麻雀最強戦ファイナルで繰り広げられた激闘を紹介!
続く東2局1本場11巡目。ピンフドラ1でリーチをかけ、先にテンパイしていた時岡から一発で討ち取る。
2局連続の親満、振り込んだのはいずれも時岡である。最初の放銃はイーシャンテンから、1本場での放銃はテンパイしていたが役なしドラ1の形だ。
東2局1本場 南家・時岡の手牌
ツモ ドラ
この放銃はたしかに攻め過ぎと言われても仕方ない。
だが、時岡は今までこういう牌を押し切って全国アマチュア最強位となり、さらにこの決勝卓に進んできたのである。実際、予選C卓でも、時岡は鈴木たろうに散々捕まりまくってハコ寸前のところから勝ち上がってきた。それが時岡の麻雀であり、だからこの2局の放銃に対しても私は全く違和感を持たなかった。ただ、この放銃で心理的ダメージを負い、後の打牌に影響しないかどうかが心配だった。だが、後の戦いぶりを見る限りそれは杞憂だった。その後も、普段どおりの時岡の麻雀を打っていて安心した。時岡がこの対局中に考えていたことについては、お正月発売に近代麻雀にて、作家の金子達仁さんが執筆する記事で紹介されることになっている。非常に興味深く、楽しみである。
さて、結果から言えば、藤田がこの3発のアガリで最強位の座に就いたといっても過言ではない。
要因は色々あるが、まずは森下・小林のプロ2人にあまりに手が入らなかったことが大きい。藤田・時岡に主導権を握られる多かったのも確かだが、そうでないときも終盤までテンパイしづらい局が多かった。点数的には2万点前後で推移していた両者だったが、とにかくアガリに絡むことが少なかった。オーラス、準決勝ではあれだけテンパイを入れまくっていた小林が何とノーテン親流れで終了したことも、この半荘でいかに手が動かなかったことを象徴しているかに思えた。藤田以外で手になったのは時岡だが、いかんせん最初の失点が大きく、アガっても大きく挽回することはできなかった。
優勝した藤田だが、リードしてからも集中力を切らさずミスがなかったことも大きい。藤田は、「調子が良いときは一切手を緩めません。好調が途切れる原因の多くは『自分のポカミス』です。少しの気の緩みで余計なことをしてガタガタと崩れ、流れが止まる。これは麻雀も経営も同じです」ということを口にしている。よってリードを広げた後も、普段どおりよく攻め・よく守っていた。逆にリードしたのが序盤だっただけに、そこからずっと集中しどおしで疲れかたも半端なかったはずだ。
個人的に興味深かったのが2局ある。
まず、東3局の北家でこの形。
ここで藤田は1枚目のをポンしなかったが、ここは動く人もそれなりにいそうである。雀鬼も1鳴きを推奨していた。だが、藤田はある程度ゴールまで見込める形になるまでは動かないイメージが強い。D卓時の観戦記でも書いたが、1鳴きしないことで「いざという時の安全牌+その牌の警戒レベルを下げる(待ちになったときに出やすい)」という効果を狙っているように思える。
私はこういう打ち方が「今年の藤田を象徴する打法」のような気がしている。どうしてそう思ったか? ちょっと話が横道に逸れることをお許しいただきたい。私が近代麻雀の記事で藤田のインタビューをしたのが今年の5月末である。近代麻雀に記事が掲載され、さらに最強戦に出場を決めてから藤田の麻雀熱が一気に高まったのだろう。過去の出場者の打ち筋をみるためにDVDを見て、またモンドTVにも加入して麻雀プロリーグも視聴したとか。その熱は、著名人代表決定戦雷神編で優勝してからますます高まった。最近の技術を知るために多くの戦術書を読み漁った。藤田のブログによると、「家で奥さんに「受験生みたいね」とまで言われました」というほどである。
だが、麻雀で新しい打ち方を試した人で、すんなり成績向上できたという人は私は知らない。藤田も例外なく不調に陥ったそうである。だが、藤田は調子を取り戻し、最強戦ファイナルに間に合わせることに成功した。
話を元に戻そう。を見送った藤田だが、すぐにを引いて暗刻にした。そしてをポンし、ドラのを重ねてテンパイ。さすがにこれに飛び込む打ち手はおらず流局したが、このテンパイ形を見せられた時岡・森下は藤田の好調ぶりを実感し、プレッシャーを感じたに違いない。ただ小林だけ飄々と「ツモられなくて良かった。はい、次次」と思ったか?
