という連中は何の権利があって日本の内政干渉をしてるのだ?」「戦勝国を優遇する国連で、敗戦国を「差別」したがっている実にくだらない「反日委員会」の主張なんかを、日本の新聞は載せるんじゃない!」と書いた。
https://www.gosen-dojo.com/index.php?key=joa21321w-1998#_1998
 だが、よく調べてみるとこの批判は当たっていないことがわかった。

 日本は昭和60年(1985)、「国連女性差別撤廃条約」というのを批准、締結している。
 この条約は、男女の完全な平等の達成に貢献することを目的として、女性に対するあらゆる差別を撤廃することを基本理念としている。
 問題の「女性差別撤廃委員会」は同条約の第17条において、各国の条約実施の進捗状況をチェックするために設置することが定められている機関だ。
 そして条約締約国は条約実施の進捗状況を国連に報告し、委員会はそれを検討して、今回のような「勧告」などの見解を発表することになっている。
 つまり日本が「国連女性差別撤廃条約」を締結している以上、「国連女性差別撤廃委員会」が日本政府に対してこのような勧告を行うことは、条約に定められた当然の権限であって、これを内政干渉とは言えないのだ。

 現在、安倍政権が国会でTPP関連法案の成立を急いでいるのを見てもわかるとおり、国際条約を締結する場合、それが国内法と齟齬をきたしていたら、国内法の方を変えなければならない。
 日本における法的な位置づけとしては、国際条約は憲法よりは下位だが、国内法よりは優位とされている。
 そのため憲法に違反しない限り、条約に違反する国内法や条例はあってはならないのだ。実を言うと、昭和60年に「男女雇用機会均等法」が制定されたのも、国連女性差別撤廃条約を締結するための国内法整備だったのである。
 TPP批判の際に何度も指摘したことだが、国際条約の締結によって、その国固有の文化や慣習に反する国内法を制定せざるを得なくなり、国柄が損なわれたり、重大な主権侵害を受けたりする事態は、いくらでも起こりうる。だからこそ条約の締結には慎重さが求められるのだ。
 国連女性差別撤廃条約を締約している国は現在189ヶ国に上るが、条約文に署名はしたものの、国内議会の承認が得られないために締約に至っていない「署名国」も、98ヶ国もある。
 実はアメリカ合衆国も、1980年に署名はしているが、国内法が条約に制約されることを議会上院が拒否しているため、未だに締結していない。