いよいよ始まった最強戦ファイナル。オープニングマッチとなるＡ卓は、猿川真寿・石井あや・前田直哉・押川雲太朗の並びで始まった。


まず、東１局。南家の石井にチャンス手がきた。




４巡目にしてドラのが暗刻になる。こうなれば食い仕掛けてでもテンパイに近づけたいところだが、石井は直後に猿川から出たをスルー。メンゼンで進めリーチをかけることを選択した。

８巡目には次の形からのターツ選択となる。
　ドラ

形だけでいえばマンズかピンズのペンチャンを払うのがセオリーだが、捨て牌からはピンズの上が安そうに見えること、が場に２枚出ていることから打とした石井。次巡、を引いて今度はマンズのペンチャンを払いにいった。この時点では山に３枚生きており、ソーズが先に埋まればアガリは十分見込めそうだ。

が、先にテンパイしたのは現・鳳凰位の前田だった。




リャンメン待ちとはいえ、場に高いマンズ待ち。しかもドラが見えていない状況だ。普段、一発裏ドラなしのルールで打っている前田なら、打点のある打ち手の反撃を警戒してヤミに構えている可能性もある。だが、一発裏ドラありの半荘１回勝負ということで、ここは打のリーチを敢行。


これが一発ツモで1000・2000のアガリとなった。前田は続く東２局の親でもリーチツモドラ２の親満を決め、そのリードをさらに広げた。

前田のアガリ
　リーチツモ　ドラ　裏ドラ

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続く東３局には、猿川にチャンスが訪れた。




配牌は決して良いとはいえずドラのも孤立。そこで猿川はピンズへ寄せていく。５巡目で上の形となった。前田から５巡目に、石井から４巡目にが出ていて、その周辺は山に多く残っていることも期待できそうだ。ただ、この段階でのポンは微妙なところだろう。しかしすぐに前田からが切られた。これを見送った猿川だが、続く押川からもが切られた。やむを得ず猿川もをポンした。

すると、すぐにが重なり、さらにカンをツモ。猿川の手が一気にアガリきりたい形に化けた。

が、その直後押川もテンパイを入れ、リーチをかけてきた。

ただ、この待ちは前田がともに暗刻にしていて薄い。そして、その前田にテンパイが入った。

押川のリーチには現物。とはいえ、ヤミだとではロンできない。ただは場に３枚切れで薄い。さらに捨て牌にあるもマイナス要因か。これは猿川のホンイツを察した前田がこのターツを嫌ったもので、その直後に裏目のをツモり、それが手残りした格好だ。テンパイとはいえこれを勝負するのも味が悪い。


が、ここで前田はを捨ててテンパイに取る。ただし、リーチはかけず。出アガリの利かないは薄いため、での「かわし」を意としたのだろう。

さて、猿川はこのをポンしてテンパイを入れる。


あのバラバラの手牌からすれば、山に濃いピンズの下という理想的な待ちとなった。猿川にとっても「いける」という感触だったに違いない。

この仕掛けの後、ヤミの前田はをツモ切って追っかけリーチをかけた。これは押川・猿川の攻撃をかわすというより、それぞれの手を自ら潰しにいく方針に切り替えたということか。



そのロン牌を一発で掴んだ猿川。一瞬、捨てるのを躊躇ったが、そのままツモ切り。前田のリーチ・一発・タンヤオで7700のアガリとなった。

これで前田の持ち点は45700点で２着の押川とも24700点差のリードとなる。ただ、最強戦の半荘１回のトップ取り勝負では、この程度のリードでは全然安心できない。前田もさらに畳みかけるだろうし、相手の３人の攻撃もより激しくなる…はずだった。が、このリードがほとんど詰まらないまま、局は流れていく。

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南２局、親の石井は持ち点が14500点。


何とか挽回したいところだが、手にしたのがこの配牌である。

これでは高い手はおろか、テンパイすら危うい。親の落ちた猿川は簡単に流してはこないだろうが、トップ目前田とラス親のある押川の手をまずは止めなくてはいけない状況だが、親の足止めリーチすらキツい。石井は６巡目にを重ね、チートイツの２シャンテンとなり、メンゼンと仕掛けを視野に入れた。直後、そのが出て石井はポン。そしてドラのを捨てた。



もちろん石井としても高い手にしたいのは山々だ。だが、この手格好ではまず子の足を止めるのが先決。ポンしてドラ切りならポンテンを警戒させることもできる。と、同時にのつり出しも期待したのだろう。

