2015年12月12日に開催された対局を各卓ごとにレポートします。今回はC卓です。
この卓の注目雀士は、先日最高位を獲得した近藤である。タイトル獲得もそうだが、その勝ちっぷり、そして「負ける気がしない」という自信あふれるコメントである。独特と言われる押し退きをどこで見せるのだろうか?
東1局は親の魚谷がドラのをトイツにしたバック仕掛けで主導権を握るも魚谷1人テンパイで流局。その1本場もドラが役牌の。お互いに警戒しつつの構えを取り、重い場となって近藤の1人テンパイで流局した。
この対局、初アガリを決めたのは江崎だった。
魚谷との2軒リーチに競り勝ってのアガリ。このアガリをきっかけに、江崎は親で爆発したいところ。全日本プロ代表決定戦では親の連荘が優勝の決め手になっているだけに、次の親は何かが起こりそうだった。
だが、続く親番はリーチをかけるも流局。続く1本場では近藤の意外な(?)リーチが飛び出した。
カンに取るかカンに取るか。近藤の選択は前者。そしてリーチをかけた。いわゆるペンカン待ちである。確かに場を見ると魚谷がを1枚ずつ、そして江崎がを1枚捨てている。つまり近藤からみるともも3枚ずつ見えの状況だ。さらにが2枚見えということは、仮にやで使われていたとしても自体は最大1枚しか使われていないということになる。いや、そもそもソーズの下(~)が激安の状況なのだから、は2枚とも山にいる可能性が高い。おそらく近藤はそういうことを意識していたのではないか。
この待ちを親の江崎が一発で掴んだ。
いったんは現物ので放銃を回避した江崎だが、自身の手がツモり四暗刻のイーシャンテンというチャンス手では止めるべくもない。2巡後にをツモったところでを捨てて放銃となった。
東4局はトップ目の近藤が待ちのリーチで畳みかける。
近藤の手牌 ドラ
だが、このリーチに魚谷が追いつく。
近藤は3メン待ちとはいえドラ表示牌のを2枚使っている分、待ち枚数は魚谷がやや有利。この局は魚谷がをツモって満貫。トップめで東場を折り返した。
それにしても片山が非常におとなしい。
東場はたしかに手が入っていなかった。ただ、行けそうな手牌でも早めに手じまいしていた局もあった。ラス親ということもあり、序盤の致命傷を避け南場で勝負を賭けるつもりなのだろう。
南2局、1本場。片山の手が四暗刻のイーシャンテン。だが、その前には江崎の456の三色のリーチ、さらに親の近藤の追っかけリーチに挟まれた。
片山はのポンテンを入れて反撃するも、近藤が江崎に安目の放銃で決着。
拮抗した状況のまま迎えた南3局。ついに近藤の凄い一打が飛び出した。
西家・近藤の3巡目。皆さんならここで何を切るだろうか? トイツが3組・暗刻1組で縦寄りの手牌である。ストレートにを捨てる人もいるだろうが、これらを重ねてのトイトイも魅力的なので残す選択もある。などは意外と多いかもしれない。ドラ表示牌であり重なりにくく、待ちになっても悪い。あと、打とする人も多いだろう。だが、ここで近藤が捨てたのはだった。これは思い切りトイツ手寄りの選択といえる。
次巡、近藤はを重ねたところでトイツ手に確定させ打。直後に出たをポンしてを捨てた。
との間に手出しのを挟んでいることで、相手にしてみれば近藤の手中にはかが存在しているように思えなくもない。その後、すぐにが鳴けてあっという間に待ちのトイトイに仕上がった。
さらに、近藤はを明槓、を暗槓し相手に圧力をかけていく。メンゼン3人にとって、槓ドラが2つあるという絶好の機会にもかかわらず近藤に押し返せる打ち手はいなかった。完全に近藤の1人舞台である。
ただ、こうなると出アガリはなく、近藤もツモるしかない。特にトイトイに刺さる可能性のあるション牌などは絶対に出ないからだ。ただ、いわゆる通常の捨て牌と違って、トイツ手の場合、序盤に切られた牌の隣(いわゆる裏スジで、近いほうの牌)は通りやすいという特徴がある。
