プロレスラーの壮絶な生き様を語るコラムが大好評! 元『週刊ゴング』編集長小佐野景浩の「プロレス歴史発見」――。今回のテーマは高山善廣です! イラストレーター・アカツキ@buchosenさんによる昭和プロレスあるある4コマ漫画「味のプロレス」出張版付きでお届けします!
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――今月のテーマは「帝王」こと高山善廣選手についてお伺いします!
小佐野 彼の試合をよく見るようになったのはゴールデン・カップスからですね。
――Uインター時代の高山さんが安生洋二や山本喧一と組んでいたユニットですね。
小佐野 Uインターの経営が大変だったから外貨を稼いでいたんだろうけど、ゴールデン・カップスは天龍(源一郎)さんのWARや、石川(孝志)さんの東京プロレスに上がるようになったでしょ。初めはUインターの選手だからUWF志向だと思ってたんですよ。そうしたら頭が凄く柔らかい人で。だって冬木軍との抗争は生卵や生ダコなんかまで使ってるわけだからね(笑)。
――ハハハハハハ!
小佐野 アレはくだらなかったなあ(笑)。本人は当時を振り返って「イヤなときもあったけど、勉強だと思っていた」と言っていたけど、「U系の選手なのにこういうことができる人なんだ」という感想はあったよね。
――高山さんはゴールデン・カップスでUスタイル以外のプロレスに触れることができたんですね。
小佐野 彼らはイス攻撃なんかやったことないでしょ。ヤマケンが「イス大王」の栗栖(正伸)さんのことをイスでぶっ叩いたら、栗栖さんがもの凄くキレるというね(笑)。
――「イス大王」にイス攻撃って怖いもの知らずですよ(笑)。
小佐野 やったことないからイスの使い方がしょっぱかったんだと思う。「テメエ、ナメるなよ!!(怒)」って非常にマズイ状況になって。
――ひえ〜。
小佐野 東京プロレスって銀座のスコッチバンクというお店で打ち上げをやってたんですけど、その場でヤマケンが栗栖さんに「すいませんでした!」って謝ったんです。栗栖さんも「いいのいいの。しょうがないね。俺も大人気なかったよ」ってのことでノーサイド。
――いい話ですね(笑)。
小佐野 そうやっていろんなことをおぼえていくわけだけど、リーダーの安生の存在も大きかったよね。安生は新人の頃は新日本プロレスにいたし、プロレス的センスを持っていたから。高山やヤマケンは安生の姿を見て勉強したところもあったと思う。「こうすればお客が喜ぶ、ここまでやってありなんだ」とか。それで冬木軍と絡むわけでしょ?
――これも勉強のしがいがありますねぇ。
小佐野 冬木軍はもの凄く考えて試合をやってたから。ちょっと上から目線な言い方になっちゃうけど、冬木軍と絡んだら「プロレスとはこういうものなんだ」と理解できるんじゃないかなって気がした。先々どうなるかはわからないけど、この人たちがプロレスラーとしてやっていくのであればゴールデン・カップスはありなんだろうなと。頭の中身を広げるというか、幅を広げる訓練の場所だったんじゃないかな。あのときの経験があったから「帝王・高山善廣」があるような気がする。
――UWFインター消滅後はキングダムに移籍しますが、そのキングダムもなくなります。その後の判断がプロレスラーとしての運命を大きく変えていきますね。
小佐野 新たな主戦場に全日本プロレスを選んだのは彼のセンスですよね。あそこでもし新日本を選んでいたら、その後の人生は大きく違っていたよ。
――高山さんは新日本も選べたんですか?
小佐野 本人に聞いたら「新日本に行きたいと言えば行けたと思う」と。そこは鈴木健さん(元UWFインター取締役)と永島さん(勝司、元新日本プロレス取締役)の関係があったから。
――対抗戦のときから繋がりがありましたもんね。
小佐野 「あのときの新日本に行ったらnWoに入れられたんじゃないか。そうしたら蝶野さんの子分で終わっていた」と。高山はUインターの神宮球場大会で全日本の川田(利明)と試合をしたでしょ。
――「鎖国主義」だった当時の全日本がU系団体に選手を派遣したことはビッグニュースでしたね。試合も凄かったですし。
小佐野 だったら川田のいる全日本に行ったほうがインパクトがあるんじゃないか、存在価値があるんじゃないかと考えたそうです。新日本のnWoだと蝶野、天山(広吉)の次に据えられるし。あの頃の蝶野人気はダントツだったから追い抜くのはなかなか難しい。
――それに新日本には対抗戦のときに上がってますから、そこまでの新鮮さはないですよね。
小佐野 全日本の場合は初参戦だし、全日本ファンなら川田との試合を知ってるから「あの高山がリベンジで殴り込んできた!」となる。フリー参戦だから大物外国人のような雰囲気で乗り込んでいけるんですよ。
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