たしかにこのドラ切りは効果があった。直後から前田は現物オンリーの切り出し。押川もトイツ落としで回っていく。だが、効き目が強すぎて猿川の切りにも制限がかかってしまった。



猿川の手にはが浮いていて、これは石井の必要牌。猿川にとっては、自分で高い手をアガる以外は、石井に連荘してもらって猿川のチャンスを増やしてもらうしかない。つまり石井のノーテン親流れは猿川にとっても都合が悪い。だから、石井に対してテンパイまでのアシストはするつもりなのである。だが、石井の仕掛けにポンテン待ちの可能性がある以上、自分から切り出すわけにはいかない。切るなら誰かがを捨てたときに同巡で合わせるだけだ。はともに石井の無スジだが、猿川はをより危険とみてから切り出す。この後、猿川は石井に通っていないを捨てる。つまり猿川は石井の摸打の速度や雰囲気を察し、石井がテンパっているかどうかは微妙とみているのがよく分かる。

すると猿川はを重ね、を落としトイツを振り替えた。実はこれも石井がポンできる牌だ。ポンした石井の手がようやくイーシャンテンにたどり着いた。


ただ、この仕掛けで相手３人は「これでテンパイ」と思ったはず。さらにはますます切れない牌になってしまった。押川もいったんテンパイを入れたものの、放銃を回避してオリ。早々にオリた前田とともにノーテン罰符を払ってもう１局石井の親を続ける腹を決めた。

が、結局、石井にテンパイは入らず終盤にテンパイを入れた猿川の１人テンパイで流局。石井にとっては、結果的にポンの手出しが裏目になってしまった。トップ目前田の足を止めたところまでは目論見通りだったのだが。これで石井も猿川とともにほぼ参戦できない。前田にとっては最高の結果となった。

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南３局。親の前田にとっては突き放すか、無難に親を流すかの構えである。ここへ押川の早めの仕掛けが入った。




３巡目に重ねたがすぐに出てポン。ドラ受けもあるが高くなるかどうかは微妙。とりあえず前田の親を流してオーラス勝負に持ち込むつもりだ。

が、その直後に前田からが出て押川の決意が決まった。


このをチーしてイーシャンテン取らずの打。・ホンイツ、できればドラをからめて満貫のアガリを目指す。さらにポン、ツモで押川は満貫テンパイを入れた。

　　　

さすがにこれに飛び込む打ち手はいない。押川の一人旅のツモ切り状態が続いたが、超終盤にいたを掘り当てた。

これでオーラス、親の押川は満貫ツモ一発で逆転トップになるポジションまでたどり着いた。

前田にとっては、押川に鳴かれたが痛恨となったか。


押川に鳴かれたを捨てたときの前田の手牌は次の形。

カン受けからリャンメンに切り替えたところでの打で、アガリにかけた…というわけではないだろう。むしろポンの前に捨てた（捨て牌の左から３枚目）には押川から声がかからなかったから、というのが実情だったのだろう。ただ、実際に仕掛けられ、満貫をツモられてしまったという結果に対し、多少なりとも切りを悔やむ気持ちはあったに違いない。

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このまま一気に逆転か、という押川のラス親だったが、厳しい配牌。仕方なく押川はカンチーから仕掛けた。




当然、上家の前田は手役を推理して対応し、押川の手にチャンタや三色に絡まないを捨てていく。早々に形式テンパイで妥協したくなかった押川はこれを見送ったが、我慢しすぎるとテンパイすら危うくなる。さらに前田から出たに対し、ついに押川は意を決してでチーした。

が、これにより前田から見て、役の可能性がかなり絞られ、と同時に前田自身の手にドラが暗刻になった。そしてテンパイを入れた前田は「この局で逆転されることはない」と踏んでリーチ。

行くしかない押川がを掴んで放銃。


これで前田の決勝卓勝ち上がりが決まった。勝者コメントで前田はラス前の切りについて触れるのかと思ったが、実際には別の局に悔やむ一打があったようだ。


前田「自分の連荘中、猿川君のリーチに石井さんが押し返した局、あそこで先に降りてしまったところが反省点ですね」

前田が触れたのはこの箇所である。


猿川のリーチにはは現物だが、押川・石井が無スジを押し返している。現物待ちの可能性を考えた前田はここでを打たず、石井が捨てたばかりのに合わせてオリた。だが、ここでを押していればアガリがあった。

前田「もし敗れていれば、これが敗因になるだろうなと思っていました。反省しながら、次からの対局を観戦したいと思います」