たとえば、近藤は序盤にを手出ししているが、こういうときにが手中にあるケースはまれだ。途中で引いたを手に残し、その単騎になっているか、あるいはさらにを重ねてシャンポンになる可能性はあるが、近藤の仕掛け出しから実質3フーロとなる暗槓まで手出しは1回しかなかったからである。
江崎が近藤の仕掛けに対し、を捨てることができたのはそういう理由があるからである。
ただ、近藤の仕掛けに対し、唯一手牌を崩していなかったのが魚谷である。
槓ドラのを重ねた魚谷。かを捨てればイーシャンテンだ。魚谷からは4枚見えていて、近藤にのリャンメン待ちは否定できる。ただはともにション牌だ。ここで近藤の切り出しを思い出してほしい。近藤は3巡目に打、そして手出しのを挟んで打である。
先ほどの江崎がを通した理屈でいえば、このからが手にある可能性はほとんどない。のリャンメン待ちは既に否定されている。したがって、魚谷としてはテンパイしたときにかを勝負するかはその時考えるとして、とりあえず捨てのイーシャンテンは維持できると考えた。この接戦で、安易にノーテン罰符を渡したくない。その魚谷のシビアな姿勢が今回は仇となってしまった。
・トイトイの80符で満貫のアガリを決めた近藤がオーラス、トップ目に立った。
オーラス。トップをまくられた魚谷だが、6400以上をアガれば再逆転できる。その魚谷にぴったりの手がきた。
チートイツ・ドラ2のイーシャンテン。ドラは待ちになってもOKなので、1巡でも早くテンパイすることが肝心だ。ここで手が止まる魚谷が選んだのはだった。だが、次巡すぐにがカブり、さらに4巡目にドラのを引いてしまった。いや、これでテンパイなのだが、2巡目に打かを選択していればこのオーラスは4巡目にケリがついていたのである。
ここから魚谷の単騎探しの旅が始まる。
一旦、単騎に受けた魚谷は、片山の手出しを見て、直後に引いたに待ち変え。これは片山のペンチャン整理を狙ったものだ。
さらに次はを引き、に待ち変え。親の現物は常に狙いごろだからだ。
そして魚谷は絶好のを引く。
これも片山の現物。さらに片山・近藤が1枚ずつを捨てているため、この両者からが出てくる可能性は非常に高い。これは賭ける価値の高い牌だ。実際には山に2枚生きていて、しかもこの牌を止める人はいない。いよいよ決着かと思われた。
が、ここに親の片山がリーチ。
ツモなら裏ドラ1枚でミッションクリア。今までの我慢はこのリーチのためにあった。そんな感じのある力を込めたリーチである。
さらに片山のリーチ棒が出たことで江崎の条件も「のみ手でもツモならOK」に変化。
何とか追いつこうと食いタンで発進した。仕掛けて愚形残りのイーシャンテンだが、指をくわえて見ているわけにはいかない。
3人がトップに向かってあと1牌まで迫っている。アガリトップで暗刻を手にした近藤も当然戦いに加わる…かと思われた。
近藤の手はイーシャンテン。片山の満ツモ条件があるだけでなく、江崎も食い仕掛けで応戦している。だが、ここから近藤はの暗刻を崩してオリた。これには驚いた。流局まではまだ8巡ある。その間にアガられれば対局が終わってしまう可能性が高いにも関わらずである。自分の手もイーシャンテンなら戦う、散るを覚悟で戦う道を選ぶ人が多いのではないだろうか。だが、近藤は我慢した。自分の手がアガリになるより、危険牌を捨てればそこで決着してしまう可能性の方が高いと考えたのである。
結果、片山のアガリはなく、魚谷の単騎待ちの絵が合うこともなく、江崎のツモアガリもなく流局した。オーラス1本場は近藤は役牌のトイツを手に食い仕掛けに出た。1巡目から裏目のある選択が連続する手牌だったが、ノーミスで仕上げた近藤がC卓の勝ち上がりを決めた。
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