3時間を超える激闘にようやくケリがついた。対局者、解説陣だけでなくこの対局に携わった人たち全てが疲れ切っていた。ただ、中央に立つ勝者だけは晴れやかな表情をしていた。最強戦に挑むこと4回の36歳会社員・稲波崇(最強戦リーグ)が今年のアマチュアの頂点に立ったのである。
優勝直後の稲波(中央)
あと1回トップを取れば全国の頂点に立てる。だが、そんな気合いは起家のRAINのロケットスタートで早くも萎みそうになっていた。東1局で6本場まで連荘したRAINは2着に36300点差をつけたのである。
東1局とはいえ、ギャラリーの間にはワンサイドゲームの雰囲気が漂う。だが、対局者たちはここまできてそう簡単に諦めるわけにはいかない。
東1局6本場、南家の稲波に反撃のチャンスが訪れた。
この後、稲波はトップ・RAINとの点差を徐々に詰めていき、南1局のハネ満ツモで遂にトップをひっくり返した。さらに続く親番でもアガリを重ねた稲波の持ち点は8万点を突破。ファイナルも目前である。
稲波「吉田プロからはプロになるとどのように生活が変わるかや、プロ活動を続ける事の厳しさを聞いたりしていました」
就職後はリアル麻雀にも取り組むようになった稲波。日曜日は朝11時~閉店までノーレートで打つか、プロ協会主催の大会に参加するなど、日曜日を麻雀に充てる日々となる。そこで麻雀最強戦のことを知り、4年前から出場。だが、店舗予選の決勝まで進んだのは一度きり、それ以外は全く芽が出なかった。
ところが今年、麻雀最強戦ルールで打てる『オクタゴン』がオープン。秋葉原なら仕事の定期券でいける。ここで腕を磨いた稲波は、最強戦リーグで優勝を果たし、今回の出場権を勝ち取ったのである。
稲波「最初は夢心地状態でした。帰りに松崎真也さん(今回、西東京最強位として2回目の出場を果たす)が出た舞台に立てると実感し、涙が出ましたね」
稲波は現担ぎのため、本番2週間前に神田明神で必勝祈願のお参りをし、おみくじで「願望が思いのままなり」と書かれた大吉を引きあてる。また、最強戦リーグ優勝時と同じ服を着て、今回の対局に臨んだのである。
だが、親の熊澤が驚異的な粘りを見せて徐々に点差を詰める。
山場は南4局4本場に訪れた。10巡目、親の熊澤がドラ1の手でカン待ちの先制リーチ。これに対し、稲波は役なしテンパイを入れて追いついた。
ただ親リーに立ち向かうには待ちが悪い。が、稲波はを横に曲げ勝負に出たのである。
稲波「脇から出る可能性もあると踏んでのリーチでした。特にRAINさんが役満ツモ条件なので、国士なら振込む可能性があったので」
が、そのRAINが本当に国士をテンパってしまったのである。
待ちは稲波が暗刻の。稲波がツモなら暗槓で逃げられるので直撃はないが、ツモなら大逆転だ。まさかの展開にギャラリーは大いに沸いた。
だが、熊澤の追撃もここまで。戦いは6本場まで長引いたが、最後は稲波が自力で決め、ファイナル行きの切符を勝ち取った。
表彰式の後、稲波のメールやツイッターには、MJで知り合った吉田プロをはじめ最強戦で知り合った仲間たちから数多くの祝福が寄せられていた。
稲波「ファイナルでも今回同様2回ともトップを取る気持ちで臨みます。ラブライブでμ'sがドーム公演出来たように、私も最強戦という夢の舞台で対局が出来るわけですから!」
いかにもゲーム好きらしい言葉で稲波は意気込みを語った。きっと今回と同じ勝負服でやってくるに違いない。来月はいよいよ決戦。果たして今年の最強位の栄冠は誰の手に渡るのか!?
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