第144号 2015.8.18発行
「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが無限に想像をふくらませ、とことん自由に笑える「日本神話」の世界を語る「もくれんの『ザ・神様!』」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)
【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…安倍首相の戦後70年談話が発表された。もともと安倍晋三が戦後70年談話を出そうとしたのは村山談話を否定するためであり、安倍を支持する自称保守派はそれを期待していたはずである。しかし結局は村山談話の揺るぎない踏襲を宣言、“自虐史観の克服”は大きく後退してしまった。従米属国精神によって書かれた安倍談話を徹底検証する!
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!調味料へのこだわりはある?集団のルールに依拠せずに子供を善行に導くにはどうするのが良い?ロッテのお家騒動、どう思う?ゴー宣の翻訳は考えている?日本はいつまでお詫びを続けるべき?『古寺記』(SAPIOで連載)の再開は?天皇陛下の終戦記念日のお言葉に「反省」があったことをどう感じた?…等々、よしりんの回答や如何に!?
※著名なる言論人の方々の立派な御意見を思いっきり褒めそやす「御意見拝聴・よいしょでいこう!」。誰も知らない、証拠もない、けれども日本中を裏で支配している、恐るべき共産党の陰謀と日夜戦い続けている、日本保守論壇の二大虚頭・渡部昇一、中川八洋両先生!今回もお二人の篤き尊皇心に学びましょう!
【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第139回「安倍首相の戦後70年談話を検証する」
2. しゃべらせてクリ!・第104回「チャマシック・ワールドの大激突ぶぁ~い!の巻〈前編〉」
3. 御意見拝聴・よいしょでいこう!・第4回「『皇室消滅』④毅然として真に勇気のあるお方、竹田恒泰様!」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 読者から寄せられた感想・ご要望など
7. 編集後記
第139回「安倍首相の戦後70年談話を検証する」 8月14日、安倍首相の戦後70年談話が発表された。
安倍談話は戦後50年の村山談話の約2.6倍、戦後60年の小泉談話の3倍近い長ったらしいものだった。
もともと安倍晋三が戦後70年談話を出そうとしたのは村山談話を否定するためであり、安倍を支持する自称保守派はみんなそれを期待していたはずである。
ところが蓋を開けてみれば、ただ村山談話を冗長にしただけの代物。「植民地支配」「侵略」「痛切な反省」「心からのおわび」という村山談話の4つのキーワードも全て入れ、「歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります」と、村山談話の揺るぎない踏襲を宣言してしまった。
同日に出演した「朝まで生テレビ」では、この談話は事前にアメリカに見せているはずだと指摘しておいたが、案の定、談話の作成にあたっては事前にアメリカに内容を説明し、理解を求めていたという報道がすぐに出てきた。
国民はこれを普通の事として受け入れているが、首相自らが「内政干渉」を申し出るというのは属国の証明である。
もし中国に日本の首相談話をチェックさせていたら、大騒ぎになったはずだ。中国には内政干渉させない、アメリカなら内政干渉されていいといのが、この国の従米属国精神なのだ。
結局のところ、安倍首相やそのコアな支持者が唱えていた首相談話からの自虐史観の克服は、戦勝国の監視を恐れてどんどん後退し、ついには安保法制を通すために、村山談話を踏襲するしかなくなってしまったわけだ。
これは完全に安倍首相自身の変節であり、保守派は激怒してデモを起こさねばならないのだが、静かなものである。相変わらず、安倍ちゃんのやることなら何でも支持の、安倍真理教に嵌ってしまっている。
こんなことなら、新談話を出す意味など何もない。村山談話でよかったのである。
わしは外国特派員協会の記者会見で「アメリカの戦争史観に染まったような談話だったら批判する」と表明しておいた。
