2015/01/26
11:06 pm
「SAMURAI 7」を観た。
矢崎広くん、古川雄大くん、永山たかしくんが出演で
上島雪夫演出、佐橋俊彦音楽なので観に行く前から楽しみにしていった。
とっても面白かった。
文句なくミュージカルになっていたし、ドラマはもちろん黒沢明監督で、
多少脚色はしていたけど骨格は変えていなくて、
あらゆる面でしっかり作られていて何も言うことがないくらい面白かった。
矢崎くんの役、映画では木村功さんの演じた若者役だ。
実社会の経験のない若者が厳しい体験を通じたくましく大人になっていく様を、
頼りなさげな表情がよく似合い、
その表情がエピローグではやさしさ身に着けた逞しい若者に変わっていく、
その過程がすんなり入ってくる。
作り上げたキャラクタイメージに向かって演技を仕上げたのだろう、
きちんと7人の中に調和して真ん中に存在していた。
根が真面目な矢崎くんぴったり出来ていて素晴らしい。
古川くん、似合う、どうしてこういうニヒルな役がこんなに似合うのだろう。
派手なロングスカートのような真っ赤な衣装、前から本人にも言っているのだけど、
彼の場合は、派手にすればするほど本人の風貌と相乗効果が出て、
際立って存在が濃くなる。
今回は、動きもセリフも極端に抑える役どころで、
そういうキャラクターを豪華絢爛な衣装に身を包みややうつむき加減な姿勢に終始し、
時々びしっとセリフを吐く、かっこいい。
2幕後半市瀬秀和くんの野盗の侍頭との決戦場面の殺陣が秀逸だった。
剣さばきの名手いっちーの繰り出すこれでもかという目にも止まらない剣,剣、剣。
ユウタはその剣に両手の剣で対抗するのだけど、
市瀬くんの剣のスピードと違うリズム感の殺陣にしていた。
正確なリズムにやや遅れて刻む彼のいつものダンスと同じく、
殺陣でも彼の体と剣は一呼吸遅れて動く、
そこにスピード豊かな市瀬くんの剣が合わせてくる、
この二人でなくては成り立たない殺陣でこんな殺陣、観たことない、決まった。
永山くん、ここも、なんであんなにまじめな大人をきちんと出来るのだろう。
この役永山くんに当て書きしたのかというくらいぴったり。
ものごとを分かっていて、でも出しゃばらず、わきまえて行動する、
ここぞというところでは身を犠牲にしてでも皆を救う、
表情はあくまでやさしく、ピンチにも驚かず、
まるでいつもの永山くんを見ているみたい、なんというはまり役だろう。
上島演出にいつも感じることだけど、場面が美しい。
音楽とのマッチが素晴らしくここぞとばかりミュージカルを感じさせてくれる。
役者の動き、ステージングに無駄がなくスムーズで気持ちがよい。
この舞台、映画のストーリーを追いかける必要からだろうとても転換が多い。
暗転も音楽の入りを先出ししたり、それもそういう場面が何回かあるのだけど、
暗い中、鳴り出す音楽のリズムを変えて目先というか耳先に変化をつけたり、
掃ける役者にピンだけ当てて周りを先に暗くしてその時間に裏を動かしたり、
洞窟の中が道具を反転するだけで、真逆の洞窟の外になったり
(これってテニスのネット動かして視点を変えるのと同じ構造)
1幕の20分経過後ぐらいってふつうは舞台がダレかけるところなのだけど、
そういうところに何でここにダンスというのようなダンスシーンを入れ、
しかもそのダンスが飛びっきり上等な技を持った役者にダンス躍らせて場を熱くさせる、
ここ僕は観ていてほんとに気持ち動いて拍手してしまったら同調者数十人いてショウストップ、
殺陣の作りも含めきちんと計算して作っているのだろう、
普段会話しているとここまで緻密な人にはとても見えない。
舞台になると綺麗で華麗なミュージカルが出来上がる。
音楽も佐橋ってやっぱり耳に心地よいメロディをたくさんたくさん出してくれる、
彼の音楽を聴いているとそれだけでココロ癒される。
その音楽が上島さんとの演出になると場面にぴったりぴったり合って舞台が躍動する。
見ていてああ、ミュージカルだ、って思ってココロうきうきする。
ぼーっとしたあまり繊細な人には見えないあの風貌から、
あの才能が湧き出るなんて、友達でいて良かった。
終演後、別所哲也くんと面談し、
ミュージカル「GANKUTUOH」、アニメ「龍虎の剣」以来の握手、
20年ぶりの会話が懐かしかった。
「レミゼ」も観たし、何度か楽屋を訪ねようかとも思ったのだけど、
彼の成長もこの舞台で確認できてうれしかった。
古川くん、矢崎くん、永山くんを励まし、上島さんに褒めたいから付き合ってくれと、
楽屋から連れ出し、天王洲で飲み始め、そこに市瀬秀和くんが合流し盛り上がった。
素直に褒めるだけの舞台の後はお酒がおいしい。
品川駅前に流れ、ガンガン飲みまくり、なにか無理やり言えと言われ、
お百姓さんたちの衣装が新しく汚れていないのは、貧しい人たちに見えない、
と恐ろしく些末なことしか言えなかった。
そしたらウエッシーいわく、自分としてはもう少しどこかに笑える場所を作りたかった、と自白した。
そう、優れた作り手は満足しない。
出来上がったものに足りなかった点が、記憶に残る。
そういうところも上島さん素晴らしい、深夜の飲み会午前3時まで。