もう1つ興味深かったのが南1局である。
北家・小林がをアンカンしてリーチ。
ツモ 打でリーチ
待ちでもリーチをかけなかったぐらいなので、できるだけアガれそうな待ちに変えたかった小林だが、ヤミテンを続けて他家の手が進むのも具合が悪い。待ちが決して良いわけではないが、渋々リーチをかけたというところだろう。
本人としては色々不満はあるが、リーチによって相手にかかる圧力は高い。特にトップ目の藤田は、ラス親の小林へは飛び込みたくないはずである。だが、リーチ後に出たをポンして戦いを挑んでいった。
この後、時岡からも追っかけリーチはかかるが藤田は意に介さず攻め返す。こういう部分はむしろ以前の藤田、つまり雀鬼流をベースにした攻撃麻雀なのかな、と思える。と、同時に、「今、自分が好調なのだから、中途半端にオリてアガリを逃したほうが流れを失う」と考えたのかもしれない。
結果は藤田が小林にで放銃したが、裏ドラも乗らず1600点の失点で済んだ。これを見て、藤田はやはり真っ直ぐ攻めて良かった、と思っただろう。
麻雀最強戦2014を締めくくるファイナル決勝卓。各卓の対局が予想以上の長丁場だったため、決勝戦の開始時刻は20時30分を越えていた。A卓で勝ち上がりを決めた森下剛任はさぞかし待ちくたびれたのではないだろうか? だが、森下は全日本プロ代表決定戦でも今回同様、準決勝から決勝まで長時間待っていたので、逆に縁起が良いと考えていたかもしれない。決勝卓はその森下と、小林剛、時岡史明、藤田晋の4名の組み合わせとなった。
東1局。南家・藤田の手牌にいきなり大物手の気配が漂う形になった。
四暗刻の手変わりがあるので当然ヤミテン。ゲスト解説の雀鬼・桜井章一さんは、
桜井「四暗刻アガれっと言っておいたんですよ」
とコメント。本当に決まってしまいそうな感じはあったが、この局は北家・小林がを捨て、6400点のアガリとなった。私はこの決勝を控え室のモニターで見ていた。私のいた控え室には、片山まさゆき先生の『スーパーヅガン』に登場する尾沢竹書房のモデルになっている尾沢さんもいらっしゃっていて、このファイナルをずっと観戦していたが、
尾沢「小林くんとかが後ろから追っかけるほうが面白くなるよね」
と言っていた。視聴者の優勝者予想は5割オーバー、そしてラス親となった小林。これにより小林が大本命となった決勝戦だが、その小林が最初に放銃したことで俄然、レースが面白くなったとみた人は多いだろう。
だが、そのレースはいきなり藤田の独走態勢となった。先行した藤田が続く親で2局連続、満貫を決めたのである。
東2局3巡目。東家の藤田がドラ2丁使いのピンフでリーチ。これを時岡からロン。
東1局。南家・藤田の手牌にいきなり大物手の気配が漂う形になった。
四暗刻の手変わりがあるので当然ヤミテン。ゲスト解説の雀鬼・桜井章一さんは、
桜井「四暗刻アガれっと言っておいたんですよ」
とコメント。本当に決まってしまいそうな感じはあったが、この局は北家・小林がを捨て、6400点のアガリとなった。私はこの決勝を控え室のモニターで見ていた。私のいた控え室には、片山まさゆき先生の『スーパーヅガン』に登場する尾沢竹書房のモデルになっている尾沢さんもいらっしゃっていて、このファイナルをずっと観戦していたが、
尾沢「小林くんとかが後ろから追っかけるほうが面白くなるよね」
と言っていた。視聴者の優勝者予想は5割オーバー、そしてラス親となった小林。これにより小林が大本命となった決勝戦だが、その小林が最初に放銃したことで俄然、レースが面白くなったとみた人は多いだろう。
だが、そのレースはいきなり藤田の独走態勢となった。先行した藤田が続く親で2局連続、満貫を決めたのである。
東2局3巡目。東家の藤田がドラ2丁使いのピンフでリーチ。これを時岡からロン。
続く東2局1本場11巡目。ピンフドラ1でリーチをかけ、先にテンパイしていた時岡から一発で討ち取る。
2局連続の親満、振り込んだのはいずれも時岡である。最初の放銃はイーシャンテンから、1本場での放銃はテンパイしていたが役なしドラ1の形だ。
東2局1本場 南家・時岡の手牌
ツモ ドラ
この放銃はたしかに攻め過ぎと言われても仕方ない。
だが、時岡は今までこういう牌を押し切って全国アマチュア最強位となり、さらにこの決勝卓に進んできたのである。実際、予選C卓でも、時岡は鈴木たろうに散々捕まりまくってハコ寸前のところから勝ち上がってきた。それが時岡の麻雀であり、だからこの2局の放銃に対しても私は全く違和感を持たなかった。ただ、この放銃で心理的ダメージを負い、後の打牌に影響しないかどうかが心配だった。だが、後の戦いぶりを見る限りそれは杞憂だった。その後も、普段どおりの時岡の麻雀を打っていて安心した。時岡がこの対局中に考えていたことについては、お正月発売に近代麻雀にて、作家の金子達仁さんが執筆する記事で紹介されることになっている。非常に興味深く、楽しみである。
さて、結果から言えば、藤田がこの3発のアガリで最強位の座に就いたといっても過言ではない。
