猿川「短期戦では負けたくない」
 
 ベテランと中堅男性プロの激突となる男子プロ代表決定戦世代抗争編。予選A卓には昨年の男子プロ代表決定戦風神編の覇者・猿川真寿が出場する。

猿川「昨年のファイナルは全然ダメでしたが、元々最強戦は自分に相性の良いタイトル戦。自分の長所は短期戦にこそ出るので、ここでは負けられません」
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(麻雀最強戦2015ファイナルA卓に出場した猿川は、前田直哉・現最強位の前に敗れた。右から3人目が猿川)

 予選A卓は、猿川・鈴木達也・土田浩翔・荒正義という元・最強位が2人もいる組み合わせとなった。
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 東1局1本場、達也がハネ満をツモって先行。だが、荒が倍満・親満と立て続けにアガって大きくリードする。
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 続く、東4局1本場。親の荒が9巡目にチートイツ・ドラ2でヤミテン。そこに猿川がマンズのメンホンで追いついた。
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南家・猿川の手牌
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 テンパったはいいが迷う形。ここで猿川は打pai_s_5m.jpgのヤミを選択する。3着猿川と2着達也の点差は13400あるため、ハネツモ狙いのリーチだろうと思っただけに意外に思えた。

猿川「正直、決めきれませんでしたね。が、ヤミなら、好調の荒さんが前に出そうな感じがして、手堅いほうを選びました」

 結果、この判断が正解となる。荒がpai_s_4m.jpgをツモ切って猿川が満貫のアガリをものにした。
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 猿川は続く親番で6巡目にツモり四暗刻のリーチ。惜しくもツモることはできなかったが、土田から親っパネを出アガリ、荒を僅かにかわしてトップ目に立った。

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 こうなると下位2人は非常に厳しい。上位2人がサクサクと局を流しにくるからだ。特に荒は解説の藤崎智プロいわく「日本トップクラスの逃げ屋」である。南1局の猿川の親落ち後は、僅か3局で対局を終わらせ、荒・猿川の2人が勝ち上がった。
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圧倒された初対戦
 
 ここで少し猿川の話をさせていただこう。静岡県生まれの猿川は、小学2年のとき兄が入門書を買ったことがきっかけで麻雀を覚える、中学生で既に雀荘勤務を考えていたという。高校卒業後に進んだ専門学校を半年で辞め、フリー雀荘で働き始める。だが、1年後には周囲に敵おらず、より強い相手を求め猿川はプロの世界に飛び込んだ。

猿川「本当にプロは強いのか。自分の麻雀は通用するのか。そこに興味がありました」

 東京で開催されるリーグ戦やタイトル戦に7年間通い続けた後、上京を決意。その直後、マスターズのタイトルを獲得し、さらに活躍の場が広がった。荒と初めて打ったのもこの頃だ。

猿川「荒さんの麻雀は牌譜で知っていましたが、実際に打つとそのオーラに圧倒されました」

 それ以降、荒を最強雀士として自らの目標としてきた猿川。決勝卓で今度は代表の座を賭けて荒と戦うことになる。

 B卓は佐々木寿人・伊藤優孝・山井弘・金子正輝の組み合わせとなり、親っパネを決めた山井、金子が勝ち上がりを決めた。
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猿川、またもオーラスで決める
 
 決勝戦は猿川・荒・金子・山井の並びで始まった。
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 起家の猿川は、まず金子からpai_s_chun.jpg・ホンイツ・ドラ1の親満を出アガり幸先良く飛び出す。
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 だが、その金子が東3局の親で満貫をツモって最初の放銃を帳消しにし、4者混戦のまま東場を終えた。
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 その後、荒がpai_s_hatsu.jpg・ホンイツの1300・2600のアガリによって微差のトップ目のまま南3局を迎える。
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 北家の荒は金子の親を流すべくpai_s_hatsu.jpgpai_s_3s.jpgpai_s_sha.jpgをポンポンポンと3フーロ。あっという間に
pai_s_6s.jpgpai_s_9s.jpg待ちのテンパイを入れる。
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 だが、金子もドラ1枚含みのピンフ、荒と同テンの
pai_s_6s.jpgpai_s_9s.jpg待ちでリーチをかけた。
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 同巡、2着の猿川も追いつく。
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南3局 西家・猿川はpai_s_chun.jpgをポンしてこの手牌 
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 荒の捨て牌には仕掛けの合間で手出しされたpai_s_7s.jpg、さらに金子のリーチ宣言牌もpai_s_7s.jpg。よってpai_s_8s.jpgがロンとなる可能性は決して低くない。だが、猿川は押す。2人からの声はない。

