デビッド・O・ラッセル監督『世界にひとつのプレイブック』
原作/マシュー・クイック 監督/デビッド・O・ラッセル 製作/ドナ・ジグリオッティ、ブルース・コーエン、ジョナサン・ゴードン
出演/ブラッドリー・クーパー、ジェニファー・ローレンス、ロバート・デ・ニーロ、クリス・タッカー、ジャッキー・ウィーバー
妻の浮気が原因で心のバランスを崩したパットは、仕事も家も失い、両親とともに実家暮らし。いつか妻とよりを戻そうと奮闘していたある日、事故で夫を亡くして心に傷を抱えた女性ティファニーに出会う。愛らしい容姿とは裏腹に、過激な発言と突飛な行動を繰り返すティファニーに振り回されるパットだったが……。
☆☆☆☆☆ 屈折した知性派監督のわかり易い「標準化」
☆☆
【森直人:7点】
監督のデヴィッド・O・ラッセルは、元々いわゆる「屈折した知性」で損をするタイプの典型と言え、その極にあったのが衒学性に彩られたコメディ『ハッカビーズ』だった。しかし前作『ザ・ファイター』で自分の資質を飼い慣らすコツをつかんだのか、今回は「標準化」の作業を巧く行っている。スティーヴィー・ワンダーの名曲『マイ・シェリー・アモール』のキャッチーな使い方、役者の達者さ、ルーティンに収束させる話法。賞レース対応型の秀作。
☆☆☆☆☆ 佳作だが特異点はない
☆
【松谷創一郎:6点】
傷を癒し合うイタい男女を面白やさしく描いているラブコメ。佳作ではあるが、特異点は見当たらない。もちろんラブコメとしては十分な出来だが、結局ふたりは美男美女。それは映画だからこそのウソではあるが、結局そこがイタさを中和しようとする欺瞞に感じられる。キャストのふたりのどちらかがブサイクであれば、説得力が出たのだが。ジェニファー・ローレンスは良かったが、ブラッドリー・クーパーのメソッド演技は過剰すぎた。
☆☆☆☆☆ もはやインディペンデントの特権ではない
☆
【那須千里:6点】
自意識過剰なサブカル男子の映画『モテキ』(11)を東宝メジャーが配給した感じに似ている。『リトル・ミス・サンシャイン』(06)『アナザー・ハッピー・デイ』(12)など主にインディペンデント系の得意分野だった「病んだ大人の迷走劇」を、オスカーノミネートレベルのポップ度まで軟化させた成功例。ヒロインのJ・ローレンスは可愛いか否かで意見が二分しそうな、キルスティン・ダンストの路線でいけるのではと思う。
▼2/22公開!『世界にひとつのプレイブック』公式サイト
http://playbook.gaga.ne.jp/
▼執筆者プロフィール
森直人
1971年生まれ。映画評論家、ライター。
著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)など。
http://morinao.blog.so-net.ne.jp
松谷創一郎
1974年生まれ。ライター、リサーチャー。
著書に『ギャルと不思議ちゃん論 女の子たちの三十年戦争』(原書房)など。
http://d.hatena.ne.jp/TRiCKFiSH
https://twitter.com/TRiCKPuSH
那須千里
映画文筆業。
「クイック・ジャパン」(太田出版)、「キネマ旬報」等の雑誌にて執筆。
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