数年前、彼女らは最強戦のアシスタントとして女流プロ代表決定戦の戦いを間近で見るだけでなく、アマ最強戦の予選で全国を飛び回っていた。が、今回は選手としてその舞台に立つ。他の配信対局にもしばしば顔を出す2人だが、今回はそれとは違った緊張感で臨んでいたはずだ。
予選A卓は、菅原・豊後葵・和久津晶・清水の組み合わせ。
菅原以外はザ・攻め屋という言葉がピッタリの打ち手だ。解説の荒正義プロをして「この3人に囲まれたくないよね。勝手にボンボンやり合って、自分の出番が回ってこないよ」と言わしめるほどである。
だが、いざ対局では和久津・清水になかなか決定打が出ないまま東場が進む。抜け出したのは菅原。3人のハードパンチが飛んでくる前に、コツコツとジャブを決め、気が付けば圧倒的リードを築いていた。
その菅原に大物手が入った。
菅原「その前にポンテンや役なしドラ1の愚形テンパイも放棄した上で、を引いての最高形になりました。すでに2人がを捨てていて、ヤミテンなら特に仕掛けている和久津さんからアガれる可能性は高いでしょう。ただ、ヤミの間に他の人にアガられてこの勝負手をかわされるほうが精神的に堪える。リーチで相手に負荷を与えるほうがよいと思いました」
過去の代表決定戦を観戦し、幾多の大逆転劇をみてきた菅原だけに、いいときこそ緩めてはいけないという心理がかけさせたのかもしれない。
東パツの親で満貫ツモを決めた東城を、二階堂が東3局の親であっさり逆転。そのまま4万点台を維持し、東場を終了。東城も手堅い打ち回しで局を進めていく。
B卓は平穏に上位2人が通過しそうな雰囲気が漂っていた。特に二階堂にはスキがなく、リーチはもちろんヤミテンに危険な牌ならチャンス手からでも躊躇いなくオリている。こうなると石田・高宮は東城から点数を奪うしかない。
だが、南2局4本場にちょっとした事件が起こった。親の高宮のリーチに、西家・石田がドラのを捨てて追っかけた。
その2軒リーチに対し、共通安全牌を失った二階堂。
ここで二階堂は、親の高宮の現物を抜く。
放銃した。でも、ドラはすでに場に切れて高い手ではないはず…。開かれた石田の手を見た二階堂。予測通り高くない。だが、裏ドラ表示牌がめくられた瞬間、二階堂は少しのけぞった。
まさかの裏3にも全くブレない二階堂。すぐさま次の親で6000オールをツモり返す。
このあたりは他の打ち手との経験の差、厚みの違いを感じざるを得ない。結局、東城がオーラスの石田の親を流し、二階堂とともに決勝進出を決めた。
序盤は若手3人のアガリ競争が繰り広げられた。東2局、・ホンイツを菅原がツモれば、次局はリーチ・ツモ・一通をアガり返す東城。
さらにその東城から満貫を豊後が直撃。
唯一、二階堂だけがこのやりあいに加わらず静観していた。
全員が3万点以下で迎えた南2局。菅原が大物手を決める。
西家・菅原のアガリ
リーチ・一発・ツモ・タンヤオ・ピンフ・イーペーコー・ドラ1のハネ満。ツモった菅原がこれで一歩リード。親のない豊後・東城はこれで苦しくなった。
残るはひと山。二階堂の親さえ流せば菅原の優勝は目の前だ。
南3局 東家・二階堂の手牌
ドラのの出アガリに備えつつ、345の三色やイーペーコーの変化を待つ二階堂は、ここで打のリーチに出た。
二階堂「三色にするには結局[3]が必要。ならカン[3]待ちでリーチでいいと思いました」
このリーチに飛び込んだのが何と菅原。
裏は乗らなかったものの直撃は絶対に避けたい相手への7700放銃。テンパイならまだしもイーシャンテンからの放銃では本人も後悔するしかない。
この放銃のショックが次局にも影響したか。全力で親流しにかける菅原に対し、東城がドラ[八]の暗槓つきでリーチ。
目いっぱいに手を広げていた菅原の手は瞬間で手詰まり、東城に満貫の放銃。
これで東城がトップめに立ち、菅原は3着まで転落する。普通の人ならこれで冷静さを欠くところだが、菅原は意外にも強いメンタルの持ち主だった。
菅原「まだオーラス自分の親番がある、だから気持ちで負けない落ち込まない引きずらない、と思いました」
迎えたオーラス。親で5800条件の菅原に軽い手が入る。3巡目、を仕掛けていった。
ここで菅原はドラの重なりをみて打。が出ればポンして1500のテンパイに取るが、狙いはあくまで一局決着だ。すると、すぐにを重ね、条件を満たすテンパイとなる。直後、豊後からが出て菅原がファイナル行きのチケットを獲得した。
菅原「ファイナルでは鳳凰位の勝又さんと当たるんですけど、今日のような麻雀では申しわけないです。実力をつけて対局に臨みたいと思います」
二階堂「を一鳴きした高宮に対し、自分がドラを捨ててポンされれば、結局オリざるを得なくなる。ソーズが高い場なので、自分の手でアガれそうなのは引きで待ちになったときぐらいでしょう。場には各2枚飛びなので、引きのカン待ちだと単純にアガリは厳しいでしょうね。そういう事情をふまえを切ってテンパイを崩しました。先切りなら、厳しいカン待ちも多少出やすくなるという期待もありまして」
この後、を引いた二階堂はドラの切りリーチ。恐れていた髙宮のドラポンは入らず、高目のをツモって勝負を決定づけた。状況を的確に分析する二階堂の冷静さが光る一局だった。
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