「熱海殺人事件」味方良介くんを観た。

味方くんの木村伝兵衛がとてもよく似合っていてもう一度見たくなる芝居だった。

つかさんが生きていたら、彼の見得を切るさまが自信に満ちあふれていて晴れがましく、凛々しく優しくてそのカッコよさを見事だと褒めてくれただろう。

 

偉そうで尊大な警視庁の警部から女泣かせの色男へ、犯人を蹴飛ばし殴りつけ叩きつけ、一瞬でカラダ翻し不倫相手の部下の女刑事を抱き寄せ甘えてみせる、その切れよく変わる身のこなしと表情の崩れ方が、何ともつかさん芝居のスピード感に乗っていてかっこいい。

若さの勢いも彼に味方してる、表情の下に表れる肌のみずみずしさまで明りに照らされて輝いて見える。この芝居に絶対に必要な「けれん」たっぷりなのだ。つかさんが言いたかっただろう、光り輝く部分があって初めて見える影の暗闇まで、見せてくれた。

 

彼の高校時代の友人から聞いた話では、全校生徒のあこがれの的だったそうで、頭ごなしの学校に反抗し、真っ先に突っかかる破れかぶれの正義感、目立って目立って誰も知らぬ生徒がいなかったという伝説を聞いた。そうした、彼のまだ短い人生の中に木村伝兵衛に通ずる何かがあったこともこの役にはまった所以かもしれない。

 

願わくば、このまま役者人生を突っ走ってもらいたい、そのうちもっと深く他人の人生語れるドスの効いた得難い役者になってくれる気がする。

 

終演後、誘って新宿駅前アサヒのビアホール、

身近なお客さんに挨拶で遅れてくる彼がいない間は、演出のたくさん入るおかずの中身がつかさん芝居の本質を見えにくくしてる、なんて注文つけてて、

彼が来てからは、一つだけダメ出しはしたけど面と向かって全面的に褒めたら、僕がトイレ行ってる間に勘定済ませてくれた味方くん、ありがとう、また飲もう。