<スプリンターズS:追い切り>

 快速ハクサンムーン(牡6、西園)がスプリンターズS(G1、芝1200メートル、4日=中山)の調教チャンピオンだ! 閉門直前の栗東坂路で珍しく左ムチを連打され、4ハロン51秒7-12秒4をマーク。気合のみなぎる走りに迷わずS評価をつけた。

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坂路を軽快に駆け上がるハクサンムーン(撮影・梅根麻紀)

 他馬を嫌がるハクサンムーンはいつも通り馬影が少ない閉門直前の坂路で追い切られた。9月30日の坂路はかなり時計が出やすいコンディションだったが、さすがにこの時間帯は馬場が荒れ力が必要。実は、こんな時の方が動きの良しあしを判断しやすい。軽い馬場だと、ほとんどの馬の動きが良く見えてしまうのだ。

 結果的にハクサンムーンは他馬に踏み荒らされた坂路で4ハロン51秒7と抜群の動き。スプリンターズSの追い切りチャンピオンとした。

 ラスト1ハロン手前。鞍上の田中助手は両手でいっぱいに手綱を押し始めた。さらに残り100メートルからは左ムチを連打。見守った西園師が「気持ちを入れるための叱咤(しった)なんだよ」と説明。同馬の追い切りでムチが入るのは珍しく、今春の高松宮記念以来約半年ぶり。その前は2年以上も入れられていなかった。これに奮い立ち、素晴らしく勢いのある走りを見せたハクサンムーン。全身を激しく、それでいて柔らかく使いラスト2ハロン24秒3-12秒4。「本当にいい動き」と師は満足げだった。

 前走のセントウルSの追い切りも抜群に良かった。「状態は良かったんだよ」と師は振り返る。だが、レースでは持ち前のダッシュ力を披露できず2番手から失速(8着)。気持ちが乗らなかったのか、この馬らしくない走りだった。常に調教に騎乗する田中助手は「セントウルSの結果が良ければ、今日もムチを入れることはなかった」という。だが、何か変化をつける必要があったからこそ6発のステッキが飛んだ。

 今春の高松宮記念では2着だったが「間違いなく春よりも秋の方が体調がいい馬」と担当の桜井助手。現在の毛づやや筋肉の張りを見れば、絶好の仕上がりなのが分かる。届きそうで届かないG1奪取へ、実績馬が変わり身を見せそうだ。【岡本光男】