第32号 2013.4.2発行
「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、AKB48ブームから現代社会を掘り下げる(本当は新参ヲタの応援記!?)「今週のAKB48」、よしりんの愛用品を紹介していく「今週の一品」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」、珍妙な商品が盛り沢山(!?)の『おぼっちゃまくん』キャラクターグッズを紹介する「茶魔ちゃま秘宝館」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが無限に想像をふくらませ、とことん自由に笑える「日本神話」の世界を語る「もくれんの『ザ・神様!』、秘書によるよしりん観察記「今週のよしりん」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)
【今週のお知らせ】
※先の選挙で自民党が「公約」として掲げたはずの「TPP断固反対」「脱原発」「『竹島の日』政府式典」「尖閣諸島の実効支配強化」…これらぜ~んぶ大ウソだった!!今週の「ゴー宣」では、自民党が選挙時に行なった「詐欺」を徹底的に暴く!安倍政権が進める「道徳教育」に、果たして正当性はあるのか!?
※よしりん曰く「とにかくアナーキーで、完全なる気狂い男を主人公にした初の試み。とことん無茶苦茶なのを描いてやるぞー!と始めた作品」である『青年ジェット』。今週の「よしりん漫画宝庫」は、そんな「最狂作品」をご紹介!
※世界に太陽を取り戻せ!八百万の神々に課せられたミッション、その名も「800~エイト・ダブルオー~アマテラス救出大作戦」!!作家・泉美木蘭の「ザ・神様!」アメノウズメの官能的なストリップショーを見逃すな!?
【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第35回「どのツラ下げて『道徳教育』だ!?」
2. よしりん企画、その風景・第9回「タオルイス」
3. もくれんの「ザ・神様!」・第6回「アマテラス救出大作戦 ~ダンス&トランス 八百万で踊れ! 騒げ!~」
4. よしりん漫画宝庫・第32回「『青年ジェット』①最狂のヒーロー登場!」
5. Q&Aコーナー
6. 今週のよしりん・第32回「正直者がバカをみる!?」
7. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
8. 読者から寄せられた感想・ご要望など
9. 編集後記
第35回「どのツラ下げて『道徳教育』だ!?」
安倍政権は、「道徳教育の充実」とやらにご執心だ。
だが一体、自民党政権がどの口で「道徳教育」などと言うのだろうか?
自民党には、「道徳」云々を口にする資格など一切ない。
この選挙ポスターが、その証拠である。
もう一つ証拠を示しておこう。これは自民党福島県支部のポスターである。
まず子供に道徳で教えるべきことは、「ウソをついてはいけない」ではないか!!
国民にこれだけの大ウソをついて一切恥じない不道徳な卑劣漢が、子供に対してどんな「道徳」を教えようというのだ!?
難病指定の潰瘍性大腸炎が「完治した」などというウソをついて、首相に就任してはいけない!
グローバル競争によって、日本の農村を荒廃させることが確実なTPPへの参加を決めておいて、「美しい日本の田園風景を守る」なんてウソをついてはいけない!!
TPP参加は確実に日本の伝統文化を崩壊させるのに、「勝ち抜いて誇りある日本を取り戻す。私を信じてほしい」なんて大ウソは決してついてはいけない!!
昨年の総選挙期間中、安倍晋三は盛んに民主党の「マニフェスト違反」を批判し、「自民党の政権公約には、できることしか書かない」と断言した。
ところが、選挙に勝つや否や、公約に書いてあったはずの「竹島の日」の政府式典や、尖閣諸島の実効支配強化等をあっさり反故にした。そのことは『ライジング』の『ゴー宣』でも批判したが、驚くことに現在、安倍は「あれは公約ではなかった」と言っているのだ!!
選挙中、自民党は以下の2種類のパンフレットを配布した。
「重点政策2012」(全26ページ)
「J-ファイル2012 総合政策集」(全78ページ)
この2種類のパンフレットは表紙もそっくりで、内容も17ページ目まで全く同一である。誰がどう見てもこの2種類のパンフレットの両方が自民党の政権公約であり、ページの多い「J-ファイル2012」は「重点政策2012」の詳細版だと思ったはずだ。
「竹島の日・政府式典」等は、「J-ファイル2012」にだけ書かれている。もちろん、個別具体的な事例だから、詳細版にのみ載っていると思うのが常識だ。
ところが安倍は、「公約」とは「重点政策2012」の方だけで、「J-ファイル2012」は公約ではないと言い出したのだ!!
自民党は、最初から有権者を騙すつもりでパンフレットを2種類用意したのだ。
「J-ファイル」の方にできっこない大風呂敷を広げまくり、これが公約であると思わせて投票させ、後で「あれは公約ではない」と言うつもりだったのだ。
これは、完全に詐欺師の手口である。
自民党が民主党の失敗から学んだことは、「公約詐欺は、もっと巧妙にやらなければいけない」ということだけだったのだ!
一体、どこに「道徳」があるというのか!?
