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井上明人『中心をもたない、現象としてのゲームについて』第22回リアル異世界物語と、ゲーム的想像力:九井諒子、橙乃ままれ、なろう小説 前編<番外編>

2017/12/13 07:00 投稿

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ゲーム研究者の井上明人さんが、〈遊び〉の原理の追求から〈ゲーム〉という概念の本質を問う「中心をもたない、現象としてのゲームについて」。これまでゲームについて語ってきた井上さんが、番外編としてゲームに強く影響を受けている近年の小説について、ジャンル別に分類/分析します。

学習論における物語とゲームの話が終わったところで、小休止をはさみたい。というか、はさませてほしい。

そういうわけで(?)、今回は唐突だが番外編として、「異世界転生もの」とか「なろう小説」と呼ばれるあたりの作品について一度まとめて語っておきたい。

今までの話と何の関係があるのかと戸惑う読者もおられるだろうが、ただ、小休止的な回なので、そこらへんは今回、ちょっとゆるいのだが、関係はある。最近のこの手の物語というのが、ほとんどが「ゲーム」っぽい世界設定(ないし、ゲームそのもの)をベースにしているからだ。10年前であれば、ノベルゲームに見られる一群の特殊なリアリティ水準を指して東浩紀が「ゲーム的リアリズム」と呼んだものが、現在ではノベルゲームではなく、「小説家になろう」に投稿される異世界転生もののなかで展開されているからである。そして、この領域において卓越した作品が、この10年ぐらいの間に数多く登場している。

筆者が対象としたいのは厳密には異世界転生そのものを扱った物語というよりは、橙乃ままれ作品や九井諒子作品などを含めた異世界のリアリティ水準を問うものだ。なので「異世界転生もの」「なろう小説」というより少し対象を広げて、勝手に「リアル異世界物語」とこれらの物語群のことを名付けたい。その基準は次のとおりである。

i.異世界について描いた物語であり、かつ
ii.我々の現代世界において起こりうる問題が異世界においてどのように生じうるか、を中心的なテーマとして扱った作品群を扱いたい。

ただ、これだけだと『銀河英雄伝説』などの少し古い作品も入ってきてしまうので、とくにここ10年ぐらいで登場した作品群の特徴として

iii.勇者や魔王のいる世界を前提として描いているもの

という三つの前提を挙げたい。

今回は、これらの基準を満たしたここ10年ぐらいに登場した重要な作品だと筆者が考えるものを紹介していく、という内容にしたい。


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