 だが、その4巡後、今度はpai_s_9s.jpgを引く。
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 pai_s_8s.jpgが通った以上、pai_s_9s.jpgはより危険な牌だ。超攻撃型のあの山井ですら荒・(下家で鳴かれる可能性もある)猿川に対して止めている牌なのだ。さすがに打てない。マンズも全て無スジ。ここはオリるかと思われた刹那、猿川はpai_s_9s.jpgを強打。今度は2人から「ロン!」。ここは荒の頭ハネで決着した。

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猿川「4戦勝負の決勝とかリーグ戦ならピンズを抜きますね。ただ、最強戦のようなスプリント戦ならあれは押します」

 荒のアガリが1600点だったのが不幸中の幸いだった。4者僅差のままオーラスを迎える。

 最初にテンパイを入れたのは金子で、8巡目に
pai_s_3m.jpgpai_s_6m.jpg待ちの高目タンピン三色。高目をツモるか荒から出れば優勝だ。
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 だが、荒も12巡目にピンフのpai_s_3m.jpgpai_s_6m.jpgpai_s_9m.jpg待ちで追いつく。
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 さらに親の山井がカンpai_s_6m.jpgのイーペーコー形でリーチ。全員が同じスジを引き合う状況になった。
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 その山井のリーチの直後、猿川が掴んだのが
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 この牌が山井に無スジだったのが幸いした。山井のリーチがなければ猿川は
pai_s_9m.jpgをツモ切り、荒の優勝で決着していたのだ。しかも、猿川は最後のツモでpai_s_7m.jpgを引いてテンパイ。1人ノーテンを回避し、よりよい条件で1本場を迎えることになる。

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 リーチ直後のpai_s_9m.jpg、そして最後のpai_s_7m.jpg。これが猿川の勝負強さを象徴していた。1本場ではダブpai_s_nan.jpgトイツでソーズの多い配牌を手にした猿川は、キッチリ満貫手を仕上げ、2年連続のファイナル進出を果たした。

南4局1本場 南家・猿川のアガリ
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猿川「荒さんの凄いのはここ一番の勝負強さ。今回はその部分で上回れたことが嬉しいです」

 ただ、3年前のファイナルでは、決勝まで進むも沢崎誠の前に完敗。昨年のファイナルA卓でもノーホーラで敗退した。あと一歩届かない悔しさは自分自身が一番身にしみているはず。猿川にとって今年のファイナルが「三度目の正直」となり、尊敬する荒と同じ最強位のタイトルを獲得することを期待したい。



荒正義のすげえ一打

2件リーチと仕掛けに対し完全に手詰まりの荒。果たして何を切って凌いだか?
 
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 リャンメン待ちのノーチャンス牌はない。山井のリーチがなければ、金子のリーチ後に通ったpai_s_7s.jpgと自らが捨てたpai_s_1s.jpgの中スジのpai_s_4s.jpgで良さそうだが。だが、荒は山井に通っていないpai_s_4s.jpgを捨てた。その根拠は?
荒「感覚です。山井にpai_s_1s.jpgpai_s_4s.jpgはないだろうと思ったので」

 だが、単に勘だけで捨てたわけでもなさそうだ。ポイントはpai_s_4s.jpg暗刻持ちなのになぜか場に見えていないpai_s_2s.jpg。いわゆる壁の外の牌で、これが場に見えていないとき、他家が固めているケースが多い。
 逆にいえば「pai_s_2s.jpgは誰かにトイツなら、山井にpai_s_1s.jpgpai_s_4s.jpgのリャンメン受けはない」とも想定することもできる。不自然なション牌が、見えない壁と意外な安全牌を気づかせてくれることもあるのだ。