片岡義朗ブログ

再掲「東京バーグ」富田麻帆・加古臨王くん2010/10/08@青山某レストラン

2016/10/20 04:23 投稿

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2010/10/16

9:48 pm

加古臨王くん、富田麻帆さんが出演している「東京バーグ」をちょっと前だけど観て来た。
青山のレストランを借り切り臨時の芝居小屋にするという風変わりな舞台だった。

芝居は、悪魔に願い事をすると、代償に何か一つ差し出さなければならない、
殺人の依頼も受けるが、それが受理されたら願った人は過去の記憶一切を取り去られることになる、
という設定で、そこに男と女の3角関係を交錯させようというやや複雑なストーリーの舞台だった。
悪魔への願い事というアイディアは「ファウスト」以来、古くからある伝統的なものだろう。
この舞台では、お互いに好きなのにそのことに気がつかない男と女の物語。
自分の好きな女性のほんとに好きな男は自分ではなく事故死した友人だと誤解した男が、
彼女への愛の証しとして悪魔にその友人を生き返らせる願いごとをしてしまい、
自分はすべての記憶を消されてしまう。
生き返った男も、その男の記憶をよみがえらせる代償にもう一度、死んでゆく、
と言う悲喜劇になっていて、アイディアは悪くない。
二人の思い違いの錯綜、どんでんがえしの連続で悪魔ものの範疇ではそれなりに新しい物語になっていた。
ただ、好き合う男女がどうして好きになったか、
男と友人の友情がどういうものだったか、
事故死した友人と女との関係がどうだったか、
など肝心の3人の人間関係が掘り下げられようなエピソードが入っていなくて、なぜそうなったかが分かりにくい。

但し、劇場ではなく、レストランで演劇を公演するという試みは褒めたい。
昔、ニューヨークで観た「タマラ」と言う推理劇を思い出した。
NYのど真ん中には今や珍しくなった欧風の大きな2階建ての1軒屋があり、
物語はその家の各部屋を使い、建物全体を劇場にして進行する。
初めは1階の食堂に観客と出演者全員が集合し食事をする、
おおよそみなが食べ終わったころ、突然、女性の悲鳴とともに演劇が始まる。
出演者たちはさーっといくつかのグループに分かれて散っていく。
観客も目当ての出演者について行き、分散する。
観客は、たとえば2階の寝室にいった出演者について寝室に入る。
他の出演者が1階のリビングルームに行ったとすると、
その出演者を見たいと思った観客は、リビングルームに入っていく。
途中で出演者たちも交錯するし、観客も最初とは違った出演者について行くこともできる。
出演者全員が何を語り、どのように過ごしているか、一人の観客には見えていない部分までは分からない
エピローグでは始まった時と同じ部屋に出演者観客が全員集まり物語は解き明かされる。
食事代も込みの120ドルかな、当時にしてはかなり高いチケット代だったような気がする。

この「タマラ」は初演後、熱狂的に称賛され、このスタイルの演劇は「タマラ」スタイルと呼ばれるようになった。
80年代に日本でもホテルの宴会場等でミステリーツァー等と銘打って
似たようなパフォーマンスがいくつか行われたが、そのうち廃れてしまった。

終演後、劇団「円盤ライダー」の主宰に見える人に、
面白かったし演劇スタイルが気に入ったので「タマラ」のことをお話した。
僕なりに「タマラ」を説明しどこか適当な会場が見つかったら、
「タマラ」風をやってみたらどうですか、とお勧めしたら乗り気になってくれたみたいだった。

一つの演劇スタイルを創り出すのはとても難しい、と言うか演劇の長―い歴史を思うと殆ど絶望的だ。
せっかく出来上がった「タマラ」スタイルを追求する演劇集団がいなくなってはさみしい。
この劇団は、劇場公演はしないことを標榜していると聞いた。
だったら「タマラ」とはものすごく近いところにあるはずだ。
次回公演では、良い1軒屋を見つけ、この劇団なりの「タマラ」を観せてほしい。

実はそんなことはどうでもよいほど、この公演の白眉は他にある。
何と言ってもハッピーエンドのウエディングシーン、
富田麻帆さんが白のドレス姿に衣装を替えて戻ってきたときだろう。
両肩むき出し、ストラップなし、背中丸出し、まぶしい、目が吸い寄せられる、かわいい、色っぽい、
ほんの目の前50㎝に麻帆ちゃんのふくよかな胸元が………。

  • コメント(2)

    2010/11/08

    cl.gifガジラ こんにちは。 「タマラスタイル」っていう演出は、とてもおもしろそうですね。 演劇素人のわたしは初めて聞く言葉なのですが、想像しただけで面白そうです。 (一軒家を使って、と読んで、アメリカのホームドラマ「フルハウス」しか出てきませんでした。あれが大好きだったんです・・・!) 緊迫したシーンで息を殺して見ていれば、観客もそのシーンの一部になったようにその場に馴染んでいくのでしょうか。 近くで見られる分、緊張感や感動が、より身近に感じられそうですね。 普段から読書が、特にミステリー物が好きなので、役者さんに合わせて移動していく推理劇なんて、自分が事件の渦中にいるようにドキドキしそうです。 富田さんのような美女が近くにいたら別の意味でドキドキしそうですが・・・ いいにおいがしそう・・・ 削除

    2010/11/12

    cl.gif片岡義朗 ガジラさん、今晩は。お便りありがとう。「タマラ」は1982年に観たのですが、とても強く印象に残っています。ほんとに劇の中に自分が入り込んでしまっている感じがしました。「東京バーグ」でもかなり近い感じは出ていました。麻帆ちゃんへのドキドキ感と芝居のドキドキ感、結構お得な芝居でした。ガジラさんが東京にお住まいかどうかわかりませんが、次回のこの劇団の公演、お勧めします。たぶん推理劇のような気がします。 削除

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