この半荘では藤田の字牌への対応が興味深かった。微妙な形のときは一枚目の役牌は見送り、トイツのまま手中に残す。その字牌を受けに使うこともあれば、アガリ役としてフィニッシュにすることもある。相手からしてみればション牌より1枚切れの字牌だと当然警戒度も下がる分、跡付けも決まりやすい。この辺りの特徴を上手く活用しているような打ち方が何度か見られた。このテンパイは一手変わりチャンタもあり、ツモ次第ではての出アガリも利く。手役の芽に敏感でその判断が早いことも藤田の持ち味である。
皆さんならここで何を切るか? 自分は456の三色をみてのツモ切りだ。ピンズの上はドラ受けだけに絞り、ソーズのくっつきも残しておきたい。しかし沢崎は切り。次巡、を暗刻にして待ちリーチをかけたが、このリーチは掛けられない人が多いのではないかと思う。
だが、この局も沢崎はアガりきることはできなかった。寿人が粘って678の三色のテンパイを入れ、2人テンパイで流局。自分がリーチをかけても1人テンパイにならない展開に最強位はどう思っていただろう?
この後、を払って安全度の高い牌を残して相手の攻撃に備える構えを取る藤田。
解説の桜井さんも「仕掛けたときこそスリムに」という発言していたことや、B卓での小林の対応(仕掛けた後に安全牌を残すというくだり)なども見たこともあり、あらためて仕掛ける場合はアガリと守りの両方をみることが大事なのだということがよく分かる構えである。
この局は寿人がタンヤオの待ちでリーチ、これを井上がドラの単騎待ちで追っかけたが寿人の待ちのを掴んで放銃。5200は5500のアガリとなり寿人がトップ目にたった。
東4局1本場。親の藤田が789の三色を狙えるチャンス手。を引いて打としたところだが、打牌までの決断がもの凄く早い。TS視聴が可能な方は、ぜひこのスピードをご覧いただきたい。藤田がいかに手役に敏感で、ツモるまでの間に準備をしているかがわかるはずだ。
次巡、藤田はを引いて即リーチをかけた。高目でアガりたいところ。
だが、寿人が次の手からドラを重ねてテンパイ。
東4局1本場 南家・寿人の手牌
ツモ 打 ドラ
当然の追っかけリーチだが、宣言牌のが藤田の安目。この放銃について解説の桜井さんは
桜井「悪い放銃じゃないことは事実だね」
とコメントした。
を残してテンパイを崩したのはドラの引きを期待したからだろう。だが、次にを引いたところで今度はリーチをかける。この感覚が面白い。私は、「先に捨てたがいい展開を生む(場に多く出てが出やすくなる)ことを期待したのか?」とも思ったが、ここで桜井さんは、
桜井「最初カンでツモったからそこらへんを意識しているのかな?」
なるほど。あくまで私のイメージだが、たしかに沢崎さんはそういうことを言いそうな気がしなくもない。この辺りは後日取材をして確認してみたいところである。
東4局2本場 東家・藤田の手牌
ツモ
は藤田の役牌でション牌。とはいえ、ここは切りが素直な一打であろう。だが、藤田は打でカンのターツを払っていったのだ。の重なりにも期待しつつ、チャンタやマンズのホンイツまで意識したのだろう。ただ、直後に出たを藤田は一鳴きはしなかった。この辺りは、前述した「受けとの兼ね合い」の選択なのかもしれない(この辺りの思考については、後日取材を行い、1月15日発売の近代麻雀に掲載予定)。
が、この残しとスルーが絶妙だった。
を暗刻にして、のシャンポン待ちでリーチ。1枚目を見送ったの出にも期待できる。このリーチに対し、純チャンのイーシャンテンの井上は無スジを押していくがテンパイまで至らず。藤田、ツモで1300・2600。これでトップになる。
南3局1本場、トップには微差で寿人が立っていた。その寿人がポンで親流しに出る。
決して好形ではないが、じっとしていたら沢崎の連荘や藤田のまくりを待つばかりである。寿人は厳しいが自力で蹴りをつけにいく道を選択した。
だが、最強位は順調なツモであっという間にテンパイ。
南3局1本場 東家・沢崎の手牌
ツモ ドラ
当然のリーチである。だが、寿人はこのリーチにも怯まず強気で押し返す。現物のもポンしてペンのテンパイで勝負を挑んだ。
南3局1本場 西家・寿人の手牌
ドラ
親のない寿人はここで沢崎に飛び込んだら致命傷になる可能性もある。その立場で現物のをポンするだけでなく、ドラそばのペンという愚形で前に出るのである。普通に考えれば損な選択であろう。だが、その執念が功を奏した。沢崎がを掴み、リードを広げてオーラスを迎えたのである。これで沢崎はハネツモ条件と苦しくなった。寿人にとっては、2000オール条件の藤田の親を蹴るだけである。
南4局 西家・井上の手牌 ドラ
だが、ここで沢崎の技が生きた。いつリーチがかかってもおかしくない藤田が延々とツモ切りを繰り返している。ノーテン親流れを恐れた沢崎はイーシャンテンを維持しつつ寿人の現物のを切った。
当然、藤田はこれをチー。形式テンパイが入り、最悪の親流れだけは避けられた。結果的にはここでを切らなくても藤田の次のツモはだったのでテンパイは入るのだが、ここは沢崎のマムシの一打が光った。
さて、この鳴きによりチャンスがめぐってきたのが井上だ。藤田のチーによって西家の井上がハイテイのツモ番になる。その1巡前にリーチをかけて一発でツモれば「リーチ・一発・ツモ・ハイテイ・メンホン・一通・ピンフ・ドラ」、キッチリ3倍満になる条件が整ったのだ。
この配牌が最後はメンホンテンパイとなる。寿人も待ちリーチをかけ、二人のめくり合いとなった。ここで競り勝ったのがメンホンの藤田。トップ寿人を逆転し、アガリ止めでゲーム終了。決勝卓4番目の椅子を勝ち取ったのである。
南4局1本場 東家・藤田の手牌
ツモ ドラ
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