阿部一二三は金メダルが確定した瞬間から一礼をしてインタビューブースに入るまでほとんど発汗しておらず、インタビューの途中から滝のような発汗が始まり、インタビュー内容が固いものからリラックスしたものにソフトランディングする辺りでバケツで水をかぶったかのような大量の発汗を始めた。

 

 僕は性的には一番狭いヘテロセクシュアルだが、阿部のこの発汗のあり方には性的な興奮を覚えた。発汗フェチとかではない。卑近も甚だしい例で申し訳ないが、僕が壊死性リンパ結節園で臨死体験をした時、発熱が41度を超えると、肌がパサパサにまでなる。動脈(静脈ではない)に解熱剤を注射すると、1時間で36度になる。37度まではパサパサのままだ。36度になった瞬間、ベッドの上でバケツから水をかぶったかのような発汗があり、そのたび僕は失神した。また、性行為の中でオルガスムスの後まで汗腺が完全に閉じてしまう女性を何人か覚えている。彼女たちは皆オルガスムスの効果が激しく、しかし汗腺が閉じてしまうので、オルガスムスに向けて、肌がサラサラになる。絶頂を迎えた直後から、リラックスタイムに向けて水をかぶったように汗が噴き出す

 

 この代謝システムに関して、僕は畏敬の念のようなものをもっている。命がけのことなのだ。命がけのことが終わったのだ。