藤田晋さんは8月9日(土)に行われる麻雀最強戦2014著名人代表決定戦雷神編に出場予定
出場者
【A卓】植田佳奈 金子昇 じゃい 白川道
【B卓】加賀まりこ 風間杜夫 片山まさゆき 藤田晋
【決勝】A卓・B卓の上位2名
梶本「最初に麻雀を覚えたきっかけはいつごろだったんでしょう?」
藤田「小学生のときに、友達のお父さんに教わりました。その後、ファミコンの2人麻雀を打ち、中学生のときは友達と打ってましたね。麻雀って、どこか『大人の悪い遊び』のようなイメージに惹かれました」
梶本「当時の成績はどうでした?」
藤田「強かったですよ。高校のときは学校もロクに行かずに、近くに住むちょっと悪い感じの友人の家にたむろしてほぼ毎日麻雀していました」
梶本「毎日? それは友達の家で遊ぶのが好きだったんですか? それとも麻雀?」
藤田「麻雀です。『麻雀放浪記』を読んでイカサマやるやつとかもいましたね。『近代麻雀』もかなり読んでのめり込んでましたね」
梶本「雀荘には行きました?」
藤田「大学受験の下見や本番で大阪や東京にいったときは、広告に載っている店に足を運びました。最後の受験が終わるまで待てずに当時明大前にあった片山さんのミスチョイスに行って麻雀してました」
梶本「雀鬼会にも通われてたそうですね?」
藤田「はい大学入ってすぐ行きましたね。何しろキンマの読者なので当然桜井章一さんや『牌の音』にも興味があって。相模大野に住んでいたので町田店に通いました」
梶本「毎日のように…」
藤田「皆そうだと思うんですが雀荘に一回ハマると止まらなくなってしまうんです。行かなくなるとピタっと止められるんですけどね。その後、厚木のフリー雀荘で働くまで、1年半ぐらい牌の音に通っていました」
好調時はガンガン攻める
梶本「雀鬼会から学んだことで、最も大事なことは何でしたか?」
藤田「『自分を律せよ』ということですね。これは人生、あるいは勝負事に通じることだと思います。たとえばカジノって楽しいじゃないですか、ドーパミンも出るし。でも、楽しんでいる人は大体負けます」
梶本「勝ちたい人に楽しんでる余裕はない、と」
藤田「カジノは、欲望に忠実になれば皆負けるようにできている。本当は、流れが良くて勝っているときには、『次は負けるかも』という恐怖心を克服して強く出なきゃいけない。でも、多くの人は逆をやってしまいます」
梶本「たしかに。勝ち逃げしたり、賭け金を下げたくなりますね」
藤田「反対に、負けが込んでいるときは、流れが悪くもう引くべきところなのに、『取り返さなきゃ』と思ってさらに勝負して負けてしまったり。あと、意外と、何の流れもない時間は長いんですよ。そこも忍耐強く歯を食いしばって集中しなければいけない」
梶本「それが自分を律するということですね」
藤田「そうです。自分に厳しくするとは欲の逆を行くことだ、と。僕が麻雀から教わったことは凄く多いですが、特に桜井さんの言葉は本質を突くものが多かったですね」
梶本「それは会社経営にも通じることでしょうか?」
藤田「はい。会社もほとんどの時は何も起きず、粛々と通常業務をやっています。でも、一気に勝負する時機がきたら、手を止めちゃいけないし集中力を切らしてもいけない。逆に不調時に何とか取り返そうと無理な事業を始めたらドツボにハマります。それは本当に共通していますよね」
梶本「では、麻雀で調子が悪く全くアガれない状態になったとき、藤田さんはどういう打ち方をします?」
藤田「耐えるのみ、ですね。丁寧に。耐えてもやられてしまうのですが、それも織り込み済みでやるしかない」
梶本「我慢してマイナスを最小限に抑える、ということですね」
藤田「調子が良くてガンガン攻めるときと同じぐらい、ディフェンスの時間があると思っているので。そこをどれだけ耐えられるか、ということが大事だと思っています」
梶本「逆に、好調時は、会社経営と同じく、集中力を切らさずにガンガン攻めるという打ち方ですか?」
藤田「はい。調子が良いときは一切手を緩めません。好調が途切れる原因の多くは『自分のポカミス』です。少しの気の緩みで余計なことをしてガタガタと崩れ、自ら流れを止めてしまう。これは麻雀も経営も同じですよ」
梶本「会社が上向きのときは、社内全体に隙が出ないよう、より『厳しい社長』になるんですか?」
藤田「全神経を仕事に傾ける、という感じです。ただ、もう17年も経営をしていますが、ずっと集中していたら自分の体が持ちません。勝負どころは全体の1~2割ぐらいなのでその時は一気に集中します。これはあくまで事業の話で、麻雀ぐらいは全部集中して打ちますけどね」
潔く打てば最後は勝つ
梶本「他に桜井さんからどんなことを教わりましたか?」
藤田「そうですね。『潔く打て』ということですね」
梶本「正々堂々と、という意味ですか?」
藤田「結局、正々堂々と潔くやる人が最後は勝つはずだ、と僕も信じてるんです。麻雀にしてもビジネスにしても、ずるくて人を騙すようなやつが短期的には勝っているように見える。自分も勝ちたいからずるいことをする誘惑に駆られるんですが、それに屈したら大成しないと思います」
梶本「目の前の勝負には勝っても、長い目でみたら失敗する、と」
藤田「人に嫌われるでしょうし、幸せにはなれないですね。でもそんな誘惑はビジネスにも麻雀にもあちこちに転がってるんですよね。だって、三味線するやつがずっと勝ってたら、自分もやろうかなって気になりますよ。その誘惑に負けず潔く勝つ、というのが桜井さんの教えでした」
梶本「フリー雀荘で働いたときは、色々なタイプの人が来るので、よい訓練にもなったのでは?」
藤田「そうですね。世の中いい人ばかりじゃないし、嘘つく人も騙す人もいるんだ、ということを知ることができました。会社経営をにおいてもそう簡単に騙されなくなりました」
梶本「麻雀で相手からあまりにずるくて酷いことをされたとき、藤田さん自身がそれに怒ってキレ打ちした経験とかありました?」
藤田「それは絶対ないです。そういう相手と打つことも、悪い配牌を手にするのと同じ。『それでも勝たなきゃいけない』と思うだけです」
梶本「ずるい相手=不利な条件、みたいな感覚ですか…」
藤田「そういう自責感のようなものはベンチャー企業の経営者にとって大事な感覚です。文句を言いたくなるような話ばっかりで、それに一々腹を立てていたらキリがない」
梶本「そういう経験を積んだ経営者は、麻雀に向いていそうですね。やはり強い方が多いですか?」
藤田「経営者の中でも、特に叩き上げの方の麻雀は強いですね」
梶本「強さの秘密はどこにあると思います?」
藤田「やはり状況判断力に優れているのでしょう。囲碁や将棋と違って、麻雀は不公平な状況から始まるゲームじゃないですか。会社も同じ。その状況で、最も適切な手を次々に打たなければ生き残れません。競争環境もその都度異なりますし、麻雀で言えば手牌に当たる『経営資源』を使ってアガらなきゃいけないし、大きくアガらないと勝てませんしね」
梶本「そこが麻雀がビジネスに通じる部分というわけですか」
藤田「特に起業家はそう思うのではないでしょうか。学校の教育が将棋のように公平なヨーイドン!で始まるものだとしたら、ビジネスは完全に不公平な世界です。格差のある配牌とツモ。でも、そんな不利な状況でも勝たなければいけませから」
近代麻雀7月15日発売号より抜粋
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