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第288号 2018.10.9発行

「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしの人たち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…今年3月に靖国神社の宮司に就任したばかりの小堀邦夫が、天皇陛下に全く筋違いの罵倒を浴びせていたという事実が発覚した。靖国神社のトップでありながら「靖国とは何か」ということを一切理解しておらず、天皇皇后両陛下がライフワークとしてこられた戦没者慰霊の旅を非難し、さらに暴言の矛先は皇太子ご夫妻にまで向けられたのだ。こんなネトウヨ宮司をトップに据えていて、靖国神社は大丈夫なのか!?
※「泉美木蘭のトンデモ見聞録」…ハラスメントの認定は過激になるばかりだ。セクハラ、パワハラ、マタハラ・イクハラ、アカハラ、ヌーハラ、エアハラ、カラハラ、スイハラ、スメハラ、ゼクハラ、ブラハラ、ペトハラ…わけのわからない「ハラスメント」が多々あり、なかには、人権問題として弁護士が法的根拠をもとに対策を解説しているものもある。果たして、そのハラスメント、本当に「嫌がらせ」ですか??
※『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて、一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてくり!」。ぽっくん、閻魔大王と一対一で向き合っとりましゅ!エンマしゃん、そんなに睨まんでクリ!ぽっくん、全く善良なお子しゃんでしゅよ。ウソなんかついたことありましぇん!

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【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第296回「不敬!靖国宮司」
2. しゃべらせてクリ!・第245回「見逃してクリ閻魔しゃん! ぽっくん嘘ついたことありましぇん!の巻〈後編〉」
3. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第100回「それ、傷つくところじゃないですよ!~ハラスメント編」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記




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第296回「不敬!靖国宮司」

 ありとあらゆるところで人間の「劣化」が進んでいるとしか思えないような事態が起きているが、よりによって靖国神社トップの宮司が「靖国とは何か」ということを一切理解しておらず、天皇陛下に全く筋違いの罵倒を浴びせていたという事実が出てきたのには、さすがにあきれ果てた。

 週刊ポスト10月12・19日号が報じ、ネットに音声も公開したが、宮司は高圧的な口調でこう発言している。
「陛下が一生懸命、慰霊の旅をすればするほど靖国神社は遠ざかっていくんだよ。そう思わん? どこを慰霊の旅で訪れようが、そこには御霊はないだろう?遺骨はあっても。違う?(中略)
 はっきり言えば、今上陛下は靖国神社を潰そうとしてるんだよ。わかるか?」

 天皇皇后両陛下がライフワークとしてこられた戦没者慰霊の旅を、あろうことか、靖国神社を潰すための行為だとして非難しているのだ。
 発言した宮司の小堀邦夫は今年3月に宮司に就任したばかりで、来年の靖国神社創立150年に向け、これからの靖国神社がどうあるべきかを考えるとして「教学研究委員会」なるものを組織し、6月20日に靖国神社の社務所会議室でその第1回会議を開き、神社幹部10人が出席した。
 問題の発言はその会議におけるものであり、単なる放言ではなく、「これからの靖国神社がどうあるべきか」に関する、小堀の確たる持論であることは間違いない。
 だが、小堀の持論は完全に狂っている。

 靖国に祀られているのは戦闘に参加して亡くなった軍人・軍属などであり、靖国神社は国のために命を捧げた人々のみたまを「英霊」として「顕彰」する場である。
 だが、天皇皇后両陛下が戦地を訪れて行ったことは「顕彰」ではなく、「慰霊」である。そして、その対象は軍人・軍属だけではない。
 例えばサイパンでは、追い詰められた在留邦人が崖から次々海に身を投じて死んでいる。中には、幼子を抱えて飛び降りた母親もいる。
 そのみたまは、靖国には祀られていない。だからこそ、天皇陛下は、その人たちの霊を慰めるためには現地へ赴かなければならなかったのだ。
 天皇は日本人だけの安寧を願っているのではなく、全世界の平和を祈る存在であり、陛下は慰霊の旅では日本人の霊だけではなく、敵兵の霊も、巻き込まれた現地人の霊も慰めておられる。
 これは、天皇陛下にしかできないことだ。しかも、こうして両陛下が戦地を訪れて慰霊をなさることで、若い世代が戦争のことを知るきっかけにもなる。
 靖国神社と、両陛下の戦没者慰霊の旅は、全く性質の異なるものである。
 ところが小堀は、靖国神社が何のためにあるかも知らず、両陛下の慰霊の旅が「靖国潰し」であるなどと邪推して、罵倒したのである。
 こんな馬鹿に、靖国神社宮司の資格があるわけがない。

 しかも小堀は続けて、皇太子ご夫妻まで罵倒している。
「あと半年すればわかるよ。もし、御在位中に一度も親拝(天皇が参拝すること)なさらなかったら、今の皇太子さんが新帝に就かれて参拝されるか? 新しく皇后になる彼女は神社神道大嫌いだよ。来るか?」
 もはや「殿下」の敬称すらつけていない。しかも、雅子妃殿下が「神社神道大嫌い」というのは一切根拠がなく、これは完全なネトウヨのデマである。
 この宮司、ほとんどネトウヨだと思って間違いない。そしてネトウヨと同様に、皇太子殿下と雅子妃殿下が大嫌いなのだ。間違いなく男系絶対も唱えているのだろう。

 そのうえ小堀は、天皇陛下のご譲位について、こう言っている。