もちろん、先週批判した有識者懇談会の報告書を見た時点で予想がついていたことだが、談話は完全に欧米中心の歴史観によって書かれていた。これについても、批判する以外にない。
談話では日本は満州事変以降、道を誤ったとして次のように言っている。
世界を巻き込んだ第一次世界大戦を経て、民族自決の動きが広がり、それまでの植民地化にブレーキがかかりました。この戦争は、一千万人もの戦死者を出す、悲惨な戦争でありました。人々は「平和」を強く願い、国際連盟を創設し、不戦条約を生み出しました。戦争自体を違法化する、新たな国際社会の潮流が生まれました。
当初は、日本も足並みを揃えました。しかし、世界恐慌が発生し、欧米諸国が、植民地経済を巻き込んだ、経済のブロック化を進めると、日本経済は大きな打撃を受けました。その中で日本は、孤立感を深め、外交的、経済的な行き詰まりを、力の行使によって解決しようと試みました。国内の政治システムは、その歯止めたりえなかった。こうして、日本は、世界の大勢を見失っていきました。
満州事変、そして国際連盟からの脱退。日本は、次第に、国際社会が壮絶な犠牲の上に築こうとした「新しい国際秩序」への「挑戦者」となっていった。進むべき針路を誤り、戦争への道を進んで行きました。
日本は、平和を望む欧米諸国が作った「新しい国際秩序」への「挑戦者」になったというのだ。
こんな単純な「欧米=善玉、日本=悪玉」の歴史観は、実は欧米の研究者でさえ否定している。
少々長くなるが、イギリスの歴史家クリストファー・ソーンの『満州事変とは何だったのか』(市川洋一訳、草思社)から引用しよう。
コメント
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>>74
ありがとうございます。支那事変に関しては、右翼、革新派にも人気があった近衛文麿が首相になったことが大きいです。
近衛は陸軍からは支那に関しての強硬姿勢、革新派にとっては貧富の格差是正政策と左右を組み上げる政策をしてましたから、両者から近衛を首班とする一党独裁を懇願されるまでになってしまいました。
先生が過去のライジングに書いたように、強硬派に支持される点では安倍晋三と近衛文麿はかなり似ていると思います。
どちらも、血筋が良く将来の首相候補に目された人物ですしね。
まあ、最後まで人気が落ちなかった近衛文麿に対して安倍のほうがまだ打倒はできる可能性はあると思います。
(ID:19723146)
続きですが、戦前日本において対立軸になっていたのは、欧米と協調し、国際秩序を維持する「現状維持派」と世界恐慌の中で欧米秩序を打破し、新秩序を建設する「革新派」の2派に分かれていました。
支那事変において軍部が蒋介石打倒を目指したのは蒋介石が英米の支持を受けて現状維持を目指していると見られていたためです。
だから、支那事変は蒋介石から支那を解放する「聖戦」であると国民から支持されたわけです。
大東亜戦争も新秩序建設のために行われましたが
敗戦し、「現状維持派」であった幣原喜重郎、吉田茂らリベラルグループが戦後日本を引っ張ることになりました。
革新派は社会党に合流し、ソ連支持、資本主義打倒を目指したわけですね。
ここで面白いのは、革新官僚であった岸信介は総理になり、日米安保を改定し、親米路線を確定させたことです。
岸自体は国内政策では最低賃金法、国民皆保険制度を作ったり、「革新派」でしたが、国際情勢では
「現状維持派」になってしまったのです。
安倍晋三も岸路線を継承して、戦後レジームべったりになっていますが、彼らにとって「革新」すべき
はGHQの占領政策(実際に第一次安倍内閣の時に教育基本法の改正、防衛庁から防衛省に格上げを行いました)の是正であり、アメリカ支配からの「革新」は大反対という方針です。
結局は国民自体がアメリカべったりの「現状維持」から「革新」に転じない限り、戦後は終わらないと痛感しております。
(ID:29477650)
安倍談話は最初に読んだ時にもとんでもないと思いましたが、今回のゴー宣を読んでもう一回読み直すとさらにとんでもないものだということがわかりました。
結局安倍首相は一貫して「究極の媚米野郎」だということですね。
そして一番残念なことは、頭の中身がないネトウヨはおろか一般の庶民でさえもアメリカへの警戒心はなぜか持っていないことでしょうか。
先日「日本のいちばん長い日」を観たのですが、あそこで描かれていた日本人の独立心、プライド、そして尊皇心はどこに行ってしまったのかと、寂しくなります。
早く目覚めるべきですが、難しいでしょうね・・・