要因は色々あるが、まずは森下・小林のプロ2人にあまりに手が入らなかったことが大きい。藤田・時岡に主導権を握られる多かったのも確かだが、そうでないときも終盤までテンパイしづらい局が多かった。点数的には2万点前後で推移していた両者だったが、とにかくアガリに絡むことが少なかった。オーラス、準決勝ではあれだけテンパイを入れまくっていた小林が何とノーテン親流れで終了したことも、この半荘でいかに手が動かなかったことを象徴しているかに思えた。藤田以外で手になったのは時岡だが、いかんせん最初の失点が大きく、アガっても大きく挽回することはできなかった。
優勝した藤田だが、リードしてからも集中力を切らさずミスがなかったことも大きい。藤田は、「調子が良いときは一切手を緩めません。好調が途切れる原因の多くは『自分のポカミス』です。少しの気の緩みで余計なことをしてガタガタと崩れ、流れが止まる。これは麻雀も経営も同じです」ということを口にしている。よってリードを広げた後も、普段どおりよく攻め・よく守っていた。逆にリードしたのが序盤だっただけに、そこからずっと集中しどおしで疲れかたも半端なかったはずだ。
個人的に興味深かったのが2局ある。
まず、東3局の北家でこの形。
ここで藤田は1枚目のをポンしなかったが、ここは動く人もそれなりにいそうである。雀鬼も1鳴きを推奨していた。だが、藤田はある程度ゴールまで見込める形になるまでは動かないイメージが強い。D卓時の観戦記でも書いたが、1鳴きしないことで「いざという時の安全牌+その牌の警戒レベルを下げる(待ちになったときに出やすい)」という効果を狙っているように思える。
私はこういう打ち方が「今年の藤田を象徴する打法」のような気がしている。どうしてそう思ったか? ちょっと話が横道に逸れることをお許しいただきたい。私が近代麻雀の記事で藤田のインタビューをしたのが今年の5月末である。近代麻雀に記事が掲載され、さらに最強戦に出場を決めてから藤田の麻雀熱が一気に高まったのだろう。過去の出場者の打ち筋をみるためにDVDを見て、またモンドTVにも加入して麻雀プロリーグも視聴したとか。その熱は、著名人代表決定戦雷神編で優勝してからますます高まった。最近の技術を知るために多くの戦術書を読み漁った。藤田のブログによると、「家で奥さんに「受験生みたいね」とまで言われました」というほどである。
だが、麻雀で新しい打ち方を試した人で、すんなり成績向上できたという人は私は知らない。藤田も例外なく不調に陥ったそうである。だが、藤田は調子を取り戻し、最強戦ファイナルに間に合わせることに成功した。
話を元に戻そう。を見送った藤田だが、すぐにを引いて暗刻にした。そしてをポンし、ドラのを重ねてテンパイ。さすがにこれに飛び込む打ち手はおらず流局したが、このテンパイ形を見せられた時岡・森下は藤田の好調ぶりを実感し、プレッシャーを感じたに違いない。ただ小林だけ飄々と「ツモられなくて良かった。はい、次次」と思ったか?
もう1つ興味深かったのが南1局である。
北家・小林がをアンカンしてリーチ。
ツモ 打でリーチ
待ちでもリーチをかけなかったぐらいなので、できるだけアガれそうな待ちに変えたかった小林だが、ヤミテンを続けて他家の手が進むのも具合が悪い。待ちが決して良いわけではないが、渋々リーチをかけたというところだろう。
本人としては色々不満はあるが、リーチによって相手にかかる圧力は高い。特にトップ目の藤田は、ラス親の小林へは飛び込みたくないはずである。だが、リーチ後に出たをポンして戦いを挑んでいった。
この後、時岡からも追っかけリーチはかかるが藤田は意に介さず攻め返す。こういう部分はむしろ以前の藤田、つまり雀鬼流をベースにした攻撃麻雀なのかな、と思える。と、同時に、「今、自分が好調なのだから、中途半端にオリてアガリを逃したほうが流れを失う」と考えたのかもしれない。
結果は藤田が小林にで放銃したが、裏ドラも乗らず1600点の失点で済んだ。これを見て、藤田はやはり真っ直ぐ攻めて良かった、と思っただろう。
以上が私の興味を惹いた2局である。これを見た上で藤田の麻雀を表現するなら、「雀鬼流ベースの攻撃麻雀と最新戦術のハイブリッド」だと思った。最強位に就いたことで、今後は藤田の麻雀を見る機会も増えるだろう(ちなみにフジテレビ『THEわれめDEポン』の出演依頼もあったとか)し、場合によってゲスト解説として自身の麻雀観を聞くことができるかもしれない。この最強戦チャンネルでも随時紹介していくのでお楽しみに!
さて、以上5回にわたってお届けした最強戦2014ファイナルの観戦記。来週より、この対局に参加した選手へのインタビューをまとめて記事にする予定である。できるだけ多くの選手の声を届けられるように頑張っていきたいと思う。
さて、以上5回にわたってお届けした最強戦2014ファイナルの観戦記。来週より、この対局に参加した選手へのインタビューをまとめて記事にする予定である。できるだけ多くの選手の声を届けられるように頑張っていきたいと思う。
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