なんか007の新作のサブタイトルみたいですよね。「Grow or Die」って。
この言葉、つい先日ユニクロの社長さんが仰ったそう。
世界中に店舗展開しているユニクロの全社員の賃金体系を統一し、社員間での競争を煽ることで国際競争に打ち克つ社員を育てることが目的とのこと。つまり、高収入を得たければ、むちゃくちゃ努力しなくちゃいけませんよってことです。当然国内だけじゃなくて、アメリカやヨーロッパやバングラデシュの社員たちにも負けないくらい頑張らなくてはなりません。
グローバルな競争に安息などない。そこは常在戦場で「Grow or Die」つまり「成長か、さもなければ死か」と言っているわけです。
グロウオアダイ:タイ目クロダイ科に分類される。ほとんど休まずに働き続け、別名でブラックキギョとも呼ばれる。ということではありません。
ユニクロに関する過去の報道やら噂も相俟って、ツイッターやネットでは、この「Grow or Die」発言はかなり否定的に捉えられています。
この発言に拒否反応を示しているのは「グローバル企業と国家」とか、「グローバル競争における企業戦略」といった考え方に対する批判というよりも(もちろんこういう意見もありますけど)、情緒的な部分での拒絶反応がまずあるような気がします。
働くって、そんなに無味乾燥なものじゃないでしょ。
家族を養い、自己実現を果たし、社会に少なからず貢献する、それが働くってことじゃないのか。
お金だけが目的なんて、ちょっと寂しすぎないか。みたいなことです。
「そういう悠長な考えが、日本の国際競争力を削ぎ落としているんだ。夢や希望を語れるのはある程度裕福で余裕があるからで、まずは戦いに勝利しなくちゃ話しにならんだろ。世界で戦って勝利を納めることは半端な覚悟や努力じゃ無理だ」と、ヒートテックを着ていても寒くなるくらい、冷たくこの社長さんに一蹴されそう。
で、このニュースを見ていて思い出したのが、レスリングの五輪落選危機の件です。日本を含め、レスリング界のロビー活動が足りなかったことが、この危機の要因とされています。
「世界中の競技関係者が、オリンピックの正式種目にするために熱心な活動をしている。国際社会での交渉力やロビー活動がレスリング界にも、日本にも不足していて、今の地位に安閑としていたから、こんなことになったんだ」みたいな意見が多数を占めていたと思います。
グローバル企業の話しとスポーツの話しを一緒にするのは乱暴なことと承知の上ですが、「グローバル化における日本」というテーマで見てみると、この二つの反応は矛盾しているように見えます。
一方では世界マーケットでの過酷な競争には嫌悪感を示し、もう一方では世界を相手にしたときには、もっとしたたかにならなきゃ、と言っている。
「世界では阿吽の呼吸など通用しない。YES、NOをはっきり言わなくてはならない」と言っていた都知事ですら、ご自身の発言が世界に向けて発信されているという自覚が希薄だということが明白になった。これは「ついうっかり」とか「脇が甘い」という話しではなく、この聡明な人ですら「グローバル」や「対世界」という言葉が、実体や実感を伴っていなかった、ということの証左のような気がします。いわんや私含めた普通の人たちにおいては、矛盾したり、両極端に振れる反応を示してしまったりするのは、極めて普通のことなんでしょう。きっと。
話しの流れ的には、ここで世界マーケットにおける格闘技、みたいな感じになりそうですが、都知事ばりに他イベントの悪口を言って私の真意が伝わっていない、いや撤回・謝罪します的なことになりそうなので、自粛して今週の本を紹介しましょう。
「七帝柔道記/増田俊也」です。
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