私達の人生に文学は何の価値があるのだろうか。
 私の娘は今米国の大学の英文学科で、米国文学を助教授として教えている。
 彼女がバージニア大学で博士課程の時、日本の著名な人に豪華な食事にご馳走になり「文学の研究って何の役に立つの」と疑わしそうに問われたそうだ。その時、娘がどう答えたかは失念した。
 私達は小説を読む。私も『小説外務省』と銘打って、「小説」を二冊書いた。まさに「小説とは何の役に立つの」に答える義務がある。
 私は今、ロシア(ソ連)作家パウストフスキーをロシア語で読んでいる。正直言って、私はチェーホフよりパウストフスキーが好きだ。
 彼の小説に『遥かかなたの年々』『不安定な若者時代』『未知なる世紀の始まり』の三部作の自叙伝がある(邦訳はほとんどない)。彼はキエフの裕福な家庭に生まれ、キエフ第一の高校に入り、文学で生きる決意をする。しかし、第一次世界大戦、革命が起こり、父母の離婚もあってどん