2015/08/05
9:44 am
詠舞台「蟲師」のDVDが本日、東映ビデオから発売される。
今年の3月に青山スパイラルホールで行われたこの公演は、
漫画・アニメ「蟲師」の7つのエピソードを
アニメのギンコの声を担当した中野裕斗さんをはじめとして
土井美加・小林愛さんのレギュラー陣とそれぞれのエピソードの声優さんたちが、
舞台の紗幕やオオホリに映し出される背景映像と
会場内にプロジェクションマッピングされる蟲のうごきなどの映像の中で、
役者が自ら動きながら朗読するという
今まで日本では試みられたことにない新たな演劇だった。
僕もエピソード三つばかり観劇したが、
今までになかなか味わえなかった漫画・アニメとの一体化がほぼできていて心地よかった。
空間が出来ていること、
アニメと同じ声がイメージを湧き立たせてくれること
動きのテンポ感のゆっくりさ加減、
蟲師の世界がたぶんそうなのであろう暗さの加減、
どこをとっても蟲師の世界が緻密に再現されていた。
蟲師世界が好きな人にはああ、ここが蟲師世界なんだと納得できたはずだ。
漫画が生み出しアニメがきちんと再現したこの世とあの世の中間にあるという不思議な蟲師の空間が、
そのまま現実の物理的空間に再現されていたと言ってよいと思う。
この舞台、僕は製作には何も関わっていない。
ただ、僕の中では「蟲師」の舞台を作る発想はTVアニメ「蟲師」を放送していたころらからあり、
自分で企画書を書き長濱監督や関係者と何度も話し合い、
実現に向かって動いたが、とある事情があって出来なかった。
ただ、この発想は、アニメのDVD発売イベントをただの販促イベントにはせず、
DVDの購入者にもう一度「蟲師」を味わってもらいたいと、
舞台制作の手法を生かした「蟲の宴」として、
販促イベントを一つの演劇的作品にするという挑戦として実現した。
その典型が東京のシアターモリエールでの「蟲の宴」だった。
このモリエールのイベントの体験が今回の詠舞台「蟲師」企画の、多分、原型になったのだろう。
僕としては舞台として成立させられなかったことが「蟲師」でやり残したことの一つだったが、
今回の舞台がフィールズさんの好意により実現され、
長年の胸のつかえが下りてとてもうれしかった。
ところが舞台がDVDにならないという話を聞き、
そこだけでもお手伝いしようと余計なおせっかいだったかもしれないけど、
東映ビデオさんにお願いし、DVDが実現した。
このDVD、実は実際に舞台で観ることと異なった映像が楽しめる、
というとんでもない仕掛けが演出さんによってなされている。
プロジェクションマッピングで投影された映像がDVDの上ではひとつ画面に構成されていて、
会場では見ることが出来なかった役者が映像の中にいる感覚が味わえるのだ。
まさにこんな映像が漫画アニメと舞台との一体化には必要だ、という新たな試みが成功している。
是非、舞台を観れなかった方も観た方も、この貴重品のDVD を買ってください、お願いします。
この作品を自分の手元に映像として残すことでたぶん一生「蟲師」を語れます。
12,000円(税別)とやや高いかもしれないけど
歴史的な価値と「蟲師」世界の再現性は保証します、
と言っても僕の保証は何の役にも立たないけど。