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橘宏樹『現役官僚の滞英日記』第2回 : 君臨するか、受け止めるか、教え方のスタイル ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.195 ☆

2014/11/06 07:00 投稿

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橘宏樹『現役官僚の滞英日記』
第2回「君臨するか、受け止めるか、教え方のスタイル」
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2014.11.6 vol.195

今日の「ほぼ惑」は、現役官僚の橘宏樹(仮名)さんによる 新連載「現役官僚の滞英日記」の第2回目となります。 今回のテーマは「教育」。 無料公開部分では、イギリスの大学の授業の様子を、 有料公開部分では、英語論文についての考察や、 イギリスと日本の教育の比較について論じています。 イギリスで学んでいるからこそ見えた、日本の大学教育の意外な強みとは――!?

▼橘宏樹による『現役官僚の滞英日記』
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前回までの連載はこちらから
 
▼プロフィール
橘 宏樹(たちばな・ひろき)
官庁勤務。2014年夏より2年間、政府派遣により英国留学中。官庁勤務のかたわら、NPO法人ZESDA
http://zesda.jp/
等の活動にも参加。趣味はアニメ鑑賞。ピアノ。サッカー。等。
 
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▲繁華街の路上。旧植民地独立運動の英雄は人気があります
 
 
こんにちは。橘です。みなさまいかがお過ごしでしょうか。イギリスの大学は概ね10月に新学期が始まります。今回は、学問や教育のスタイルについて、僕が今通っている大学と、日本の大学の教育スタイルを比べながら、感じたことを書いてみたいと思います。
 
 
■授業の雰囲気
 
僕がこちらで所属しているクラスは30人ほどで、7割位が3~4年の社会人経験のある20代後半、2割位が学部から直接進学してきた20代前半の学生です。欧米・南アジア・ラテン系の若者は本当に大人っぽく見えますので、キャプテン翼のロベルト本郷みたいな面構えをしていても「25歳です」ということがあります。

近年、英米の有名大学院では半分が中国人留学生場合も少なくないのですが、僕のコースでは中国人は1名(学部卒女性)だけでした。日本人も僕の他に学部卒女性1名だけです。そのほかブラジル、ドイツ、インド、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ペルーなどの国々から2~3名ずつ、イスラエル、フランス、ネパール、オーストリア、韓国、ガーナといった国々から1名ずつという構成です。アフリカ系・中国系が少なく太平洋やカリブの島嶼国の方々はおられないものの、国籍間のバランスがとれたクラスになりました。担当の教授陣はドイツ・アメリカ・イギリス出身です。

肝心の授業の中味ですが、僕は社会科学系のコースに所属しています。例えば「公共経営論」という授業を履修すると、一週間に講義が60分一コマ、学生同士で議論を行うゼミ演習が90分一コマあり、それぞれのコマで事前に読んでこなくてはならない論文や書籍が指定されます。一コマあたり英文30~50頁くらいのもの15点が必読文献、そのほかに読了が望ましい文献が20点ほど指定されます。

ほとんどの文献は電子化されていて大学のIDがあればパソコンで読めるようになっています。ですから、「誰かに借りられていて読めませんでした」といった言い訳は通用しません。一部電子化されていない書籍も図書館にコピーがたくさん置いてあります。たいていの学生は1週間で5~6コマ履修しています。1学期は10週間、2学期にわたる科目ならば20週間あります。その間に指定されたすべての文献が試験範囲となります。到底精読していられませんので、「スマート・リーディング」と言って、要約文やパラグラフの冒頭の文を重視して、要点だけをかいつまんで理解する速読法が推奨されます。その上、それぞれの授業で4週間に一度、2500ワードの小論文の課題が出ます。教授の講義も内容がぎっしり詰まっています。早口でスライドも飛ぶように流れていきます。実は、東京での勤務中はいつもバタバタと走り回っていたので、講義中机にじっと座っていられるか心配だったのですが、無用の気遣いでした。毎回あっという間に講義が終わってしまう感覚です。講義スライドは後から共有されるとはいえ、教授は事前に指定した文献を読んでいる事を前提に、特定の理論を批判したり、それに自分が付加価値を見出していたりする点を主に話します。文献を読んでいないと、理解が追いつかなくなってしまいます。

本当に、すべての生徒が必須文献を読んで授業に出席しているのかどうかは分からないにしても、びっしりと席についた、賢そうなメガネ外国人たちが、みなマックブックを出してカタカタと猛烈な勢いでメモをとっている様には、さすがに圧倒されます。ゼミ演習の時間も、間断なく学生の発言が飛び交い、教室中の頭や視線が発言者を追って一斉に目まぐるしく動くなか、僕自身も間隙を突いて発言するようにしていますが、僕の発言が終るか終わらないかのうちに他の生徒の発言が被さってきます。
 
 
学力の「フェア」な評価とは
 
ひとつ、イギリスの大学の成績評価のことで少し驚いたことがあります。もちろん授業は始まったばかりで僕自身は成績評価を受けたことはないのですが、それぞれの講座のシラバスには、例えば、試験100%、試験60%とエッセイ40%、プレゼン20%とエッセイ80%などというように成績評価の方法が示されているのです。
 
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▲講義開始直前。多種多様な面持ちの学生たち
 
学生は、選択授業を登録する際、自分の得手不得手や、試験期間の繁閑を調整するために、これらをよく考えて選択します。そこで気がついたのは、ほとんどの科目、少なくとも社会科学系のあらゆる分野では、試験とエッセイでしか成績が評価されないということです。極まれに、プレゼンが評価に換算されるものがある程度でした。

僕はこれを非常に意外に思いました。なぜなら、僕の渡英前のイメージでは、まず、ゼミ演習中での発言が成績評価上重視されていて、知的刺激の交換に貢献している、少なくとも毎回一度は発言しているようでないと良い成績がもらえない、とか、学生たちは綺麗なパワーポイントでTEDのような面白いプレゼンを次々に展開していて、素晴らしいプレゼンが評価される、「そのなかでサバイバルしなくちゃいけないんだろうな。どうしよう……。」という具合に、発言やプレゼンが重視されているイメージを持っていたからです。
 

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