この詐欺パンフレットは、現在でも自民党のホームページからダウンロードできる。
http://www.jimin.jp/policy/index.html
ここにも小細工がしてあって、「重点政策2012」は「公約関連」というページからダウンロードするようになっていて、このページには「自民党では、実現できる約束こそが、本当の公約と考えます。」という一文があり、はっきり公約であることを謳っている。
ところが「J-ファイル」は「政策パンフレット」という別のページに置かれている。こうやって、「J-ファイル」は「公約」ではなく、あくまでも目指すべき政策でしかないと言い抜けるための仕掛けをしていたのだ。
ところが、実は自民党は、選挙前には「J-ファイル」の準備稿に、こんな表紙をつけて公開していたのである。
この悪辣さは、一体なんだ!?
選挙前は「J-ファイル=政権公約」として宣伝しておいて、選挙が始まったら「J-ファイル」から「公約」の文字をこっそり外し、そして選挙が終わったら「J-ファイル」は公約ではないと、ヌケヌケと言っているのである!!
TPPについて、「J-ファイル」にはこう書いている(「政権公約」と堂々と銘打って公開した準備稿にも、全く同じ文章が載っている)。
TPPに関しては、政府が国民の知らないところで、交渉参加の条件に関する安易な妥協を繰り返さぬよう、わが党として判断基準を政府に示しています。
1. 政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する。
2. 自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。
3. 国民皆保険制度を守る。
4. 食の安全安心の基準を守る。
5. 国の主権を損なうような ISD 条項は合意しない。
6. 政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる。
もちろん、有権者はこれを「公約」と思って投票したのだ。
ところが安倍はこの件を2月28日の衆院予算委員会で追求され、「J-ファイルは正確には公約ではなく、目指すべき政策を書いたもの」だと断言したのである!!
公約とは「重点政策2012」に書いている「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、交渉参加に反対します」だけで、それは日米首脳会談でオバマに確認したから、公約違反じゃないもーん!
国民皆保険だの、食の安全だの、ISD条項だのは、公約じゃない「J-ファイル」に書いた「努力目標」でしかないから、守れなくたって、公約違反じゃないもーーーーん!!
公約だと思ったのは、そう思った人の勘違いでしかないもーーーーーーーーーーん!!
こんなことを平気で言ってる詐欺師が、「道徳教育」だって??????
今週4月4日に、「道徳教育の充実に関する懇談会」の初会合というのがある。これは、安倍首相の肝いりで設けられた「教育再生実行会議」の提言を受けて開かれるのだが、その「教育再生実行会議」なるもののメンバーとなっている「有識者」の一人に、高崎経済大学教授の八木秀次がいる。
八木は皇位継承問題で「神武天皇のY染色体」というトンデモ妄説を世に広めてしまった、とてつもなく罪深く頭の悪い人物である。しかも厄介なことに、頭が悪いのに運動家気質の政治的行動力だけはやたらとあり、自称保守業界を「男系ゼッタイ」に染め上げてしまったのだ。しかも、安倍とは第1次政権以前からずっと懇意の間柄であり、今回も「教育再生実行会議」のメンバーに入り込んでいる。
「新しい歴史教科書をつくる会」に内紛が起き、分裂してしまった原因を作ったのも八木である。八木らは「つくる会」から分派する形で「教科書改善の会」なるものを立ちあげ、さらに「つくる会」を支援していたフジサンケイグループを抱き込んだ。そのため「つくる会」の教科書を出版していたフジサンケイ系出版社は「つくる会」と絶縁し、「改善の会」の教科書を出版することになった。
もちろん、それまでのフジサンケイ系出版社の教科書の著作権は「つくる会」にあるので、「改善の会」は全く新しい教科書を一から作らなければならない。ところが、八木らは「歴史教科書の改善」を掲げておきながら、実は自分の手で真面目に教科書を書くという地道な努力をする気など、さらさらなかった。新たに出来た「改善の会」の歴史教科書は、全83単元のうち33単元・47か所が「つくる会」の教科書からの盗作だったのだ!
コメント
コメントを書く(ID:29343578)
自民党の嘘のひどさに、怒りよりもゾッとします。この程度の小細工で切り抜けられるという考えが、田中芳樹の小説の悪者政治家のようで、気持ちが悪い。
HKT劇場にいらしてたんですね。そういう日に行きたかったです。「暴走する妖精軍団」、実に的を射た表現だと思います。今後はHKTを、そのように紹介していきます(笑)。
(ID:6310207)
更新お疲れ様です。
「J-ファイル」っていう呼称が、なんだか僕の好きなアメリカのSFドラマ「X-ファイル」のパクリみたいでピンときません。誰だかが「Trust me(私を信じて)」と発言した時、その「X-ファイル」に登場する、主人公に政府の陰謀をリークする男が
「Trust no one(誰も信じるな)」
と言って息絶える場面を思い出してしまいました。
ほんとに、原発にしても何にしても、「冗談じゃない」という言葉がどれだけ的確な言い回しなのかを痛感させられます。
(ID:18084514)
「大人は嘘つきだ」という定番の言葉がありますが、安倍自民党や八木氏のしたことはそれを超える
詐欺です。そんな人達が推進しようとしてるのは道徳教育の名を借りた騙しのテクニックのようにしか
思えません。
「青年ジェット」でどんな狂気が描かれているのか、ドキドキ半分、ワクワク半分で気になります。